東海道新幹線を予約し、JR東海の在来線が乗り放題になる切符「夏の乗り放題きっぷ」を手に入れた私は、
歩いて5分で駿河湾を一望できる東田子の浦駅を訪れた。
次なる目的地は「由比駅」だ。ひらがなで「ゆいえき」と読むその駅は断崖絶壁と海の間に位置する。
そんな駅、魅力・・・!ということで途中下車しようじゃーん。
目次
山と海の間に位置する駅。それが由比駅
次なる目的地は由比駅だ。これでピンと来る人は中々な旅玄人と申し上げてもいいだろう。JR東海の東海道線の駅であり、静岡県静岡市の清水区の駅である。これだけでは判断することはできないので、Googleマップで見てみよう。
JR東海道線の富士駅から静岡駅方面へ4つ目の駅。ここが今回の目的地だ。
なぜこの駅に惹きつけられたのかというと、以前に乗車した東京→静岡をバスで移動した際に「由比」という地名を見かけた。
その際には東名高速道路経由だったが、進行方向右側を見れば山!崖!山!、左側は断崖!絶壁!海!千葉!滋賀!佐賀というような場所だった。凄い所に高速道路を通したなぁ〜と関心というか感嘆というか驚嘆していたりしたが、どれぐらい海に近いかGoogleマップで見ることにした。

すると周辺に駅があることに気付いた。それが由比駅とのファーストインプレッションである。
由比駅周辺をGoogleマップでご覧の通り駅、駅は山と海の間に位置している。
山というか崖と海に挟まれながらもJR東海道線が走り抜けているこの空間が気になる。いつかは行ってみたい、途中下車してみたいものだなぁ。となんとなく思っていた。
そして今回はJR東海・在来線の旅と題している。折角のチャンスだから由比駅に行ってみよう。ということだ。
寂しき東田子の浦駅を発つ
駿河湾を一望して気づけば20分。海は青、というよりも紺色に染まっていて空は機嫌が悪いのか黒雲が漂っていた。

さて、ここからいよいよ出発しよう。東田子の浦駅はこれまでJR東海の子会社・JR東海交通事業が改札業務を行っていたが、 2025年の6月から無人駅となってしまった。

改札前。まもなく電車がやってくるというのに自分と清掃担当の人だけが改札近くにいるという、寂しさを隠すことは出来ない状態だった。まぁ日曜日の夕方だからしょうがない。

電車が到着。いつものオレンジ色を纏った電車がスライドイン。

初めて日曜日且つ夕方16時という時間帯に静岡地区の東海道線に乗車する。静岡地区の東海道線はなんやかんや本数は20分に1本ペースで走っており、三島・沼津〜静岡の移動であれば1時間程度で移動できてしまう。それもあってか、座席の殆どが埋まっていた。正直なところ「意外と乗車しているな」という印象を受けた。
東田子の浦駅から由比駅まで乗車時間は22分、運賃は420円(2025年8月現在)となっている。

富士駅に到着したら人の入れ替わりが激しくなり、新蒲原駅でも多くの人が乗ってきた。同様の事を申し上げるが「意外とみんな電車使うのね・・・」という新たな発見がそこにはあった。
由比駅到着
オレンジ色の憎いやつは当然のようにして由比駅のホームへ滑り込む。ホームには近くで働いている人なのだろうか、外国人の方が電車を待っていた。

駅名標は平仮名で「ゆい」というシンプルさ。ただ、これがまた良い。

由比は元々、東海道五十三次の16番目に当たる宿場町。駅自体の開業は1916年で、貨物の取扱や荷物の取扱を行っていた(現在は全て廃止)。

由比駅のホームは4番線まである。ホームは3つ存在し、2番線と3番線は島式ホーム。通常時は2番線と3番線に列車がやってくる。改札から近い1番線ホームは副本線となっていて、一部時間帯では1番線に列車が到着する。

また4番線ホームも副本線となっているが、1番線と異なり列車の発着は2025年現在では設定されていない。

丁度撮影しているタイミングで貨物列車の通過があった。この際にも2番線を力強く走り抜けていった。

改札へ向かってみると、立派な改札機が2台並んでいるが、

残念ながら2025年6月より無人駅となった。窓口だった所には綺麗な富士山の写真が貼り付けられているのが、なんとも言えない虚しさを醸し出す。

駅周辺
改札を出るとタクシーが2台止まっていた。無人駅ではあるものの、タクシーが常駐しているとは。普段から使われていることの証なのだろう。

駅舎を見ていると立派ではある。ただ、これまた無人駅であることが虚しい。勿体ないなぁ、というのが正直な感想だ。
駅近くには観光案内が。ただよーく見ると、駅周辺というよりもその先。隣駅である蒲原駅と由比駅の間に位置する公園や美術館についての案内ばかりが掲載されている。

駅近くには観光スポットはないのか・・・と思いきや、

立派な海老の像が。ここ由比では桜えびが名産らしく、近くの通りが「由比桜えび通り」と名付けられていた。近くにある由比漁港では「由比桜えびまつり」が毎年開催され、多くの人がやってくるそうだ。
ただ、この日は人通りは少なく、海老のモニュメントを撮っている自分とそれを訝しんで見るタクシードライバーさんだけがロータリーに存在した。
海が見てぇんすけど・・・
東田子の浦駅に続いて、由比駅から見える海というのはどんなもんなのだろう?駅から海方面へ向かってみよう。
地図を見る限り、あまり海へ行く方法は・・・無さそうだ。いや、駅前の通りには車がやってきているのを見ると、歩いて海辺へ抜ける道路だってあるはずだ。
線路の方面で言えば静岡駅方面へ向かってみることに。先程のタクシー会社の案内所の横をすり抜ける。

駅前の通りは閑散としている。ここ周辺にお住まいの方が下車ならわかるが、ここを目的にやってくる旅人は・・・まぁ自分のような変人ぐらいだろう。

途中で家々の合間から海が見えた。しかし、見えたからといって何があるわけではない。俺は、もっと近くで見たいんだよ!と青春を謳歌している青少年のような気持ちになりかける。

途中で「小倉食品」の看板を見つける。桜えびの文字がデカデカと出ているのが特徴的だ。

駅前の通りが徐々に車専用道路感が滲み出てきた。歩道が全く無い。なぜか自転車通路に関しては書いてある。

そして向かった先で道路の分岐を見つけるが、

ここから先は「歩行者通行禁止」という看板が。画像で言えば直進の場合は「通行禁止」、歩行者は右側の道路に行きなさいという案内が設置されていた。ただ、右側の道路からも由比駅方面へ向かおうとする車が頻繁にやってくる。歩いていくというのは得策じゃない。
ここで再度、地図を見てみる。由比駅の海側には東名高速道路や国道1号線のバイパス道路が通っている。そのため、海の方へ抜ける方法が歩行者では全く無い。
もし歩行者が海を見たいのであれば静岡市方面へ進んだところにある「由比パーキングエリア」のみだ。そうなれば話は速い。やめだ!やめだ!海を見るのは諦めだ!
後で気づく。ここが東海道だったということに・・・
海を見るのを諦めて踵を返す。すると看板に薩埵峠を見つける。距離は2.2km・・・無理だ。山に向かって2.2km。バカのすることだ。

ただしかし、駅の通りをもう一度進むよりも少し山寄りを歩いてみることにした。するとどうだ。古い建物が軒並み連なっていることに気づく。

駅へ戻りつつ、通りを進むと木で出来た欄干が。おやおや、海も相まって絵になりますなぁ・・・なんて思っていると、

なんとここの通りは旧東海道だった。
東海道とは五畿七道の1つで江戸・日本橋から京(京都)の三条大橋にまで至る道であり、道の途中には宿場町が点在。前述の通り由比駅周辺は宿場町として有名だったわけで、ここの通りはその旧東海道の通りでもあった。更に遡れば由比駅の前を歩いたあの通りも厳密に言えば旧東海道。
正直なことを申し上げよう。全然知らなかった。というか、この記事を作っている今知ったのだ。
ごめんね( ᐛ )テヘッ
漁港に行きたい
旧東海道だったことも露知らず。今度は富士市方面へ歩いてみることにした。

駅前の通りにお店の看板が目に入る。クリーニング屋さんだ。しかし、中を覗き込むと、まぁ営業しているようには見えない。
桜えびのモニュメント近くに戻ってくるとお食事処の広告が。1泊も出来るそうだ。6月頃に行くと「生桜えび」を堪能出来るそうだ。へぇ、そうなんだ・・・と思い調べてみると、桜えびというのは漁獲できるエリアが日本では静岡しかないそう。

ここ最近は不漁などが重なり桜えびが一時高騰していたようだが、ここ最近の桜えびは豊漁となっていて値段の高騰は一時よりも落ち着いているらしい。
そんな桜えびを漁獲している「由比漁港」が近づいてきた。家々の隙間にあるコンクリート敷きの道路を進む。東海道線のガード下を潜るとその先は漁港だ。

しかし、色々と調べると漁港近くは一般人進入不可という表記があるそうで、用もないのに入るのは不適切。という投稿を見かけた。いや別に行っても良いような気もするが、確かに不審者じみているので、ここは引き下がることにした。うーん。ここまで来て海を見れないとは。
なんか雰囲気良さげな通りを見つける
時刻は17時30分を過ぎたところ。流石に8月の空も暗み掛かってきた。漁港を諦めて由比駅に戻っていると小さな通りを見つける。家と家の隙間を縫うように整備された道路。

そんな先に神社があった。思わず足がそちらへ向かってしまう。

隙間の先に見える神社。あまりにも神秘的過ぎる。Googleマップでは天満大自在天神という神社だそうだ。

そこまで規模が大きい訳ではない。しかも道路に面していて、皆が寄るような神社でも無い。それでもふと足を止めて、吸い込まれてしまった。なんだか不思議な空気が自分の周りにあるようだった。
由比駅に戻る
なんやかんや18時手前。由比駅前に戻ると静岡駅方面の電車がやってきた。車内は想像以上に混んでいた。

理由としては近郊の清水駅近くで花火大会が行われることになっていた。開場へ向かう人達による移動が始まったのだろう。しかし、由比駅はそんなことも関係なく静けさ優勢。

さぁここから静岡駅を経由して名古屋へ行こう。今から鈍行で行くのかぁ・・・と思っている自分もいる。



自分を乗せてくれる電車がやってきた。次なる目的地は名古屋・・・だが、一瞬どこか寄りたいところがある。それは夜の名古屋港だ。