あなたは星より遠い人〜
映画ドラえもんは45周年
テレビ朝日系列で放送されているドラえもんは毎年春休みシーズンに合わせて映画を公開しており、2025年で45周年となる。
そして記念すべき45周年記念作品は「映画ドラえもん のび太の絵世界物語」が3月7日に公開予定だ。
それに合わせて映画ドラえもんの歴代作品を再上映する企画、「映画ドラえもん祭り」なるものが1月17日から開催。
17日から1週間は1992年公開の「のび太と雲の王国」、2013年に公開された「のび太のひみつ道具博物館」が公開された。
そして、記事の投稿日である1月24日より1週間限定で「ドラえもん のび太と銀河超特急」が再上映されている。
個人的には映画ドラえもんのベスト3に入る作品である「銀河超特急」が再上映されているということなので、早速公開日に見に行ってみた。
再上映を見に来た年齢層の幅
のび太と銀河超特急をお昼12時丁度の回で見に行ってみた。
今回の再上映では映画ドラえもんの配給を担当するのが東宝ということもあってか、TOHOシネマズでの公開が中心。
TOHOシネマズといった映画館では通常料金だと2000円近く掛かるが、今回は再上映ということもあって特別料金の大人1300円・子供は500円で鑑賞することができる。
また入場者プレゼントとして再上映される作品のポスターが記されたステッカーも配布中だ。
公開されるスクリーン入口には例外なく映画ポスターが掲示されている。過去の作品ながらも、こうしてスクリーンでしっかりと鑑賞できるの特別な体験だ。
スクリーン内へ足を踏み入れると半分近くの席が埋まっていた。特に気になったのが年齢層の幅だ。
現在進行形でドラえもんを見ているであろう小さな男の子とそのお母さんという親子連れがいると思えば、スーツを着た男性が1人、更にはカップルがいたり老夫婦が並んでいたりと、様々な人たちが席に座っていた。
映画ドラえもんが長年公開されており、色んな年代から支持されていることの裏返しにも思えた。
銀河超特急の概要
のび太と銀河超特急は1996年3月に公開、映画ドラえもんの17作品目だ。この作品は原作者である藤子・F・不二雄先生が製作総指揮、ドラえもんの声は大山のぶ代さんが務めている。上映時間は約1時間37分だ。
ストーリーとしては、22世紀の銀河ミステリートレイン「銀河超特急」の切符を手に入れたドラえもんに誘われる格好でのび太達が乗り込む。そして、小惑星にあるテーマパーク「ドリーマーズランド」に到着するが、そこに謎の生命体が近づいていた。という話である。
映画ドラえもんでは「ドラえも~ん」とのび太が叫んでオープニングへ突入するのが恒例だが、この作品でも約3分後にのび太が叫んでオープニングへ移行する。
のび太の才能大爆発
ドラえもん通常回では、テスト0点、ジャイアン・スネ夫にいじめられる、ドラえもんがいないと何もできない弱々男の子として描かれることの多い野比のび太。
ただ、今作では野比のび太の才能が大爆発を起こしている。まず、環境適応能力の高さ。
ミステリートレイン「銀河超特急」に乗り込んで、トイレで用を足していると鏡に吸血鬼ドラキュラが映り込む、というドッキリ的なのを食らってしまう。
ドラえもんに一緒に寝るように助けを乞うものの、一蹴されてしまう。なのだが、ベッドに入って目を閉じた瞬間にガーガーといびきをかいて眠ってしまう。恐怖心を睡眠欲によって流してしまうという軍人もビックリな睡眠技術を披露してくれる。
続いて射撃の才能。
銀河超特急に宇宙盗賊団が襲ってきた際に、宇宙空間ながら信号弾で応戦し、数機に命中させる。ドリーマーズランドの西部の星では、缶を浮かせながら6発ぶち込み、ライバルを黙らせるという異世界系の主人公的行動も成し遂げてしまう。
ストーリーの最後の最後までのび太の射撃能力が散りばめられている。
現在の映画ドラえもんにない淡白さ
現在の映画ドラえもんでは良くも悪くもキャラクターの性格やバックボーンについて描くことが多く、最終的には感動的に終わるという形が多い。
それと比べると銀河超特急は話のテンポが良く、登場するキャラはあまり深堀りされない。とても淡白に話が進んでいく。
銀河超特急の流れは、
銀河超特急に乗り込んで様々なイベントに出くわす→ドリーマーズランドに到着し楽しむ→謎の生命体・ヤドリが襲い脱出を図る→ヤドリと最後の戦い
となっていて、これらを約1時間37分に詰め込んでいる。
現在の映画ドラえもんに当てはめれば、ドリーマーズランドに到着するまでヒロインや中心人物が複数登場するはずだ。この作品では銀河超特急の車掌と新聞記者のボームの2人しか登場せず、そこまで話の中心を担っているわけでもない。
場面が変わりドリーマーズランド内では「昔者」と露骨にのび太達を馬鹿にする未来人・アストン達3人が登場する。が、彼らもそこまで深堀りされない。精々、アストンの親が大富豪であることぐらいしか明かされない。
更には悪役であるヤドリも、「なぜ侵略してきたのか」というのがあまり詳しく明かされていない。
現在の映画ドラえもんとの大きな違いは「キャラクターは話を進める駒として扱われている」ことだ。しかし、淡々と話しが進む中にも、資源の枯渇といった社会問題が抜かりなく練り込まれていて、それらは付け焼き刃的には感じない。
現在の映画ドラえもんは涙を誘われる、有名人が声優を務めるゲスト的立場のキャラクターが登場という展開が多いが、大山のぶ代さん時代のドラえもん特有の淡白さながらストーリーにブレが無い作品を見るのもまた良い。
一週間しかないからさ
ということで、銀河超特急は1月24日から1週間限定で再上映中だ。
1月31日からは2004年公開の「のび太のワンニャン時空伝」、2011年公開の「新・のび太と鉄人兵団」が公開される。
映画ドラえもんはネット配信でも視聴できるが、公開当時の雰囲気を味わう、大きな画面・音量で楽しむことでテレビでは発見できなかった細々な描写や動きを見つけることもできる。
主題歌である海援隊「私の中の銀河」も心落ち着く曲だ。現在のドラえもんとは異なる嗜好の音楽も聞いてみてほしい。
当時を知っている人でも、知らない人でも魅力的なドラえもん。このチャンスは逃せないぞ。