いつもあるものが突如として消失した時、人はすぐに異変を察することが出来ない。
私は何処かへ消えてしまった「あの看板」を追い求めて東京都内を彷徨う。という記事。
目次
彼がいなくなっていることに気付く
休日の朝。私はマクドナルドにいた。朝マックを食べるためである。

仕事の日だと「まず職場に行かなくては」という思いばかりが募り、余裕が無い。それに朝ごはんも適当に済ませてしまう。なので、せめて休日だけはマックで優雅に朝を迎えたい。
店内のソーセージエッグマフィンを頬張っている時に家族連れが近くの座席に座った。1人の男の子がおもちゃを持って遊んでいた。朝からハッピーセットかぁ・・・と思った時、ふと思い出したことがあった。
それは職場での会話であった。職場の先輩の話だ。
家族みんなでショッピングモールへ買い物へ行った際にモール内にあったマクドナルドへ立ち寄ったという。会計待ちで列に並んでいる最中に、先輩のお子さんはじっと一点を見つめていた。それに気付いた先輩は、
「どうしたの?」と子供に聞く。すると、「これ」と指差した。
先輩が指された方へ顔を向けると、そこにはショーケースに入っているハッピーセットのおもちゃが展示されていた。ああ、ハッピーセットか。と思っていると、斜め上におもちゃ以上の発見をした。ケースの横に立つ赤と黄色の物体。
ドナルド・マクドナルドの等身大パネルであった。

「いやぁ、最近見かけないから思わず撮っちゃったよ」と先輩はニコニコしながら画像を見せてくれた。「最近はマクドナルドに行ってもドナルドがいないから、見つけた時はビックリした〜」と笑う。
ただ、私は思った。
「そんなに珍しいのか?」「マクドナルドに行けば、絶対にあるでしょ?」
だって、マクドナルドを象徴するキャラクターだ。店内に必ずいるはずだ。
ぶり返した記憶から我に返る。ソーセージエッグマフィンを咀嚼し、飲み込む。すると急激に全身を包むようにモヤモヤが広がった。
そういえば、ドナルドの姿を見ていない。
ここ何年も彼の姿をはっきりと見ていない。
そう思うと居ても立っても居られなくなった。
私はゆっくりと店内を見渡した。朝独特のゆったり感の広がるマクドナルド。見た範囲では彼の姿は見当たらない。
ハッピーセットを紹介しているドナルドの看板はあるのか?彼がいなくなったことを、何とも思わなかったのか・・・?
食べ終わった後、捜索することにした。
向かいのテーブル、店内の窓。そんなところにいるはずもない。
トレイの隅、会計待ちの行列あたり。こんなところにいるはずもない。
結果として、店内には彼の姿はなかった。代わりにあったのは、

まるで彼がいたことを遠巻きに表すかのような、赤い壁と黄色い枠のショーケース。
私はここで実感した。ドナルド・マクドナルドはいつの間にか消失したのだ。
いつでも探してしまう、ドナルドの顔を
マクドナルドの内装について調べてみると、2015年頃からデザインを更新し始めていた。
一昔の前によく見た、赤い下地に白い文字で「マクドナルドハンバーガー」と書かれた看板も、現在では少数となっていて、日本国内にあるマクドナルドの殆どが新デザインへと更新されていった。

デザイン更新の時期にドナルドは風に飛ばされる砂のごとく、静かに消え去っていったということだ。
しかし、私は少しばかり疑問があった。
果たして、ハッピーセットを紹介するドナルド・マクドナルドは本当にいなくなってしまったのだろうか?
店舗検索を見てみると、集合体恐怖症の人が目を覆いたくなるほど東京都内にマクドナルドが点在している。東京都内にはマクドナルドが340店舗もあるそうだ。

なら、1店舗ぐらいはハッピーセットを紹介しているドナルド・マクドナルドの姿を見つけられるのではないだろうか。
消えたドナルド・マクドナルドの看板を追い求めて、私は東京都内を彷徨うことに決めた。
朝7時。東京駅
ドナルド・マクドナルドの看板を見つけるため、私は東京駅に来ていた。時刻は朝7時である。

赤いレンガが特徴の東京駅の駅舎を天高く登ろうとする朝陽が強く照らし出す。まずは人が集まりやすい鉄道駅近くにあるマクドナルドにフォーカスを当ててみることにする。
1発目の店舗は「JR東京駅店」である。
東海道・東北・秋田・山形・上越・北陸新幹線と国内の主要都市から人々が集まるという特徴を持ち合わせる東京駅にもマクドナルドがある。ここなら彼の姿があるかもしれない。
場所は東京駅の八重洲口近く。これから新幹線に乗ろうとする人、出勤で慌ただしい人でゴチャゴチャ感があった。そんな中にある「McDonald」の文字。店内はサラリーマンが優勢。

中を覗き見るが、残念ながらドナルド・マクドナルドの看板は無かった。
新宿へ
東京駅に無いのであれば、日本いや世界で一番のターミナル駅である新宿駅へ向かおう。

新宿駅近くには3店舗。その中から「新宿南口店」を見てみることに。
駅の近くで更にはバスターミナル・バスタ新宿が近いこともあり、店内へ出入りする人が多かった。

しかし、ここにも彼の姿は無かった。
日本最古のマクドナルドへ
マクドナルドは1971年に銀座三越で日本1号店をオープン。
同年には2号店「代々木店」をオープン。現在は「代々木店」が日本国内のマクドナルドで最古の店舗となっている。
代々木店は新宿駅の隣に位置する代々木駅からすぐのところにある。
最古の店舗ならば、ドナルド・マクドナルドはいるんじゃないの?という期待を抱いて、代々木店へ。

傍から見れば日本最古のマクドナルドとは思えないデザインだ。店内には最近急増中のセルフオーダーも設置されていたりと最新デザインのマクドナルドだった。
そして、肝心のドナルド・マクドナルドは「いなかった」。
方針転換
正直なことを言ってしまえば、代々木店に到着した時点で「駅近のマクドナルドにドナルドはいない」と確信した。
それは、なぜか。
1つ目に客層だ。駅近の店舗を利用する年齢層は男女共に高めで、ハッピーセットを購入する年齢層が少ないことが想定され、敢えてドナルドを設置する必要性が薄い。
2つ目に店舗の大きさ。ハッピーセットを紹介するドナルドの看板は非常に大きく、雑居ビルの一角という限られたスペースで運営する駅近の店舗からしてみれば、邪魔でしょうがない。
ということから「駅近の店舗にはドナルドはいない」と自分は断定した。
ではどのような店舗にドナルドの看板は存在するのだろうか?
上記の2点を考慮すれば、「ハッピーセットを購入する幼年期の子どもたちが集まる」もしくは「店舗の土地に余裕がある」という条件が必要な気がしてくる。
関東で一番売上のあるマクドナルドへ(2020年現在)
前述の2点をクリアしている店舗は東京都内に何店舗か存在する。まず1つ目が「1号線池上店」 だ。次はそちらへ向かっていこう。
1号線池上店はマクドナルド50周年記念のページによると、2020年に関東地方で一番の売上を記録したマクドナルドとなったという。
家族連れのお客さんが利用することが多く、週末となると70名以上のクルー(店員さん)でランチタイムを乗り切るそう。
駅からは歩いて10分。決して広いとは言い難い歩道を進んでいくと「M」のマークが登場する。

国道1号線沿いにある店舗ということもあり、車での利用を想定しているようでドライブスルーの設備があり、隣には有料駐車場の用意もあった。
これは条件が整っている気がしてきた。なんてワクワクしていると、店舗の入口付近に、

いた。ベンチに座るドナルドがいた。
なんかデケェ。ドナルドが1号線を行き交う車を見守っている。
ベンチに座るドナルドがいるということは、ハッピーセットを紹介するドナルドもいるのでは?と店内へ飛び込んでみると、

これだった。
ちなみに、ここ1号線池上店にはプレイランドという遊具施設がある。
そうなれば、ハッピーセットを紹介するドナルドがいてもおかしくはない気がするんだが、残念ながらここにはいなかった。
今度は練馬に行ってみる
国道沿いにドナルドがいるなら、もっと交通量が多いであろう環状七号線へ向かってみる。東京の中心地をグルリと囲うように繋がる環状七号線は交通量が平日であろうが、休日であろうが関係なく非常に多いことで有名だ。
そんな所にあるマクドナルドなら家族連れの利用が想定され、店舗の大きさもあるはず。そして、ドナルドの看板もあるはずだ!と考え、環七豊玉店へ向かうことに。最寄り駅は練馬駅だ。
練馬駅から歩いて15分程度で到着。見慣れたデザインのマクドナルドだ。ドライブスルーの利用も多く、車の往来が激しい。


店内へ入ってみると、想像よりも店内の規模はこじんまりとしていた。
そして、なんと「ハッピーセットの紹介」自体無かった。条件に合致していそうながら、ハッピーセットの紹介自体が無いというのは想定外だった。
今度は豊洲に行ってみる
今度は家族連れが多く利用しそうで、車の利用が多そうな店舗を探してみることに。見つけたのは晴海通り豊洲店だった。
豊洲の開発が最近は盛んで、高層マンション群が乱立している。更にはショッピングモールの「ららぽーと」が近くにあることから車の往来もある。ということで、豊洲へ。


店舗に用意された駐車場の殆どが埋まるほど、車での利用が多い。更に昼食時ということもあって多くの人が利用している。これは期待できるぞ!と思って店内へ。

あったのはこのタイプだった。うーん。豊洲にも無いのか。私は普通に落胆した。
最後にもう一度、環状七号線へ。と思ったら
ハッピーセットのターゲット層である子供達が集まりそうで、駐車場完備という晴海通り豊洲店だったが、ドナルド・マクドナルドの看板は無かった。
ここまで6店舗を回って、ドナルドの姿は1号線池上店にあったベンチに座っていたのみ。それ以外は、ドナルド・マクドナルドの面影すら無い。あの等身大の姿はもう東京にいないのだろうか・・・
最後の望みとして、環状七号線沿いにある環七大谷田店へ向かうことにした。最寄り駅は都営新宿線の一之江駅とJR総武線の小岩駅のちょうど中間点にある。
店舗の位置から環状七号線をそのまま東京湾方面へ進めば、葛西臨海公園や東京ディズニーリゾートへアクセスが可能であり、車での利用や家族連れの利用が想定できる。
豊洲駅から都営バスに乗り込んで、都営新宿線の菊川駅で乗り換えることにした。そして、菊川駅前をトボトボと歩いているとマクドナルドがあることに気付く。
「ついでに見ておくか・・・」と店内を覗き見ると、

いた!ベンチに座るドナルド・マクドナルドだ!なぜここにいるんだ・・・!

レジのほぼ真横にドナルド・マクドナルドが座っている。こじんまりとしている店の規模に比べて、ドナルド・マクドナルドの大きさが似つかわしくない。
菊川駅前は交差点があるだけで、周辺に観光スポットといったものがあるわけでもない。車での利用も出来ないし、子どもたちが集まりやすい環境でもない。
なぜドナルド・マクドナルドが菊川駅前にいたのか。もうこうなれば、ドナルドがいる条件が全くわからない。
その後訪れた環七大谷田店にはドナルド・マクドナルドの姿は残念ながら無かった。


結果
今回は駅近くの店舗、国道・環七沿いの店舗、マンション街に位置する店舗と様々な特徴を持っているマクドナルドを訪れてみた。
結果として、
ハッピーセットを紹介するドナルド・マクドナルドの姿は見つけられなかった。
ただし、ベンチに座るドナルド・マクドナルドはなんやかんや2つ見つけた。
という結果であった。
人生で初めてマクドナルドを「はしご」し続けることをしたが、どの店舗でもドナルド・マクドナルドの存在を無いものとしているのを感じた。
昔であれば低価格商品を発売し、色んな人に利用してもらうような良くも悪くも「ファストフード店」という印象だったのが、今では様々な商品を発売し「ファストフード店」というイメージから脱却することを図っているんだろうな。という素人考えの思いを抱いた。
そうなれば、「ファストフード店」の象徴でもある「ドナルド・マクドナルド」の姿を消し去るのに舵を切るのは致し方ないところなのだろうか。
さて、今回の調査で心残りなのは「ショッピングモール内のマクドナルド」に注目出来なかったことだ。
子どもたちが集まりやすく、車でも訪れやすい環境であるショッピングモールに注目出来なかったことが悔やまれる。もしかすれば、ショッピングモール内には彼がいる可能性が大である。
もし、あなたの近くのマクドナルドに「ハッピーセットを紹介するドナルド・マクドナルド」がいたならばご連絡いただきたい。
Where’s Donald?
ドナルドはどこへ行ってしまったのだろう・・・