僕を18時間掛けて北海道に連れて行ってくれ・商船三井フェリー『さんふらわあ』1日目

僕を18時間掛けて北海道に連れて行ってくれ・商船三井フェリー『さんふらわあ』1日目

2025年1月3日

北海道へ行くなら。そんなの明白だ、1番は飛行機だ。

次点で新幹線になるだろう。新函館北斗まで行って、そこから特急に乗り換えるか。それもまたよし。

ただ、同じことを繰り返すというのは味気ない。

今回は味変を試みたい。旅行というのはベターな道を歩むことばかりじゃない。少し長い時間が掛かってしまうが、それもまたよし。

茨城県大洗を午後7時45分に出発する巨大な船は星屑のような雪が降りしきる北海道へ直進する。
「さんふらわあ」よ、僕をあの町に、北海道の苫小牧に連れて行ってくれ。

冬の北海道へ行きてぇ

12月。その月に自分は自分を労うために長期旅行を敢行する。その行き先は毎年決まっている。場所は北海道。敢えて冬の北海道に、だ。

知り合いからは「夏に行けば良いんじゃない?」と言われたことがある。そりゃそうだ。なんでまた極寒で雪が降りしきる北海道へ向かう必要があるのか。

東京近郊に住んでいると冬はしっかりと寒くなるのだけども、寒風による寒さで冬を実感する。唇の潤いを奪い去る風ではなく可能なら雪を肌で触れて、冬というのを感じ取りたい。そうなると自然と北海道が選択肢に浮上してくる。後は料金が比較的安いからもある。

去年は北海道開拓の村に行きましてね

そんな冬の北海道へ2024年も向かおうかいなと思い始めた10月。

職場で仕事を貪り終えていると、タイミングよくJALやANAが12月搭乗分をセールで発売中という情報を得た。

「そうか、なら安く航空券を買ってまた北海道へ行くかぁ」

詳細を見ようとマウスを握った刹那、思ったことがある。

毎度毎度同じ行き方でつまらんなぁ、と。

冬の北海道へ向かう方法はこれまで幾通り経験してきた。

ベタな方法だと、飛行機だろう。所要時間は1時間半程度。北海道を堪能するにはこれが一番の方法だ。

全部羽田→新千歳空港の飛行機。文字が霞むほどに大量である。

飛行機以外となれば新幹線での移動も経験した。東京駅から東北・北海道新幹線を4時間近く乗車して新函館北斗駅へ。そこから更に特急の北斗に乗車して札幌へ向かうというものだ。所要時間は合計で8時間近く。長い時間掛かってしまうが鉄道旅をするにはもってこいだ。

新函館北斗駅から更に特急で4時間。長いよぉ。

しかしだ。これらの方法とは異なるやり方で北海道へ行きたい。そんなことを仕事場で思い始めた。

もっと移動というものに時間を掛けてもよろしいんじゃないか。移動時間を短縮するのも旅行を楽しむ上で重要だと。ただ自分が自分のために自分らしく旅行するためなのだから。他人の目なんてありゃしねぇ。少し捻った移動方法を行使したい。

「北海道 行き方」

こんなのを職場のパソコンでGoogleの検索欄に打ち込んだ。飛行機と鉄道以外に北海道へ行く方法を純粋に知りたかった。「今どきの小中学生でさえ、こんな陳腐な検索方法はしねぇよ」と自分に自分で笑っていると、出てきたんだなぁ。

「北海道 行き方 フェリー」という文字が。

茨城の大洗から行こう

フェリーで東京から北海道へ向かう方法として、まずは茨城県の大洗へ。大洗港から約18時間掛けて北海道は苫小牧まで向かうというルートだ。運営するのは商船三井フェリー、その名も「さんふらわあ」である。

商船三井さんふらわあトップページです。マイカーやバイク、ペットと首都圏-北海道の船旅は商船三井さんふらわあが便利お得です。「船旅のたのしさ」をコンセプトに、より…
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12月の値段は年末年始を除いて、9500円から。その料金を基本に車で乗船する人の料金、個室を利用したいなら個室料金を追加、という形で合計料金を算出する。

12月や1月の料金はA期間、夏休み期間はE期間と料金が異なる。さんふらわあ公式サイトより引用

基本料金だけを見ると鉄道よりは安く、飛行機と同じか安めという料金だ。ただ基本料金だけだと雑魚寝となるので少々厳しい。

ツーリストの内装。さんふらわあ公式サイトより引用

個室も用意されているが高い追加料金が生じる。うーん、どうしたものか。

調べていくと夏休みシーズンを終えた9月から一人旅をする人向けに個室料金のキャンペーンが行われていた。

通常なら個室を1人で利用する場合、個室料金に船室貸切料が発生する。ただキャンペーンを利用すると専有料金が免除、個室料金のみで利用可能となるのだ。

一番安く個室を利用する場合、窓がない部屋になるが値段も基本料金+個室料金で19200円。

更に!なんと「さんふらわあ冬割」なるものもあり、ななななななんと!15200円に!うあわあああああああ!というわけで、

これに決めた!と某ポケットなモンスターのような思いと共に予約をした。

ということで、予約の話はここまで。一気に話を12月16日の鹿島臨海鉄道の大洗駅へ移していこうううううわああああああ。

駅から徒歩

鹿島臨海鉄道に乗り込んで水戸から途中の常澄駅で1時間ほど浮遊した後に大洗駅へとやってきた。

水戸と大洗の中間にある無人駅「常澄駅」が空中に浮いてるみたいだから行ってみるか
茨城の県庁所在地である水戸。そこから海辺の町・大洗へ向かう途中にある無人駅が気になった。 その駅は「常澄駅」。気になるから降りてみたい。純粋にそういう記事ですよ…
tetsu-dakawa.com

時刻は17時23分。フェリーが出発する大洗港フェリーターミナルまでは歩いて30分程度だ。

17時だけど、暗いぜ!

17時という人々の活動が停止するには少々早すぎる時刻だが、大洗駅前は交通量が少なく物寂しい雰囲気でいっぱいだった。

暗いねぇ。暗いぜ!

徒歩でのアクセスはあまりおすすめは出来ない。歩道を照らす街灯は少なめで、人通りもあまり多くはない。可能なら、水戸からバスで向かうか大洗駅前のタクシーに乗り込んで向かうことをおすすめしたい。

それでも、徒歩で向かうことでのメリットはもちろんある。それはフェリーターミナル近くにスーパーマーケット「セイミヤ 大洗店」に立ち寄れることだ。

ここでカップラーメンやお菓子、ジュースやミネラルウォーター、お酒などを調達できる。また隣にはドラッグストアのカワチ薬品もある。更には100円ショップのセリアもある。雑貨が必要になった時に役立つ。

お店から大洗マリンタワーの横を通って10分程度で大洗港フェリーターミナルに到着する。

フェリーターミナルからいよいよ乗船

大洗港フェリーターミナルへ到着。大型トラックや乗用車が大きな音を立てて中へ入っていくが徒歩で向かう人は自分以外に見かけなかった。

光線が飛び交ってんのかってぐらい照明が焚かれていた。

ピンボケしていて申し訳ないが、これが今回乗船する「さんふらわあ」だ。19時45分から翌日13時30分までの相棒だ。

では乗船手続きをするために早速フェリーターミナルへ入っていこう。

「大」と「タ」と「ナル」しか照明が付いていないのは一体何故か。

フェリーターミナルの中へ入っていけば、真正面に自動チェックイン機がある。そこで操作をすると乗船券と部屋の鍵が一緒になった磁気カードが発行される。

磁気カードは下船時まで使うので無くさないように気をつけよう。

車で乗船する人は右の機械に車検証を入れる

フェリーターミナルの2階に上がると待合スペースがある。そこで乗船開始となる18時まで待つことに。徒歩乗船はおよそ20人程度。

外国人観光客の4人グループや親子3人連れ、中にはパソコンを使ってリモート会議をしているような男性まで。みんな様々な事情を抱えてフェリーへ乗り込もうとしている。

自動販売機

フェリーターミナル内には多種多様な自動販売機が設置されていた。フェリーターミナル近くにはコンビニが無く、陸地でジュースを買うにはこの自動販売機を利用する以外にない。

サントリーの自動販売機を見てみると、ミネラルウォーター500mlが140円。レモンスカッシュが170円と安いとは言えない。

ペプシのマークがあるのにペプシを売ってないって、おかしくないっすか!?サントリーさん!

お酒のお供となる柿ピーやハッピーターンも発売はされているものの、小袋タイプでそれぞれ150円。うーん、やはり乗船前に調達した方が良さそうだ。

カロリーメイト2つ入りが150円。パンも170円。高いかなぁ。

変わり種として中古のカードゲームが発売されていた。ポケモンカードやドラゴンボールのカードに遊戯王などなど。しかし、一体どの層に向けて設置してるんだ?と思わずにはいられない。

船に乗る前にポケカ買っとくか!ってなるんでしょうね。

ブリッジ

ターミナル内の放送で「徒歩での乗船が可能となりました」という放送が響く。一斉に待合スペースで待っていた人たちが船へと向かう。

乗船券は船内で確認するそうだ。駅の改札や空港の搭乗口のようなものもなく、「苫小牧行」という看板だけが上部に設置されていて、本当にこれから船に乗るのか?と思わせる。

簡単に掲示されている苫小牧行が違和感を醸し出す。

いよいよ船内へ。そこでスタッフの方に乗船券を読み取ってもらえば、正式に乗船となる。

部屋へ

船内の案内を少し見てみよう。

1階から4階までは乗用車やバイク、トラックの駐車スペースとなっている。今回は徒歩乗船なので関係はなかったが、駐車した後に閉め切るので戻ることは出来ないというアナウンスが定期的にされていた。

1〜7階まである。デカいねぇ。

乗船した旅客は主に5階〜7階を使うことになる。徒歩での乗船をするとまずは5階に到着、そこから各自の部屋へ移動するわけだが、自分の部屋は6階にあった。

今回の部屋は「スーペリアインサイド」で洋室タイプ。

扉を開けるとこんな感じ。2名定員の部屋を1人で使用し、フェリー移動中にプライベートな空間が確保できるという意味では非常に贅沢だ。

この部屋の特徴として前述の通り「窓」が無い。それでも、他の設備が粗雑とかそんなことはなく、ベッドは2名定員の部屋なので2つもあるし、冷蔵庫もある。

更にはテレビも設置されているし、エアコンもある。

そして、一番ありがたいのが、トイレが完備されていることだ。

個室よりもグレードが下のものとなれば、トイレは共同となってしまう。自分の好きなタイミングでトイレへ行けるという点だけでも個室にするメリットは十分にある。

またトイレの横にはシャワーも用意されている。もちろんお湯はしっかりと出る。下手なホテルよりもすぐに出てくる。びっくりするぐらい熱いお湯が出てくる。

出発

「さんふらわあ」は各階から展望デッキへ出ることが可能だ。夜の大洗を見ておくためにデッキへと出る。

まずは太平洋側を見てみる。この日は満月、夜空に浮かぶ雲を仄かに照らしていた。停泊している船や波止も月光にさらけ出されていてじっくりと観察しよう。

と思ったのだが、如何せん寒い。冷たい風が修行か、ってぐらいにビシビシと肌にぶつかってくる。ここは一旦大洗市街の方へ移動しよう。

月ピカーンである。

デッキを移動して大洗市街を望む。自分が歩いてきたデッキが見える。そして奥にはフェリーターミナルがあり、同じようなフェリーが停泊中。

さんふらわあは19時発以外に深夜1時45分に出発するものもあり、そのフェリーだろう。ちなみに1時45分に出発すると苫小牧には19時45分に到着する。

夕食

船内にはレストランがあり、乗船後18時45分から20時45分(ラストオーダー20時15分)の営業時間で夕食が提供される。

形式はバイキング。夕食のみの場合は大人2300円・子ども1000円。夕食+朝食セットで購入すると大人3200円・子ども1600円で食事を楽しめる。

バイキング以外に数量限定で定食メニューが提供されているそうで、「お肉定食」「お魚定食」乗組員さん達が食べる「まかない飯」の3種類あるそうだ。各種10食限定で1200円からの発売。

商船三井さんふらわあの夕方便 さんふらわあ さっぽろ/ふらの のパブリックスペース紹介ページです。ショップやレストランをはじめ、大海原を眺めながらご入浴いただけ…
www.sunflower.co.jp

今回は夕食+朝食セットのバイキングを選ぶ。

それぞれレストラン横にある券売機で購入するわけだが、現金のみの取り扱い。クレジットカードやPayPayやSuicaといったQRコード・電子マネー決済は使用できないので要注意だ。更に船内にはATMは無いので乗船前に現金は用意しておきたいところだ。

18時45分、船内に「レストランの営業を開始しました」というアナウンスが響く。

19時ぐらいに行くと多くの人がレストランを訪れていた。客層としては7割方が男性、その中に女性もチラホラと見受けられた。中には40代の男性と小学生ぐらいの男の子という親子連れもいたりもした。

メニュー

今回は以下のメニューが提供されていた。

【さんふらわあ ふらの】

にら豚スタミナ炒め、鶏と舞茸の照りマヨグリル、赤魚胡麻醤油焼き、焼きちゃんぽん、ミニおでん、チキンナゲット、たこ焼き、温蕎麦、豆腐と秋茄子の揚げ出し、キャベツとザーサイの和え物、鮪ユッケ、キノコの炊き込みご飯、エスニックサラダ、かぼちゃとリンゴのサラダ、リンゴとキャラメルケーキ、大学芋、サラダ各種、デザート各種、フルーツ各種 他

さんふらわあ・レストランの案内より引用

ドリンクバーも用意されていて、ファミレスでよく見る機械と一緒だ。この写真だけではフェリーに乗っているとは全く思わない。

更にはバイキングのデザートの中にソフトクリームもあった。カラオケとかネットカフェでよく見かける機械が用意されている。フェリーに乗りながらソフトクリーム食べ放題とは、船旅の印象がガラリと変わってしまった。

船に乗りながらバイキングって贅沢なもんだなぁ。と思いながら、夜の大洗港を眺める。

バイキングを食べ終わると共有スペースでフライドポテトをポリポリと食べて、それをビールで流し込む女性が1人。なんて優雅な。と思っていれば、フライドポテトは単品での注文が可能と気付く。1品500円也。

カメラが「アルコール」にピントを合わせてしまうほど主張が強い。

更には北海道限定ビールである「サッポロクラシック」もこちらも500円。

本当に船旅か?と思いつつ、旅行に来ているからとテンションが上がりポテトを注文した。

部屋に戻って、ポリポリとポテトを食べる。部屋にいると自分が船の中とは全く思えない。

一度部屋へ戻ってみると、体が一方向に引っ張られる感覚があった。部屋を出て窓から外を眺めるとフェリーは静かに大洗を後にしていた。電車や飛行機のように「発車します」的なアナウンスは無いんだなと思いながら、長いのか短いのかわからないフェリーの旅がいよいよ始まったことを実感する。