平野綾のバースデーイベントに行って、東京の霞となる

平野綾のバースデーイベントに行って、東京の霞となる

山手線に乗って、「まもなく東京」というアナウンスを耳にする。

電車の推進力によって体が前に持っていかれそうになる。そんな中、手元のiPhoneでXを開く。「みんなに会えるのを楽しみにしています」という文字。


また場違いなところに行く。東京の大手町。僕は平野綾のバースデーイベントに行く。

バースデーイベントの内容

10月9日、東京の大手町にある「俺のフレンチ グランメゾン 大手町」で平野綾のバースデーイベントが開催されることになった。

俺のフレンチ グランメゾン 大手町の店舗情報です。予約・メニュー等。住所「東京都千代田区大手町1-7-2 東京サンケイビル B2F」電話番号「03-6262-5…
www.oreno.co.jp

バースデーイベントの内容を簡単に表すと、ライブ。
なのだが、食事を頂きながらトークショーやライブを楽しむというもの。つまりディナーショー的な感じだ。

2023年にも同様のイベントが開催されている。当時は東京と愛知での開催だった。今年はその2回目である。

昨年はイベントの参加に躊躇いがあった。
前述の通り、「俺のフレンチ グランメゾン 大手町」での開催、そしてフランス料理を楽しみながらライブを楽しむ、という内容。

フランス料理…?いわゆる、フレンチ…?フレンチトーストなら知ってますけど…と未経験な分野に困惑した。フランス料理の作法以前に和食の作法すら怪しいというのに、フランス料理なんて大丈夫か?

しかし、憧れの人と会えるチャンスを思うとその不安感よりも期待感が勝り、参加した。参加してしまった。という表現が正しいか。
自分はなんて欲深い人間なんだろう、と思ったものだ。
結果として同じテーブルになったファンの方とお話をしていると緊張感は解れた。

そして、2024年。あれから気付けば1年が経過。今回もまたフレンチという空間に挑むことを決意して、当然の如くイベントに参加することにした。

だって、本人に会えると思ったら、ねぇ。行きますよねぇ。

東京・大手町へ

10月9日。朝から関東近郊では小雨が続いていた。
自分は山手線で揺られて、東京駅へ到着。キャリーケースを引っ張る観光客やイノシシの如く猛スピードで歩くサラリーマンの群れを抜けて、東京駅の改札を出た。

会場の「俺のフレンチ グランメゾン 大手町」はフジサンケイグループの各社が入居する「東京サンケイビル」の地下にある。東京駅から東京サンケイビルまでは地下通路で繋がっており、雨に濡れることなく移動が可能だ。

ちなみに、東京サンケイビルのすぐ横は箱根駅伝の復路スタート地点・往路ゴール地点となる読売新聞ビルがある。

東京サンケイビル。この地下に「俺のフレンチ」がある。

当日は17時から開場。会場の前にはかなりの人数が静かに待っていた。

今回の座席は奥の方となった。少しステージからは遠い場所ではあった。

開場と同時にグッズも発売された。昨年はアクリルスタンドが発売されたが、今年も新作のアクリルスタンドが発売されたので、1つ購入した。

アクリルスタンド。1500円也。ちなみに実写のアクスタを最初に売り始めたのはハロプロらしい。

料理とライブを楽しむ

開場した後から食事まで30分程度の時間があった。その際に、同じテーブルとなったファンの方々とお話する機会があった。

今年の2月と3月にはライブツアーがあった。名古屋・大阪・東京・京都・福岡という5都市での開催だった。

自分もなんか久々のライブだし、と勢いに任せて名古屋から大阪そして東京の3公演に参加した。個人的にはかなり行ったなぁと思っていた。

ただ同席した人の熱量の凄さ。全部行ったであるとか、遠征も遠征を重ねてライブに参加したなどと自分よりも熱量たっぷりなファンの方がいらっしゃった。

また、このバースデーイベントの翌月に控えているビルボードライブの予約も抑えているというのだから驚きだ。

そして、出演する舞台は必ず公演を見に行くという。

それらに比べれば、ライブの3公演行っただけで「いやぁ、3回もライブに行きましたよ」と自慢げに知り合いに語っていた自分があまりにも弱々しく見える。

また先日行われた台湾でのライブ、そしてパックツアーにも参加したというのだから驚きだ。海外でのイベントにも惜しげ無く参加するという熱量。
思わず「すごいですね」と言ってしまった。驚嘆という言葉以外に浮かばなかった。
その方は「趣味が平野綾さんです」と言い切った。

改めて、皆さんのお話が聞けてとても楽しかったです。同席しお話いただいた皆さん、ありがとうございました。

イベントが始まる

18時。平野綾が舞台に登場すると一気に華やかになる。

最近の活動報告を聞く。イベント開催時は休演日だったミュージカル「9 to 5」の話であるとか、同じくミュージカルの「この世界の片隅に」であるとか。

明日海りお、平野綾、和希そら、別所哲也ら出演ミュージカル「9 to 5」。2024年10月6日〜21日まで日本青年館ホールにて上演。その後、大阪、福岡、静岡公演…
9to5.jp

と、つい最近までは名古屋でライブだ!大阪でライブだ!と言っていた時期が遠くの昔のように感じた。時間の経過が恐ろしい、とさえ思う。

また、本人からこうして話を聞けるのはとても特別に感じる。直接受け取るかのように、メディアを介さずに本人から話を聞けるというのは、ファンとして嬉しい限りだ。

クイズコーナー

この日、クイズコーナーなるものがあった。各々の前に、「A」と「B」と書かれた用紙が配られていた。クイズは二択で、本人に関する問題に答えていくというものだ。

そんなクイズコーナー、全問正解という偉業を達成するとツーショットチェキが貰えるというのだ。

あら、すごい!欲しい!と思った瞬間、多くの人達も「なに!」「聞き捨てならねぇ!」みたいな感じで、ムーディーな雰囲気が漂っていた会場内の興奮度が爆発的に上がった。

クイズの内容は本人にまつわるものばかり。
子役時代に声優のオーディションを受けるように進めてきた人物は?であるとか、先日寝ぼけながらAmazonで購入した商品は何か?であるとか、ファンであれば聞いたことがあるような話から、もはや当てずっぽう以外に選択肢がないような問題まで様々だった。

また、問題が出されていた時の人間模様にもまた色んなものがあった。
同席したファンの方と話合って答える人いれば、静かにステージをみつめてスッと答えの「A」を出す人などなど様々であった。

ちなみに自分は3問目で呆気なく散った。

最後まで残った人は7人程度という結果だった。

このコーナーで感じたのはファンの皆さんが、「大人である」ということだ。

クイズに負けてしまった人は次の問題には参加は出来ない。しかし、嘘をついて、人目を盗んで参加し続けることもできなくはない。ツーショットチェキが欲しいあまりに、そんな卑怯なことを考えつきそうではある。

ただ、誰もが間違えたことを認めるし、何なら正解する人を称えることもする。
そして、ステージ上でファンの方が本人と撮影している合間も羨ましさが確実にあるだろうに、温かい目で多くの人達が見守っていた。

なんて大人なんだ。

だからこそ、間違えた時には爽快感さえ感じたし、羨ましさよりも撮影をして喜ぶファンの人を見て、温かい気持ちになれた。

ライブ・朗読

トークとクイズコーナーを終えて、ライブは後半へ。

平野綾がまたステージ上へ現れた時に、クイズコーナーで熱が渦巻いていたのから一変。彼女の声を聞き逃すことがないように、多くの人が静かにステージを見つめる。

一曲目はディズニー映画「ビアンカの大冒険」から「Someone’s Waiting for You」で始まる。

うっとりとしそうな立ち振舞。そして体に染み込むような歌声。こちらを微笑む姿がまた印象的だ。

次にアルバム「vivid」から「光の果てに」が流れる。vividの楽曲を聞けるとは予想していなかった。また、星をイメージした照明がステージだけでなく会場中に広がる。それがまた曲の儚さを増幅させる。

3曲目はミュージカル「この世界の片隅に」から「端っこ」。
この楽曲は10年ぶりにアーティスト活動を再開させたアンジェラ・アキさんが手掛けたもの。
長い期間そして多くの都市で舞台上で演じたこともあるから、本人の歌う姿や声にも「この世界の片隅に」への思いと力が入っているように見えた。

そして、ライブの後半では朗読劇が行われた。
今年の始め、音楽劇「はじめての」が開催された。そこで朗読されたのが「ハケンアニメ!」や「かがみの孤城」で知られる辻村深月さんの「ユーレイ」である。

「ユーレイ」はYOASOBIの楽曲「海のまにまに」の原作になったもの。あらすじは、「家出をして海沿いの駅に降り立った私は、花束が手向けられた夜の広場で、突然、不思議な女の子から声をかけられた。(Amazonより引用)」というものだ。

朗読劇というのは未経験。だから、どんなものになるだろうかと期待と自分の受け止め方が気になった。

平野綾が本を手に取る。ページの捲る音が聞こえそうな程に、静寂が張り詰める会場内で朗読が始まる瞬間を皆が待っている。

読み上げられる文章が耳に入ると、不思議と頭の中に情景が浮かんだ。
陽が沈み夜を走り抜ける電車、そしてそこから見える町並み。それがすっと頭の中に浮かぶ。登場人物の不安でいっぱいという心持ちも、胸の中に染み込んでくる。
映像も画像もないのに、人知れず海岸に立つ人の気持ちが自分にも浮かぶ。なんだか不思議な体験だった。本人の読み方もそう、作品の素晴らしい出来もそう。全てが完璧だった。

ライブを終える

朗読劇が終わり、皆で誕生日を迎えた平野綾をハッピーバースデーを歌って祝う。ケーキに刺さったロウソクの火を消す。
中学生の頃に知った人が、未だ第一線で活躍していることを嬉しく思うし、このようなイベントに参加して時間を共有しているのも嬉しい。

こうして、イベントは終了した。

Team AYAで2度目となるBDイベント💖みんな来てくれてありがとう(*´꒳`*)💕⁡今年のケーキはこんなです✨みちしゃらがおって可愛い🩷🩷🩷⁡⁡前半は近況…
ameblo.jp

さて、食事もライブも朗読劇も精一杯楽しんでしまった後には現実が控える。現実に帰還しようではないか。
ファンの皆さんが静かに会場を後にするため、出口へと歩き始める。すると、女性の黄色い声が聞こえ始めた。

本人がいる

昨年のイベント終了時、同じように現実へ帰還せねばという時に出入り口で平野綾本人が見送りしてくれた。
この時、出入り口近くにいる本人を見て思った。

本人がいる!

捻りなんてない。愚直な感想が頭に浮かぶ。

ファンの皆さんが一言二言を言ってから会場を出ていく。それを見て、思う。

何を言えばいいの…?

自分は予測も対策もしていない眼の前の出来事に戸惑い、どうすればいいかと焦った。他の人達はどうしているのだろう。

自分と同じように本人に気持ちを伝えようとするが、緊張が滲み出てあわわわと声にならない声を上げる人がいたり、「楽しかったです」とよく落ち着いていられるなと突っ込みたくなるぐらいに颯爽と帰っていく人がいたりと様々だ。

そして、自分の番が来る。自分にとっては入学試験や就職試験の面接での緊張感のそれ以上の緊張感。本人を前にして自分はこう言い放った。

楽しかったです!

まるで小学校の卒業式でよくある「楽しかった!」『運動会!』という呼びかけのようなものを発した。周りからの目も厭わない。思いついた限りで且つ言い切れる文章がそれしかなかったのだ。

そんな自分であったが、(すいません、ここから「さん」付けで行かせていただきます)平野綾さんは「それは良かったです!」と言ってくれた。

体が浮遊するかと思った。

そして、体の中にあった緊張感がスッと消えた。
そして、「お疲れ様でした!」と言って後にした。

それが昨年の話である。とっとと今年の話をしろよ?まぁまぁ落ち着いて。自分にとっていい思い出なんだから振り返らせてくださいよ。人に言いたくなるときだって、あるでしょう?

というわけで、2024年の話に移ろう。

本人がいる・2024年版

今回もまた出入り口に本人が立っている。
昨年も経験したことだ。あー、今回もいるんだぁ。へぇ。ぐらいに思うことにした。

なんてお話しようかなぁ。と気楽な雰囲気を意識する。嬉しいなあ、本人とお話できるなんてぇ。と。

しかし、腹の中の臓物が凝固したかのように、ずんと重くなり、足先にかけて緊張感が駆け巡る。
ど、ど、ど、ど、ど、ど、どんな事を言うべきなんだろうか…

憧れの人と面と向かって話すなんて、気が小さい自分には未だに大きな出来事すぎる。
そんなことは関係なしにゆっくりと自分の番が近づく。熱量を持ってお話する女性の姿、ネットでイラストを公開したんですと言い切った女性の姿。

ここで微かに浮かんだ事がある。
自分はイベント開催の日から近い内に誕生日を迎える。そう思った瞬間にこれを言うしか無い。と思った。
「自分にとっても良い誕生日プレゼントになりました」と。これでいこう!

今思えば、自分の事じゃなく、「誕生日おめでとうございます」だろうが、と思う。

さあ、本人の前に立つ。本人が目の前に立っていることがどこかで信じきれていない。
「あの、自分、近い内に誕生日なんです。良い誕生日プレゼントになりました」と上擦りそうになりがら話す。

その時に「誕生日なんです」と言った瞬間に、本人から「おめでとうございます!」と言われる。本人は笑顔だった。

ここ最近。仕事で忙しい日々が続き、疲労感というのが体の全身を包んでいる感覚があった。食事をしても、風呂に入っても、寝ても。抜けきれない。

そんな疲労感が、本人からの声と表情を見て、

パァッン!

と弾けたような感覚があった。

東京の空の霞となる

東京サンケイビルを出ると、小雨は止んでいた。地面はとっくに乾いていて、空気が澄んでいるように感じる。

交差点で信号待ち。車のライトが目に刺さる。視線をずらせば、東京の夜景を作り上げる高層ビルの照明が目に入る。

なんだか、輝いて見える。

交差点で知らない人とすれ違う。そんな中で、いそいそと歩く。浮遊感が凄まじい。

これからも、イベントやライブといったものには参加をするだろう。憧れの人との時間というのはとても貴重で、楽しいものだ。ファンの方と交流できたのも、楽しい時間を作り上げたのも楽しい時間を作り上げた要因でもある。

本人に会えた事もそうだが、誕生日を祝う場に居られたことを嬉しく思う。舞台やアニメの出演も決まっているので、体にはぜひご自愛いただきたい。

ただ、そんな場だったのに、人の誕生日を祝おうとしたのに、逆に祝ってもらった。私利私欲にまみれた内容なのに、嫌な顔もせずに言い切ってくれた。そんなことが嬉しくてたまらない。最近は、「あーおめでとう」と適当な祝いだけしか受けていなかったから反動が大きい。
いや、やはり「お誕生日おめでとうございます」と言うべきだったなと反省をする。

あー、こうしてまたファンを続けていくんだろうなぁ。
と思いながら東京の霞と成りながら、東京のど真ん中に鎮座する綺羅びやかな東京駅へ足を進める。

なんかテンション上がって撮った東京駅。画角なんて関係ない。