北の大都市・札幌にチームを構えていた日本プロ野球の北海道日本ハムファイターズが去ってから約2年。
今、札幌ドームは一体どうなっているんだろうか。という冷やかし半分ジャーナリズム的行動半分でお送りする記事。
目次
あの建物を見て、あの建物を思う
フェリーで苫小牧に到着した後、特急すずらんに乗り込んで札幌へ向かう。特急はスピードを上げて苫小牧駅から千歳方面へ向かっていく。その道中、進行方向左手に大きな建物が見えてきた。
それは「エスコンフィールド北海道」だった。新千歳空港と札幌駅の丁度中間に北広島駅があり、その近くだ。
角張った屋根とガラス張りの壁。一瞬で過ぎ去る特急の車内からでも、特徴的だった。
エスコンフィールドはプロ野球がオフシーズンとなっていても、グルメやショッピングにサウナといったものまで、野球場という範疇を超えた商業施設として営業しているそうだ。
いつか行ってみたいなぁ。と思っていると、頭の中でチラつくものがあった。
それは、日ハムがいなくなってしまった札幌ドームだ。
札幌ドームから日ハムがいなくなるまで
まず、北海道日本ハムファイターズが札幌ドームからエスコンフィールドに本拠地を移した経緯を見ていこう。
北海道日本ハムファイターズは2004年から2022年まで本拠地を札幌ドームに構えてきた。2004年移転当時から地域密着型の球団を目指して活動し続け、2016年には入場者数が200万人を突破する人気球団となった。
ただ人気の裏でファイターズは本拠地である札幌ドームとの関係に苦慮していた。札幌ドームの所有者は札幌市。札幌ドームを使用して試合を開催する場合には「札幌ドーム条例」に基づいて使用料を支払うこととなっていた。
試合の動員数に応じて使用料は変動することになっていて、ファイターズは年間で10億円以上の支払いがあったとされる。
また札幌ドームの運営・管理者は「株式会社札幌ドーム」が担っていて、ファイターズからしてみればスタジアム内の広告や物販収入が上がらない・自分たちの出費は嵩むだけ。という問題を抱えていた。
それらの問題を解決するべく、2016年に札幌市や周辺地域に新スタジアムの建設を検討開始。その間に札幌市との協議もあったが、2018年にファイターズは北広島市に新スタジアムを建設することを決定。
2023年に本拠地を札幌ドームからエスコンフィールドへ移転した。という経緯がある。
ファイターズがいなくなって2年経ってますけども
札幌ドームからファイターズがいなくなって約2年。その間に札幌ドームはどうなったのだろうか?
札幌市は移転当初、2027年まで5年で黒字化を目指していた。ただ、赤字は想定以上のものとなり、札幌ドームは2023年度に6.5億円の赤字となった。
イベントや稼働日数がファイターズがいなくなったことによって激減、大幅な減収減益に拍車を掛けてしまった。
収益改善に繋げるべく、暗幕を用いて仕切る「新モード」を導入し音楽ライブなどのイベント開催を増やすことを狙ったものの、利用は不調。収益改善には程遠い。
札幌市は黒字化が困難であるとして、収支計画を見直すという判断を下している。
ただ、暗いニュースばかりではない。
2024年には施設命名権を「大和ハウス」が取得。2024年8月から「大和ハウス プレミストドーム」という名称が使用されている。
2025年には札幌ドームで人気アーティストによるコンサートの予定があり、地道ながら札幌ドームは動き続けている。
ということで最寄り駅に行ってみよう
まぁ、前置きが長くなってしまったが、実際に見てからでないと何も判断できないよね。ということで、札幌ドームに行ってみることにした。
札幌駅から札幌ドームへは、札幌市営地下鉄東豊線に乗り込んで、終着駅で最寄駅となる福住駅へ向かう方法が一番だ。
札幌市営地下鉄の3路線の中でも一番歴史が浅い東豊線。札幌駅(市営地下鉄では『さっぽろ駅』表記)にはJR北海道と同じ市営地下鉄の南北線があるが、それらからかなり離れた場所に改札がある。
札幌駅から札幌ドームの最寄り駅である福住駅まで約14分で到着する。
訪れた日は12月18日・平日ということ、並行する南北線は札幌・大通・すすきのと繁華街を通るが、東豊線は少し外れを通っていることもあるからか人はまばらだった。
福住駅に到着。ホーム内には札幌ドームへの案内が貼られているのが特徴的だ。
福住駅の改札近くにはイベント開催のお知らせが掲示されていた。「結構イベントが予定されているんだなぁ」と瞬間的に思ったものの、どちらかというと体育館・北海きたえーるの予定が多かった。
出口は3番からだ。駅を出て徒歩10分程度で到着する。
札幌ドームを本拠地とする北海道コンサドーレ札幌のスローガンが書かれた看板が階段途中にあった。
ちなみに、訪れた日の1週間近く前に北海道コンサドーレ札幌の2024年シーズン最後の試合が開催されている。
イトーヨーカドーはいなくなっていた
福住駅に直結する形でイトーヨーカドー 福住店があったのだが、2024年9月23日に営業が終了。
赤字が続くイトーヨーカドーの構造改革によって、17店舗が営業を終了。その中には札幌市内にある4店舗・福住店も含まれていた。
イトーヨーカドーが閉店した1週間近くで屋上の看板は撤去となったが、早々と後継店舗としてOICグループが展開するスーパー「ロピア」が入居することも決まった。
ロピア自体の開業は2月頃を予定し、1階から3階まで「CiiNA CiiNA福住」が先行開業していた。
ただ、開業といっても人が出入りするであろう1階部分はドトール以外物寂しい状況であることは否めない。
ロピアが開業したら状況は変わるだろう。その時まで辛抱、というところだ。
イトーヨーカドーの閉店に関して、「札幌ドームから日ハムがいなくなって、イトーヨーカドーに行く人が減ったので閉店した」という内容の記事や動画を見かけたが、どちらかというと「イトーヨーカドー本体の改革が断行されたことで閉店した」ということだけは覚えておきたい。
福住駅から札幌ドームへ
福住駅から札幌ドームまでは約10分程度。途中にはマクドナルドやラーメンの山岡家もあったりする。
途中には雪をかぶったパンダもいた。
近くの歩道橋を超えていくと、銀色の屋根が特徴的な札幌ドームが見えてくる。大和ハウスのマークと「プレミストドーム」の文字もしっかりとある。
掲示物や案内にもプレミストドームの表記がある。
いよいよ札幌ドームへ
イベントの予定が無い日でも、札幌ドーム内へ入ることが可能だ。入口は北ゲートからとなっている。その北ゲートへ繋がるコンコースに注目すると、北海道コンサドーレ札幌のエンブレムが掲げられていた。
壁にも、フラッグにもコンサドーレ。
途中でランニングをしている高校生か大学生ぐらいの男性とすれ違う。訪れた日は一気に雪が降り、道路は真っ白となった札幌市内。数少ない雪が無い場所と言っても良いだろう。
コンコースの先に行くと「総合案内」という看板がある。総合案内で受付の方に入場料・大人520円を支払い入場券をもらう。そして、エレベーターでドームの中へ。という流れで入場する。
エレベーターを上がり、細長い廊下を進む。そして、廊下を抜けると札幌ドーム内部へ。
テレビでよく見た野球場がそこにはあった。黒い座席、黄緑色のフィールド、灰色というか黒寄りの壁。上から見えるフィールドはとても広く見える。
ご覧になっている画像では照明がバンバンに点いているように見えるが、実際にはかなり暗い。別に明るくする必要性もないのだけども、どこか心細くなる暗さだった。
野球で言えばバックスクリーン側から子どもたちの声がした。そちらへ行ってみる。
キッズパークという遊具が設置されている場所で、お母さんと子どもたちが楽しそうに遊んでいた。雪が降ると外で遊ぶ機会が減少する札幌市内、貴重な子どもたちの遊び場がそこにあった。
キッズパークの窓から外を見てみると、一面が雪に覆われている何かを見つける。
これは、サッカーやラグビーで使用する「ホバリングサッカーステージ」だ。天然芝が植えられていて、空気圧によって地上から浮き上がる。浮き上がった状態でドーム内へ移動、サッカーモードに変更して使用できる。
展望台へ
野球で言えば、3塁側上に展望台へ向かうエスカレーターがある。エスカレーターは青白い照明が点いていて、どこか近未来感があった。
展望台には過去に開催されたサッカー日本代表の試合「SAMURAI BLUE 対 U-24日本代表」で使用したユニフォームや、
2013年に開催したプロ野球オールスターゲームに出場した選手のサインもあった。
展望台からは札幌駅方面を見渡せる。
展望台から景色を見渡して振り返ってみると、スタッフの方1人と自分以外に誰もいなかった。
札幌ドームの中で最上部から見下ろす景色は壮観だった。
札幌ドームはこれからどうした良いのか?
札幌ドーム内へ入って最初に思ったのは、野球で言えば外野部分に位置する壁の広告が結構減少しているなぁ。という所だ。
北海道日本ハムファイターズの公式戦最後の試合の映像を見ると、広告は敷き詰められている。現在と比べると、減少しているのがはっきりと分かる。
プロ野球は平日・土休日に多く開催されることから、お客さんが確実に集まるというメリットがあった。しかし、それらのメリットが消失したのであれば、広告主が撤退するのは当然である。
更に訪れて思ったことは、施設全体に元気がないというか覇気がない。そんな感じがした。
外部的要因ではあるが最寄り駅の福住駅にあったイトーヨーカドーの閉店と合わさって、札幌ドーム周辺の空気に包まれているように思えた。いや、こればっかしは個人的感想なのだが。
札幌ドームからプロスポーツが完全に撤退したわけではない。北海道コンサドーレ札幌が戦い続けている。なら、本拠地とする北海道コンサドーレ札幌に傾倒したら良いのでは?と思うが、これもまた厳しい。
北海道コンサドーレ札幌は2024年シーズンを20チーム中19位で終えた。そのため、J2降格という結果に。集客が見込めるJ1に残留できなかったこともあり、札幌ドームの減収が見込まれる。
札幌ドームはここまで来たら朽ちる以外にないのだろうか。
個人的には全天候型に対応できるメリットを活かして、酷暑や冬場でもイベントが開催できる点を強く打ち出して、誘致するというのが良いのではないだろうか?とも思ったりする。
特に夏場は屋外でスポーツをするのが厳しいこの国だ。サッカーやラグビーなどの球技が開催できる会場で冷暖房設備が用意されている点は必ず再評価されるはずだ。
サッカーであればヨーロッパでオフシーズンとなる夏場に海外クラブチームの親善試合を誘致したり、ラグビーであれば夏場に開催するテストマッチの本拠地として誘致したりといろいろ考えられそうだ。
ただ、頭のいい人たちがそんなことを思いついていないわけがない。また、平日の稼働をどうするのか?という問題もある。
最後に
今回、札幌ドームについて調べていくと、過去の札幌市と北海道日本ハムファイターズとの2者間による軋轢も相まって、野球ファンから少々冷たい言葉が投げかけられている印象があった。
もちろん野球ファンからしてみれば「自業自得」的な札幌市を冷たく揶揄することもあるだろう。ただ、訪れて思ったのは「そんなに突き放せない」気がしたのだ。
北口ゲート付近を歩いていると清掃スタッフの方とすれ違った。サッカーはオフシーズンでイベントも限られたものしか無い。ただ、いつかやってくるであろう人たちのためにも綺麗にしている。その人達の存在をぞんざいには扱えない。そんな思いを抱いた。
また、ファイターズファンからすれば「過去のスタジアム」だが、コンサドーレの選手・関係者並びにサポーターからしてみれば札幌ドームは「大切なスタジアム」であることに変わりはない。このスタジアムで悲喜交交な経験を消失させることはできない。
だからこそ、これまでのことを振り返って反省し、打てる手は打ってみるのも札幌市には求められている。
市民の憩いの場として機能している側面もある札幌ドーム。訪れた日の夜には少年野球の試合が予定されていた。市民に寄り添った施設して生まれ変わるのも一つの手だろう。
金にならないから、潰れてしまえという声と共にとこのまま萎むのか。それともまた旺盛するのか。それは誰にもわからない。
しかし、札幌ドームには多くの人の思いが詰め込まれていることだけは忘れてはいけない。