東京ゲートブリッジと豊洲・辰巳を回り切って、さて自宅へ帰ろうかという日曜日の夜。
勝どき駅から大門駅へ向かった。車内には静けさがあった。憂鬱な月曜日がやってくる現実に目を背けたいのか、乗っている人たちに覇気がない。
大門駅ではJR山手線に乗り換えられる。改札に入り、ホームを歩く。途中で路線図を見つける。その中には高輪ゲートウェイ駅が表示されていた。
「そういえば、よく見て回っていないな」
折角の日曜日の夜。思い立ったと同時に品川方面へ向かう山手線に飛び乗る。
行ったのは5年近く前。
高輪ゲートウェイ駅が開業したのは2020年3月。場所は品川駅と田町駅の間。近くには都営浅草線と京急線が乗り入れる泉岳寺駅がある。
開業当時は東京の中心を走る山手線に新駅ができるとして、なんやかんや話題になっていたのを覚えている。また独特な駅名ということもあって、エッセイストだかコラムニストだかよくわからない人やよくわからない研究者などが「高輪ゲートウェイ駅の名称変更」の署名活動を行い、JR東日本に提出したこともあった。
自分も開業してすぐの頃に行ったことがあった。これまでの駅のデザインとは異なり、木目調の床や広々とした空間設計に驚いたことも記憶にある。

しかし、それ以降は訪れることはなかった。理由としては広がりを見せていた新型コロナウイルスの影響もさることながら、周辺に用が無いというのが絶大。
東京駅や品川駅であれば新幹線との乗換駅であったり、渋谷駅や新宿駅となれば周辺に商業施設や観光スポットがあったりするわけだが、高輪ゲートウェイ駅周辺には何も無いのだ。商業施設も何もない。
そんな何があるんだかよくわからない高輪ゲートウェイ駅だが調べてみると、何も無い今だからこそ喧騒あふれる東京都内で数少ない「落ち着いた」駅でもあるそうだ。
今や東京都内はどこもかしこも人が行き交っているし、加えて外国人観光客も増加傾向にある。今しか見れない人のいない山手線の駅、高輪ゲートウェイ駅をゆっくりとみていこうじゃねぇか。というのが今回の記事のテーマである。
時刻は20時前
浜松町駅から山手線の外回りに飛び乗った。車内には空席がチラホラと見受けられた。
「まもなく高輪ゲートウェイ」という聞き慣れた女性のアナウンスと共に列車が高輪ゲートウェイ駅に入り込む。席から立ち上がると前に座っていた40代ほどの男性がこちらを訝しむ。確かに、「日曜日」「夜」「周辺に何も無い」という高輪ゲートウェイ駅に降りる人が目の前にいたら、怪しんでしまうのは無理はない。ただ、その視線を背にしながら自分はホームに降り立つ。
ホームには誰もいない。誰も改札に進まない中、自分ひとりだけがエスカレーターに乗り込んで改札へ進む。

高輪ゲートウェイ駅の改札上にある駅名標。JR東日本の各駅と異なり、高輪ゲートウェイ駅を「明朝体」で表記している。別に明朝体で表記しているのはデザインの一環に思えるのだけども、「明朝体」の使用でさえも少しばかり気に入らない人もいるそうだ。
スターバックスがあるそうだけども?
高輪ゲートウェイ駅にはスターバックスがある。
改札を出てすぐのところだそうだ。東京の駅近くのスタバというのはどこもかしこも混雑していて、若い男女が入り乱れ、空席なんてほぼ無い。そんなイメージが有るが、高輪ゲートウェイ駅のスタバはどうなっているのだろうか。
と、改札周辺を見渡してみるが、スタバらしきマークがない。改札横にはこんな看板が設置されていた。

なるほど。3階にあるのか。と視線をずらす。

コーヒーカップと斜め上を向く矢印があった。どこにもスタバのマークが無いじゃないの!と思って階段を上がる。

あった。普通にあった。
日曜日の20時。店内の座席は8割方が埋まっていた。特に高輪ゲートウェイ駅構内を見渡せる窓側の座席が多く利用されていて、その客層の殆どが20代前半ぐらいの男女。という感じだった。ノートやiPadを使って勉強している人、スマホをずっと眺めて駅構内の電車なんて興味のへったくれもないような人。様々な人がいた。

駅周辺を歩くか
せっかく改札を出たのだから、周辺はどうなっているのだろうか。
開業当初は広々としたデッキという感じだった。

のが、今では高層ビルの工事によって、デッキ上には壁が出来上がっていた。


デッキの下へ行くとカラーコーンと仕切りが並んでいた。


途中ではこんな看板が。

高輪ゲートウェイ駅周辺ではJR東日本が主導となって「TAKANAWA GATEWAY CITY」という再開発が進められている。
駅を出てすぐ、もう完成間近という高層ビル「THE LINKPILLAR 1」が出迎えてくれた。ここにはオフィスやホテル、商業施設、保育園もできるらしい。

ビルの前には都営バスの乗り場が。ここもしばらくしたら名称も変わったりするのだろうか。

ビルの工事現場の合間に何個か「タイムズ」があるのが印象的だった。15分440円という破格な値段。現場に出入りする業者に向けて設置しているのだろうか。

また高輪ゲートウェイ駅の改札へ戻ろうかという所、遠くには寝台列車「サンライズ出雲・瀬戸」の車両が見えた。東京発が21時50分なので、もう少しで出番がやってくるところだろうか。

高輪ゲートウェイ駅周辺を散策する際に通行止めになることがあるので要注意だ。

スタバのマークはちゃんと用意されていた。

駅へ入ろう
日曜日の夜というのもあるのだろうけども、駅に列車が到着して数人が改札を抜けると静けさが覆う。混雑という言葉とはかけ離れている。
改札横には券売機が当然設置されているのだが、誰も利用していない。山手線の駅で券売機全体を撮影するのは至難の業なのだが、きっぷを買う人もSuicaにチャージをする人もいなかった。逆に指定席券売機を長時間使ってきっぷを買いたい人は高輪ゲートウェイ駅は完全な穴場だ。

高輪ゲートウェイ駅の改札横にある窓口には駅員さんがいなかった。無人駅というわけではなく、呼び出しボタンが設置されていて、用がある人はそれを押す仕組みとなっている。他の駅では観光客やら面倒な客がひっきりなしにやってくるであろうに、この駅はそうでもないようだ。

では、改札へ入ろう。改札の真正面には大きく山手線と京浜東北線の発車案内が掲示されている。

構内を進んでいくと、コンビニが見えてくる。このコンビニは無人コンビニで商品を手に取るだけでスキャンすることなく決済へ進めるというのが特徴だ。

開業当時は凄い技術として扱われていたが、今では大手コンビニ3社が同様な店舗を展開しているので目新しさは薄れている。しかし、先に開業したという事実は腐ることはないはずだ。
駅のデザインに注目すると大きな数字と色使いが印象的だ。

東京駅でこんなことをやったら情報が密集しているように感じて見づらさを助長しかねない。また京浜東北線の停車駅についても掲示されている。これも主要駅ではなかなかできないことだ。

高輪ゲートウェイ駅は開放的な空間をイメージして設計されているそうだ。狭苦しい印象のある鉄道駅とは異なって、高い天井に広い歩行空間が広がっている。

ホームから見下ろす
階段上から電車を見ることができるのも高輪ゲートウェイ駅の特徴。山手線ホームと京浜東北線ホームの2つに分かれている。


なんかヨーロッパの駅みたいっすよねぇ。行ったことないけど。


もう少しでこの駅も混雑に飲み込まれる…の?
ということで、高輪ゲートウェイ駅をゆっくりと見て回ってみた。
駅前にあるビルはもう完成間近。スタバには多くの人が利用しているのを見ると、もう少しで高輪ゲートウェイ駅も山手線の駅らしく人人人と人に塗れた駅となるのだろう。

そう思うと東京の発展って凄いなぁとも思うし、そこまで進んでしまう必要もあるのだろうか…?とも思ってしまう。

今しかないこの姿を捉えられただけ良いと思う方向でいようとは思っている。
