名古屋、朝。このキーワードを頭に思い浮かべるだけで連想ゲームのごとく文字列が浮かび上がらないかい?
そうだ。名古屋の朝と言ったならば「モーニング」である。
折角やってきた名古屋、渋い喫茶店に入り込んで、まるで週に2回は来ます・・・的な顔をしながら慣れないブラックコーヒーと小倉トーストを食したいのだ。
しかし、だ。問題が浮上した。起床した時刻は朝の9時をすっかり超えてしまった。はてさてどうしたものか・・・
しょうがねぇ・・・名古屋駅のホームに鎮座する「きしめん」を食すかねぇ。そうするしかねぇ。
目次
名古屋には「モーニング」があるだよ
名古屋には「モーニング」がある。
うん。モーニングだ。あ、いやマンガ雑誌のモーニングじゃないです。すいません。
名古屋には喫茶店文化があるそうだ。全国チェーン店となった「コメダ珈琲」を始め、名古屋・栄を中心に特徴溢れる喫茶店が軒を連ねている。
さて、そんな名古屋の喫茶店では朝方に来店しコーヒーなどの飲料を注文すると朝食が無料提供される。というのサービスが長らく行われていて、多くの店舗で「トースト」「ゆで卵」などのメニューで提供されている。それが転じて「モーニング」と呼ばれるようになった。
バチクソおしゃれライフ雑誌「BRUTUS」によれば、愛知県一宮市で提供されたのが発端だというのだ。詳しくはバチクソおしゃれetc…でチェックしていただきたい。
私は8月4日に名古屋に到着。それまで好き放題いろんな所へ。
そして今回は名古屋駅前のアパホテルでの一泊。朝食はなし。素泊まりプランである。なぜそのプランを選んだのか、理由は明確だ。
名古屋のモーニングが食いてぇからさ・・・ベイベー・・・
では次の日の10時には次の目的地へ行く予定だ。なので7時に起床してモーニングを喰らいに行くぞ!
アラームは虚しく鳴り響いてさ
体に積もりに積もっていた疲労は私を深い眠りへ誘った。外で大型車両が唸り声のような通過音を響かせて耳の鼓膜が揺れていても関係ない。エアコンの空気が鼻腔を冷えさせても関係ない。
しかし遠い意識の向こう側から脳を揺らさんとする音。
ピ、ピ、ピピ、ピピピ、ピピピピッ

ピピピピピピピピピピッッ!

ヴァさぁ!
飛び起きた。ベッドの横に設置されていたタイマーが鳴っていた。
外から見える名古屋駅前の景色はすっかり明るくなっていやがった。つい数時間前には暗くどこか怪しげなネオンが灯っていたというのに。

ではではモーニングを食べに行こうではないか。時刻は、

やべぇっ・・・寝過ごした・・・本来の起床予定時刻は朝の7時。まぁ2時間近いロスである。
いや別に喫茶店に行けばいいんじゃね?と思うだろう。しかし、次なる予定が迫ってきている。悠長に喫茶店を選んで、優雅にコーヒーを飲んで、小倉トーストを食べ、まるで常連客のような素振りを見せるにはあまりに短い。
足りない頭を振り続け、情報過多なスマートフォンとにらめっこしているとピコンと浮かぶものがあった。
「きしめん」である。加えて、名古屋駅のホーム上にあるきしめんである。
名古屋駅のホームには「きしめん」があるだよ
愛知県の食文化の一角である「きしめん」は幅広くて薄い平ったい形状が特徴のうどんだ。
発祥は名古屋近辺だという話もあるそうで、名古屋名物として扱われるほか、名古屋駅周辺にはきしめんを取り扱う飲食店がギュッと集まっている。
そんなきしめんだが、名古屋周辺で一番美味しいきしめんはどこで食すことができるのだろうか?
Google大先生に「きしめん 美味しいお店」と思考停止状態で検索文字をぶっこむと「じゃらん」のページが表示される。
そしてページ内を見ていくと名店が立ち並ぶ中で一角に「名古屋駅構内」の店舗が表示されるのだ。
加えて様々なサイトをクロールしていくと「名古屋駅のホームにあるきしめんが一番うまい」という論調を唱える人多し。
味噌カツであれば「矢場とん」であったり、ひつまぶしであれば「あつた蓬莱軒」であったり。ここだ!という店舗が存在するが、きしめんに関して言えばどうやら名古屋駅の中に鎮座する店のほうが美味いそう。
なるほど。そうなれば話は速い。私はそれに注目した。
ホームにある「きしめん屋」さんの多さたるや
鉄道駅のホームに売店やうどん・そばを提供するお店などを見たことはあるだろうか?
東京駅や大阪駅などといった主要駅であればホーム上には売店や飲食店が並んでいたりして別段特別なことではない。ただ、名古屋駅のホームに注目してみると在来線・東海道新幹線のホームには「きしめん屋」が構えている。しかもその店舗数が尋常じゃない。
Googleマップを見てみると、店舗があることを示す赤いピンが。これら全て「きしめん屋」である。
名古屋駅は1〜13番線(9番線は中線のためホームがない)までを在来線ホームとしているが、12・13番線(関西本線ホーム)以外のホームできしめんを取り扱う「住よし」もしくは「憩(5・6番線)」が店舗を構えている。
更に東海道新幹線の東京方面と京都・新大阪方面のそれぞれのホームにも「住よし」が店舗を構えている。いやいやすごいね・・・
更に更に改札外となると名古屋駅の自由通路にもきしめんを取り扱う「驛釜きしめん 中央通り」がある。どうだ?こんなにきしめんがあると怖いだろう・・・?俺もびっくりしたぜ・・・?
さて、これらの店舗は朝早くから動き出す駅と歩調を合わせるかの如く、在来線ホームの店舗では朝7時から、東海道新幹線ホームの店舗では6時30分から営業しているようだ。
なるほど、そんな早くからやっているのか・・・次なる目的地へ行かねばならない自分にとってスッと入れてパッと食べられてキャッと帰ることのできる「きしめん屋」はうってつけだ・・・
ということで、名古屋の朝・モーニングはきしめんにさせていただくことにした。
気温30度超えの名古屋駅を目指すだよ
宿泊したアパホテルからサラバ。チェックアウトは規定の箱に入れるだけ。便利な世の中である。

天にまで聳えるJRゲートタワーが見える。この下にきしめん達がひしめき合っているのだ。

名古屋駅の太閤通口から進入。ちなみに朝の10時前でこんな人混み。大きなキャリーバッグを引く親子連れ、これから東京へ行ってディズニーへ行くんだなどなど

働けってんだよな・・・
今回はJR東海が乗り放題になる「夏の乗り放題きっぷ」を手に入れているのでこちらを使って在来線ホームを目指す。

ちなみにきしめんだけ食べる場合でも「入場券」が必要だ。またSuicaやTOICAといった交通系ICカードは名古屋駅では入場券として利用できないので要注意だ。

しかし、名古屋駅の在来線構内ってなんともシンプルだなぁとつくづく思う。良くも悪くも国鉄時期の空気を残しているような気がする。国鉄時代を生きたことはないけど。

今回は3・4番線で食す。
ということで3・4番線を目指す。カラフルなんて言葉を知らないのか、ただ「3」と書かれた案内のみがそこにある。

さて、3・4番線には「住よし」がある。なぜここを選んだのか?・・・
なんとなく!
まぁ他のホームと比べて朝の時間帯、人の流れが落ち着いているから・・・というのもある。
3番線と4番線は東海道線の上り下り共に発着するホームとなっているが、この時間帯では3番線のみにしか電車がやってこないようだ。しかもそれぞれ4両編成。快速・新快速が発着する1番・2番線と比べればかなり落ち着いた雰囲気。

ホームの中ほどにはJR東海の売店「Bellmart(ベルマート)」がある。人がいないけど売店はやっているこの雰囲気がどことなく旅情を誘い出す。

そして、名古屋駅3・4番線の端に到達し、

見えてきたオレンジと緑の看板が特徴的な「住よし」の登場だ。

看板には「名代きしめん」と書かれていて、あれ?住よしじゃないの?と思うだろうが、小さくA4サイズでバシッと貼り付けられていた。
お店の前には券売機が設置されていて、ご覧の通りである。

ちなみに黄色の背景は「温かい」もので、夏時期に重宝する「冷たい」きしめん類は、

水色で表示されている。生ビールや日本酒、レモン酎ハイもあったり、

どて煮も提供されている。もし、自分が名古屋在住だったら多分通い詰めてたと思う。今日は1・2番線、来週は10番線・・・っていう感じに。そう思うほど、バリエーションは豊富。
さて、この日の気温は朝から32度を超えていて日中帯となれば更に上がり35度まで上がるそうだ。そうなると冷たいものも食べたくなる。
しかし、冷たいものも・・・うーん・・・

買っちゃえっ!

食券を片手にお店の中へ。ということで何を選んだかというと「かき揚げきしめん」にした。しかも、温かいでな!

店員さんに食券を見せ、「あっ、置いといてください」とマナーを叩き込まれながら、着丼するのを待つのである。

食す
2分で着丼。2分って・・・カップ麺より短いじゃねぇか!すごいなおい!

各ホームに鎮座する住よしや憩では、冷凍麺を使っているそうだ。店員さんもまたスピーディーに調理・盛り付けを行っていた。これぞプロのワザである。
箸できしめんを持ち上げてみる。出汁と共に箸によって持ち上げられる。いたたまれないぜ・・・いただきます!

きしめんの平たい麺というのは王道も王道な讃岐うどんや細麺である稲庭うどんと異なり、口の中に与えるパンチ力が絶大であると私は思う。
それでいて、スルスルっと口の中に侵入してくる。でも体は自然と口元から受け入れてしまう。その麺には汁が纏わりついているが、これまた魚介類の匂いがまた良い・・・

出汁の違い
しかしあれだな・・・うどんの汁というのは関東だと濃いめ、関西だと薄めであることが多い。
関東だと「鰹節」をメインに「濃口醤油」でファイナルアジャストメントすることが多く、更には砂糖やみりんで甘さを追加することもある。秋田出身の自分からすれば「濃いつゆ」というのは慣れ親しむ味だ。
関西だとそれが真反対になる。「昆布」をメインに「薄口醤油」を用いて、全体的に薄味に仕立て上げるのが定番。自分も初めて関西でうどんを食した時、薄っ!とは思ったが、仄かに香る昆布とカツオの姿に魅了されたものだ。
では関東と関西の中央に位置する名古屋の味付けはどんなものになるのだろう?今回食した住よしの出汁は「濃いめ」である。
Google大先生に聞いてみると名古屋は「さば節とむろ節(ムロアジ節)の合わせだしが特徴」とされているそうだ。
なるほど・・・使われている魚が違うのか・・・。これまた勉強になった。と同時に、
うまけりゃ良いんだよ!
その地域ごとでベストな味付けを味わえるのが旅行の醍醐味なんだぜ・・・キラーンという思いになった。
かき揚げ
きしめんと並んで主役級の「かき揚げ」これまたカリカリで美味。

正直、ハイカロリーだろうけども毎日食いたい。というか、レシピを教えて下さい。
さて今回のかき揚げのような揚げ物については「揚げたて」を提供している店舗もあるそうだ。
では、今回の店舗が揚げたてを提供していたのかというと・・・きしめんを食べたいという思いが強すぎて揚げたてかどうか?を気にすることはなかった。ごめんね(ノω・)テヘ
ネギ・人参といった野菜類の中にいる海老っ!

これがまたカリカリでうめぇーんだな。
ごちそうさまでした
ということで完食。

冷たいお水はお店に設置しているウォーターサーバーから汲む必要があるのだけども、このお水がめちゃくちゃに美味い。高級フレンチ料理店とかで出されるお水よりも美味い。そう思っている。
ちなみに隣にいたマダムは冷たいきしめんを頼んでいらっしゃった。いや、それが普通だ。汗を垂らしながら食べている自分がおかしいのだ。しかし、
美味いからそれでもいい!
ということで店員さんに「ごちそうさまでした!」と伝えてお店を出る。外に出るとモワッとした空気が自分を包む。止まりかけていた汗がまた滲み始める。

まぁこれも旅行だわなあ。と思いつつ、流石にアチィな・・・と胃袋に居座るきしめんと共に思う。
