木・金と特定の日にしか開いていないNTTの博物館「NTT技術史料館」

木・金と特定の日にしか開いていないNTTの博物館「NTT技術史料館」

東京都内には多くの博物館が存在する。

上野には東京国立博物館、皇居近くには科学技術館、変わり種だと目黒にある寄生虫館なんてものもあったりする。

そのほとんどで平日・土休日共に開館し、自分では知り得なかった世界を楽しむことが出来る。

ただ、中には一般公開が限定的で、土休日は開いていないし、平日も特定の曜日にしか開いていない博物館というのも存在する。

その博物館は東京都武蔵野市に位置する。その名も「NTT技術史料館」だ。

NTTの技術史料館のサイト。日本電信電話公社発足以降の半世紀を中心に、NTTグループの電気通信技術開発の歴史的資産を系譜化・集大成したものです。
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アクセス

NTT技術史料館は東京都武蔵野市の武蔵野市役所近くにある。

最寄り駅はJR三鷹駅と西武新宿線の東伏見駅の2つとなっている。今回は東伏見駅からのアクセスをご紹介しよう。

西武新宿線の東伏見駅は西武新宿駅から各駅停車で30分、急行・準急を乗り継いで20〜25分程度で到着する。

西武鉄道の「東伏見駅」について。電車・駅のページでは、運行情報から、各駅時刻表、路線図、乗換案内、運賃、臨時電車情報、各駅のバリアフリー施設など西武鉄道をご利用…
www.seiburailway.jp

朝夕の時間帯であれば準急が停車するのだが、昼時間帯では全て各駅停車の列車しか停車しないので注意が必要だ。

東伏見駅の周囲は閑静な住宅が広がっているが、近くには早稲田大学の伏見キャンパスやそれに関するグラウンドがあり、学生が多く利用する駅でもある。

東伏見駅の南口ロータリー。ここから歩くことになる。

駅前には大きなスーパーマーケットや松屋・マクドナルドといったファストフードもあったりする。

さて、今回は東伏見駅からのアクセスをご紹介していくわけだが、あまりオススメはしない。理由として、東伏見駅から技術史料館まで歩いて20分程度。結構な距離を歩くし、一部のルートでは途中で傾斜が急な坂が待ち構えている。

写真の奥に向かって坂が伸びる。

また、道路に歩道が整備されていない区間があったりと複数人で向かうには少々適していないような気もする。

大人も結構きつい坂。そこを車が容赦なくスピードを上げて通り抜けるので少し怖い。

JR三鷹駅から向かう場合はバスで5分程度で到着するので、そちらが良いかと思われる。

NTTの技術史料館のサイト。日本電信電話公社発足以降の半世紀を中心に、NTTグループの電気通信技術開発の歴史的資産を系譜化・集大成したものです。
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そんな東伏見駅から歩いて10分程度のところ、一軒家やアパートが並ぶ静かな住宅街の向こうに進撃の巨人に出てきそうな大きな建物が目の前に現れた。これは一体なんだろうか。

一軒家やアパートよりも巨大な建物。急に町中へ現る。

正体は「NTT武蔵野研究開発センタ」NTTの研究開発の拠点となっている。近くで見ると結構デカい。

NTTの各拠点の住所、地図、アクセスなどの所在地情報を掲載しています。
www.rd.ntt

そして建物へ近づいていくと、こんなのが掲げられているのが見える。

写真を撮っていると警備員さんが慌てて守衛室から飛び出してきた。不審人物ではありませんよ。

NTT技術史料館が一般公開されている案内。ここから南門へ移動すれば、史料館に入ることが出来る。

博物館へ入る

南門へ移動すると、ガラス張りの建物が見えてくる。

先程の写真は北東門。歩いて5分程度で到着。

そして、門の近くにいる守衛さんに「右側に入口がありますよ」と案内され、曲がると史料館がお目見えする。

NTT技術史料館とは

NTT技術史料館は何を目的に建てられたのだろうか。入場時に貰える案内にはこんなことが書かれている。

NTT技術史料館は、NTTグループが培った電気通信技術の歴史的遺産を、「歴史をたどる」「技術をさぐる」という2つのテーマで展示しています。

つまり、NTT(日本電信電話株式会社)として重ねてきた技術と努力の結晶が展示されている。

また、NTTの前進である日本電信電話公社(通称:電電公社)時代にあった出来事や開発された技術についても展示されているのも特徴だ。

NTTや電電公社の歴史のみならず、電話・インターネットという「通信」に関する展示がくまなく行われており、その分野に興味がある人からすればたまらない博物館だ。

さて、このNTT技術史料館の特徴に「公開日が少ない」というのがある。

NTTの技術史料館のサイト。日本電信電話公社発足以降の半世紀を中心に、NTTグループの電気通信技術開発の歴史的資産を系譜化・集大成したものです。
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技術史料館の公開日はタイトルに書いている通り、原則木曜日と金曜日のみ。土曜・休日は公開日に含まれていない。

また、公開時間も非常に短く、公開日の13時から17時と4時間しか開いていない。

なぜ、NTTが作り上げた博物館がここまで短い期間でしか一般の人間は入れないのか、疑問である。その疑問は後ほどまた取り上げることにしよう。

NTT技術史料館の自動ドアを抜けると係員さんに声を掛けられた。「簡単なアンケートに答えていただいて、こちらを首に掛けてください」と言われる。

アンケートの内容は、どこでこの史料館を知ったのかといったものだ。書き終えると「GUEST」と書かれたネームカードケースを渡された。

地下1階から見て回るのがオススメです。と係員さんに言われた通り、地下1階へと向かう。

NTTの技術史料館のサイト。日本電信電話公社発足以降の半世紀を中心に、NTTグループの電気通信技術開発の歴史的資産を系譜化・集大成したものです。
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地下1階へ向かうと出迎えてくれたのは、電信電話が辿ってきた歴史についてのコーナー。年表と共に電信電話が歩んできた歴史を振り返ることが出来る。

NTTの技術史料館のサイト。日本電信電話公社発足以降の半世紀を中心に、NTTグループの電気通信技術開発の歴史的資産を系譜化・集大成したものです。
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日本に電信電話の技術がやってきた出来事として「黒船来航」がある。

黒船に乗って「鎖国ヤメナサーイ、開国シナサーイ」と言ったか言わないかで有名なマシュー・ペリーが幕府に献上した物の中に「模型機関車」と「電信機」があった。電話機と出会った日本はゆっくりながらも電話・通信時代が始まっていく。

地下1階に設置されている年表は非常に長く、端から端まで読み込むと10分以上掛かってしまいそうになるぐらいにボリューミーだ。

加えて、年表近くには日本の通信技術が生んだ製品・技術が展示されている。

国産1号電話機。ベルの開発から2年後に製造された。ただ、実用化には至らなかった。

1876年にアレクサンダー・グラハム・ベルによって電話機が開発された。その翌年には日本にも輸入され、実用試験と国産電話機が製作されている。電話機が展示されていることで、触れることは出来ないが、一気にイメージがしやすくなる。

電話の黎明期から戦争という波乱の時期を経て、現代に近づいていくると自分の身の回りにあったような電話機が登場してくる。

画面奥には東京オリンピック時に頒布された電話帳もある。

今でこそ見る機会が減っている黒電話機や赤い公衆電話なども展示されている。

触れることはできないが、実物を近くで見ることは可能だ。

さて、NTT技術史料館は地下1階から3階まであり、全ての展示をご紹介するのは無勉強の自分にとってはとても難しく且つ膨大な数となってしまう。なので、ここからはとても興味深かった2つの展示をご紹介したい

地下1階から3階までの眺め。結構広いですよ。

地下1階から上がって1階へ上がると「技術革新と多様化の時代」というコーナーが出迎えてくれる。

黒電話機に代表されるダイヤル式電話機からプッシュ式電話機の登場、音声だけでなく文字を送ることが可能となったファクシミリサービスの展開、現代の携帯電話・スマートフォンへと繋がるポケットベルや自動車電話の展示もある。

その中で、公衆電話の歴史ゾーンなるものもある。このコーナーでは実際に受話器を上げて、受話器から流れる音声案内を聞くことが出来る。

画面に写る公衆電話は実際に受話器を持ち上げて、音声で案内を聞くことが出来る(ピンク電話は触れられない)

赤色の公衆電話が設置されていた時代には10円玉以外に利用する方法は無く、ダイヤル式が80%をやっと超えた時代ながらも一部では交換手によって電話回線が成り立っていた。などという説明を聞くことが出来る。

実際にお金は入れられないが、ダイヤルを回すことは出来る。

現在の公衆電話は緑色が特徴の「DMC-8A」が主流なのだが、それよりもちょっと前の公衆電話というのも見ることが出来る。というか、こんなの見たことねぇよ。というようなものもあったりするので、要注目だ。

3階へ移動すると「技術史のラウンジ」というコーナーとなる。

3階に上がってすぐのところで巨大パラボラアンテナが出迎える。

ここではインターネットが始まった時代についての展示が行われており、現代に生きる自分たちからすれば、身近な展示と思える。

いよいよインターネット時代の到来。フレッツについての説明もある。

特に「iモード」の展示は目を引くものがあった。iモードは2026年にサービスが終了することになっている。

携帯電話で手軽にメールをやりとりしたり、iモードサイトから便利な情報や楽しいコンテンツをご利用いただける「iモード」についてご紹介します。
www.docomo.ne.jp

今でこそスマホを使えばインターネットへ簡単にアクセス出来る時代になった。しかし、スマホ以前・今で言うガラケーが主流の時代、田舎に住んでいて光回線という概念すら知らなかった自分にとって「iモード」だけが世界と繋がっていたような気持ちになっていたなぁ。懐かしいなぁ。いい時代になったなぁ。という、非常に気色悪い懐古的な気持ちに浸ったりした。

同じく3階には過去に発売された携帯電話が展示されているコーナーがある。

携帯電話が小型化されていき一気に普及し始めた時代に発売された携帯電話を始め、初期型PHSの展示もされている。

そんな中でひと際目を引くものがある。

この大量の携帯電話達。中々に興味深い展示だった。

movaという言葉も久々に見たなぁと思えば、FOMAなる言葉も出てくる。

「movaサービス」および「DoPaサービス」などの終了のお知らせ。
www.docomo.ne.jp

movaとは過去にNTTドコモが提供していたサービス名称だ。

現在は4GやLTE、5Gといった表記を目にすることがあるが、その表記に準ずるなら1Gや2Gとなる。このサービスが登場したのは1991年で、次世代サービスとなるFOMAが登場する2001年まで第一線で使われていたというから驚きだ。

またFOMA時代の端末を見ると、一気に記憶が掘り起こされて、鮮明に思い出すことが出来る。

N90xやSH70x、P90xといった表記が懐かしい。

この時代で音楽・動画配信が始まり、インターネットへアクセスするハードルが下がった。また、定額サービスの「パケ・ホーダイ」もあったなぁと思い出していく。

そのFOMAの時代を超えて、いよいよスマートフォンの時代へと遷移する。

ここ辺りでガラケー時代からスマホ時代へと移る。(iPhoneは見当たらなかった)

最後に

ということで、今回はNTT技術史料館のご紹介だった。

NTTや前身の電電公社についてもそう、電話・通信という技術が歩んできた歴史というのも深堀りすることが出来る。

この史料館は非常にボリュームたっぷりであることに加えて、とても専門用語が多く表記されている博物館でもある。もし興味があるというのなら、事前に用語を頭に入れて向かうのをオススメしたい。

前述の展示以外にも、町中にあるNTTの建物やアンテナ、通信を支えるケーブルがどうなっているかなんて紹介もあったりするので、見てみるのも良いだろう。

またモールス信号を体験するコーナーも設置されているので、やってみてはいかがだろうか。

トン・ツー・モールスの達人。これは太鼓のたt

練習の後に本文を打ち込むというものだ。間違えると大音量で「ブー」という音が館内に響き渡るので注意して欲しい。

昔の電報風の紙を貰える。

最後に「なぜこの史料館は特定の日にしか開いていないのか」という疑問が残っているが、その点について係員さんにお聞きした。

「インターネットで拝見したのですが、平日の木・金しか開放していないようですが、理由とかありますか?」という質問に、係員さんは少し考える素振りを見せた後に答えてくれた。

「元々はNTTの社員や関係する人たちに向けてという展示なので、一般の方にはあまり公開するという考えが無かったのかもしれません。月に数回は開放日を設定していますので、その日を通して皆さんにご利用いただいて、史料館の存在を知ってもらって、楽しんでいただくことになっています」とお答え頂いた。

この係員さんには交換手の体験などにもお付き合い頂いた。短い時間ではありましたが、変な質問にもお答えいただきありがとうございます。

NTTの技術史料館のサイト。日本電信電話公社発足以降の半世紀を中心に、NTTグループの電気通信技術開発の歴史的資産を系譜化・集大成したものです。
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もし興味があれば、時間と日程を合わせて見てみるのもいいだろう。見どころいっぱい、目や頭に電話・通信の技術を詰め込めるこの史料館に足を運んでみては?