上坂すみれのファンミーティングに行って、現実か空想かわからなくなる

上坂すみれのファンミーティングに行って、現実か空想かわからなくなる

寒風轟く港の近く。およそ400人という収容人数の会場。

緊張感を携えながら、前に並ぶ行列を見つめる。ゆっくりと一歩。また一歩近づいていく。いよいよ近づいてくる。自分はなんとか落ち着こうと必死だ。心臓がはち切れんばかりにバクバクと鼓動を強めている。果たしてこれは現実か、はたまた空想か。

今日は12月14日。場所は広島県広島市の広島港。僕は上坂すみれのファンミーティングに行ってきた。

早速ですが時間をさかのぼります

御覧頂いているあなたには申し訳ないが、時計の針を9月下旬に戻そう。この頃は上坂すみれのベストアルバムツアーが愛知、大阪が開催間際。自分からしてみれば、ライブは一体どんな雰囲気でどんな熱量で開催されるのか、全く見当もついていなかった。そんな時期だ。

何気なくTwitterないしXを見ていると、こんなのが流れてきた。

ファンミーティングの開催。チラホラと海外で開催されているという情報は見かけていた。そのファンミーティングが日本に上陸という謳い文句。

へぇ、こんなのやるんだなぁ。場所は、東京か大阪それか名古屋とか福岡とか?と見ていくと、

「広島」

ひ、広島っ!?という驚きと疑問を隠せないままにモニターに映る情報を目に流す。

開催時期は12月14日土曜。会場はBLUE LIVE HIROSHIMA。昼公演が14時30分、夜公演が18時30分から。

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特に自分の目を引かせたのがチケットの特典だ。
チケットは3種類。A席、S席、最上級に位置するVIP席。全てのチケットに直筆サイン入りのポストカードが貰えるそうだ。

S席になるとポストカードに加えて、ファンミーティングのオリジナルグッズ、そしてお客さん5人1組になって上坂すみれ本人とグループショット撮影が出来るという特典。

へぇ、本人と撮影が出来るのかぁ。と思いながら最上級のVIP席の内容を見る。

VIP席はS席と同様にポストカードとオリジナルグッズが貰える他、上坂すみれとツーショット撮影が出来るという内容だった。

各チケットはこんな感じ。

あ、ツーショットTwo Shotねぇ。うんうんうん。

うああ、いいなぁぁぁぁぁぁ

一気にファンミーティングへの興味が一気に上振れする。そうかぁ、ツーショットが出来るのかぁ。VIP席の魅力度が高い。しかし、冷水を掛けられたかのように冷静になる。

当たらんでしょぉ

とも思う。

奪い合いの様相になることは馬鹿な自分でも分かるほどに明白だ。古参勢を差し置いてなんて無理だ。これは勝ち目が無さすぎる。やめだやめだ!撤退だよバカヤロー!と捨て台詞を吐きながらTwitterないしXを閉じる。

でも、諦めきれない

・・・・・・閉じて数秒経過し、もう一度開き直す。

気になってしょうがない。VIP席の内容が魅力的だなぁ…でも当たる気がしないなぁ…応募しないと当たらないしなぁ…ここで一つの案が浮かぶ。「安牌にS席を狙うのはどうだろう」

広島という遠い地に行くのならば、イベントに参加できる確実性が欲しい。VIP席が外れる前提でS席を選ぶ。利口な考えに思える。しかし、せっかくならVIP席一択で行きたい、気もする。

グループショットも確かに魅力的だ。しかし、それよりも魅力的なのを差し置いて安牌に逃げるのはもったいない。どうせ応募するなら、上を目指す。当たるか外れるか。Win or Go homeか、であると。

保険を掛けるような柔い思いではいけない!当たって砕けろだよ!外れたら外れました!それ以外にない!たかが抽選への応募なのに、最後の決戦に挑むグラディエーターのような気分に近かった。

前日に何があっても良いように、また東京から移動がしやすいように夜公演のVIP席一択に決める。決めたからには応募する。チケットサイトであるイープラスを開き、VIP席1枚と入力。そして、「申込み」ボタンを押下。応募が完了というページが表示される。やってやった…

ここで冷静になる。VIP席一択は危ないだろぉ….と早速後悔する。

そんな1人で勝手に盛り上がり、1人で勝手に気持ちを高ぶらせた後、開催を待ち望んだライブは砂が落ちるが如く過ぎ去った。

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そして10月中旬。抽選結果発表のメールが届いた。メールを凝視し、自分は思った。

ま、マジで?これは夢なのか?と疑うほどだ。

今まで抽選というモノには縁がなかったから尚更だ。当たる時は当たるんだな…という驚き。それに加え、今年の運を使い切ったような気がした。本当にツーショットすんの?現実かい?明日死ぬんじゃねえかな?

広島へ

時計の針を一気に12月14日に戻そう。場所は前述の通り、広島県広島市だ。

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17時45分から開場、18時30分からの開演。ホテルから路面電車の最寄り停留所「比治山下」から会場のBLUE LIVE HIROSHIMAへ向かった。その日に吹いていた風邪は肌に触れると一気に熱を持っていくかのようだった。

今回の会場「BLUE LIVE HIROSHIMA」の最寄り停留所は「海岸通」で、終着の広島港まであともう少しというところにある。

停留所に降り立つと多分これから同じ会場に行くんだろうなぁ、という人を数人見かけ横断歩道の信号が変わるのを待っていた。この人たちの存在はどこか心強かった。

海岸通の周辺は海岸付近らしく倉庫街。東京でいえば新木場や芝浦ふ頭、名古屋であれば名古屋港、大阪だとニュートラムの各駅の雰囲気に近い。

コンビニは停留所の近くにファミリーマート、セブンイレブンがそれぞれ1軒あるぐらいで、会場への道のりには1軒もない。会場へ近づいていくほど人気のない雑居ビルが出現し始め、夜の18時近くなのに周辺の街灯が心許ないほどに暗い。その中を集団で移動できる。安心感は有り余るものだった。

雑居ビルと雑居ビルの合間を抜けて、海岸へ出る。するとBLUE LIVE HIROSHIMAが姿を表した。暗闇に浮かぶ華やかな照明。照明が目に刺さる。

入場

今回のファンミーティングの入場時には以下の順番でチェックが行われた。

  • 手荷物検査
  • 顔写真付き身分証明書の確認
  • 電子チケットの確認

今回のファンミーティングではチケット販売サイト・イープラスのシステムを利用しており、当日はイープラスアプリの電子チケット機能を使用して入場となった。

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最近のイベント・ライブでは電子チケットが増えており、スマホの持参が必須となっている。電源が入らないとほぼアウトなので、不安な人はモバイルバッテリーを持参することはした方が良いだろう。

上記の流れを終えると、「こちらをどうぞ」と渡される。特典の直筆サイン入りポストカードだった。

「あ、ありがとうございます」と何気なしにを受け取った。その時は何も思わなかったが、「初めてのサイン入りグッズだ!」と気づいたのは東京に帰ってきてのことだった。

会場内の雰囲気

会場内へ入場したのは18時を過ぎてのこと。この時点で多くの人が着席をしていた。10月のライブの時に見かけた奇抜というか魅力的な格好をした人は少なめだったが、ゴスロリを着た女性がチラホラいたりして、やはり映えて見えるなぁと思ったりもする。

そんな会場内を恐る恐る入っていく。なんだか、シーンとしていて妙な緊張感が張り詰めていた。ここは国家試験の会場か何かですか?というぐらいに緊張感があった。

多くの人が無言でスマホを触れていて、耳を澄ませると呼吸音すら聞こえそうなほどに静寂が優勢だった。ファンミーティングというイベントがそうさせているのだろうか。

座席は前から2列以内だった。どうやらVIP席はAとB席の2列だったようだ。座るとステージから近い!と興奮が吹き上がったが、周囲の緊張感に合わせるように静かに座席に鎮座。浮き上がる気持ちを身体に押し込めつつ、黙って開演の時を待つことにした。

開演

時間は過ぎ去って18時30分。ステージ上に上坂すみれ本人が現れると身体が押される程に歓声が上がった。

今回の衣装ではベストアルバムツアーの大阪公演の衣装を身に纏っていた。それを見て気づいたのだろうか、後方にいた男性の声で「大阪じゃん!」という声がなんだか今でも忘れられない。

前から2列目以内から見た感想は「本人がいる!」「近い!」「華奢だなぁ!」という面白みもへったくれもないものばかり。10月のライブでも見たというのに、「本当に実在するんだなぁ…」と近さのあまりトンチンカンなことさえ思い始めた。

ファンミーティングでは上坂すみれ本人が質問に答えたり、会場内を闊歩してレアな同志を探すというコーナーが中心に繰り広げられた。

それらを通して、一番印象に残っているのは参加する人から募った質問に答えるというものだ。

質問の内容は「転職を考えている」という内容のものだ。周囲の人のことも気になりなかなか踏ん切りがつかないという悩み。転職をする上でさけては通れない問題を質問をした人は抱えていた。

質問した人にとって憧れの人から強い言葉で将来のことを第一に考えるように、なんて言われると今までの悩み・苦悩も肯定されるよなぁと思えた。質問した自分と1対1で答えてくれるというのはかけがえのないものだ。ライブとは違い距離感の近さというのもこれまたファンミーティングの魅力なのだろう。

あとはじゃんけん大会だろうか。大人のじゃんけんってなんか迫力があって、格闘技のUFCみたい。と思えた。

撮影

ファンミーティングが一通り進むと、フリー撮影時間となった。

海外でのファンミーティングでも行われていたようで、この時間では自分のスマホを使って上坂すみれ本人を撮影出来るというもの。ステージの上手(観客席から右)、中央、下手(観客席から左)という順番で本人が動き、観客席から撮影をするという形。

ここで考える。景色はスマホでいくらでも撮るけど、人を撮ることはまぁ無い。設定の仕方もよくわからない。それでも、せっかくのチャンスなのだから綺麗な写真を撮らせてもらおう!と前のめりになる。

時間はおよそ40秒。会場のアナウンスと共に自分も含めて、多くの人が撮影を始める。

みんなが一斉に撮り始めると、けたたましいシャッター音の嵐。不祥事を起こした人の記者会見でもこんなにシャッター音鳴らねぇよと思うぐらいにシャッター音がすごい。みんなそれだけいい写真を撮りたいという裏返しなのだ。

特に奥の方から連写機能を多用しているのだろうか、「トゥルルルルルルルル」というフルオート銃で射撃してんのか?という音が響いたりもした。

自分はというと1枚1枚カシャカシャと撮影ボタンを押すが、量が稼げない。質よりもなんちゃら、という言葉がある通り量も欲しい。なら、連射しかねぇか…!ということで自分も連写をすることに。

ここからiPhoneのカメラについてのお話となって恐縮なのだが、iPhoneで連写をする場合は撮影ボタンを左にずらすと連写となる。

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これをやった瞬間に「チャチャチャチャチャチャッ」という音が響く。そしてそれを繰り返す。集中しているからか、自分から真正面で撮影できる時間というのはあっという間に終わった。

今回大量に撮影した中で皆さんにお見せ出来そうなのは、TwitterないしXでポストをしているので興味があったら見てみてくださいな。

iPhoneと画像編集ソフトのAdobe Lightroomをもってしてこれが限界であり、自分の撮影技術の低さが恨めしい。

ちなみに撮影枚数は100枚以上だった。

ツーショット

楽しい時間はあっという間に過ぎ去ってしまうもので、ファンミーティングは1時間程度で終了した。

いよいよここからVIP席のツーショット、S席のグループショット撮影と移っていく。ファンミーティングが終了して、撮影へ移行する合間の空気感にまた緊張感が過る。

隣に座っていた人はスマホのインカメラ機能を使って髪の毛を整えていたり、目を閉じ瞑想中の人もチラホラ。かくいう私も緊張感があり、誰もいないステージを見続けていた。意識を遠くに飛ばそうと必死だった。他人の事をとやかく言う権利など無かった。

しばらくして、スタッフさんによる説明がありA席の人から順番に撮影へと向かっていく。
少しすると列に加わるように促される。とうとう来たか!と重たい身体を持ち上げて、列に並ぶ。

注意事項として本人と会話はできないこと、ツーショットでは自分のスマートフォンをスタッフさんに渡しそれで撮影をするという形式であることを説明される。

なるほど、なるほど。と頭の中で頷くが癖である猫背が加速し、身体全体が硬直上手く身体が動かない。緊張感はマックスであることに気付く。

列の先頭がゆっくりと撮影場所へ吸い込まれる。そして、吸い込まれた人はどこかホッとした表情を浮かべて吐き出されていく。それを繰り返し、それを何度も見る。皆似たような表情。

そして、自分の前の人が吸い込まれていった。

スタッフさんへスマートフォンを渡し、数秒待つ。この時に「ふぅ」と息を吐き身体の中にある緊張を吐き出そうとする。そして不慣れな笑顔を作るべく口角を上げてみる。しかし、上手くはいかない。

「では、どうぞ」とスタッフさんに手を差し伸べられ、中へ入るように言われる。

一つだけポツンと置かれている椅子。そこに座り込む。満面の笑みで自分のスマートフォンを持つ男性スタッフさんに視線を向けて、写真を2枚撮ってもらう。そして、周囲のスタッフさんに「ありがとうございました」と小声で言って、撮影場所から離れる。実際の撮影時間は1分程度、体感では10秒以下に感じるほどあっという間。

ここで気付く。「あれ、本人よく見てないぞ?」と気付いたのは出てすぐのことだ。

現実へ引きずり戻される

会場を出る間際に、「グッズどうぞー」と渡される。グッズを見て思う。「自分はこの人とツーショットを撮ったのだろうか?」

もしかして幻覚でも見たんじゃねぇか?隣に精巧な作りをした人形がドンッと置かれていただけではないだろうか?と変に考えてしまう。

BLUE LIVE HIROSHIMAの出口を抜けると、広島湾の寒風が自分を襲う。同時に緊張感が地面を流れていき、自然と身体が脱力してしまう。今までの時間で起きたことは果たして本当か否か。それを確かめるために、スマートフォンのカメラロールを見る。

大量に撮影した上坂すみれの写真。その次に、ご本人と自分が。写っている。

「本当にツーショット撮ってる・・・」

ズームをすると頬に手を当てて完璧な表情を見せる上坂すみれの隣で、笑顔を何とか引き出そうとしているが結果的に顔を引き攣っている自分。

「写真写り悪ぅ…..」

どうやら、現実だったようだ。

空想のような空間の近くでは静かに釣りを興じている人がいるというおかしさ。