「声優口演2025」を観に行って、声優さんって凄いんだな。ってシンプルに思うのであった

「声優口演2025」を観に行って、声優さんって凄いんだな。ってシンプルに思うのであった

2025年11月1日、東京は東京駅の横に位置する有楽町。そして有楽町駅の真ん前にある有楽町よみうりホール。

イベントの内容は「三大喜劇王」が世に送り出した映画に名だたる声優陣がアテレコをするというもの。

映画も好きだし、推しも出る。自分にとってハイカロリー過ぎる2時間は一体どうなっていくのだろうか?

なんかものすごいイベントだぁ・・・

TwitterないしはXで惰眠を貪っていると、とあるツイートいやポストを見かけた。

内容をザッと観ていくと、「無声映画をステージ上で声優さん達が生でアテレコをする」というイベントだった。

へぇ、面白そうなイベントだなぁ。とその時は思ったのだ。そして、何気なく出演される声優さん達を観ていくと、まぁ凄い。

ここ最近、ライブやイベントに行くほどハマってしまった上坂すみれさんや

私にとって長年の憧れの人でもある平野綾さんも出演されるというのだ。

平野綾のライブに3回行ってきたんですけども
今回は4月27日の東京・KANDA SQUARE HALLで開催されたライブを皮切りに、全国8箇所で開催された平野綾さんの全国ライブツアー【AYA HIRANO…
tetsu-dakawa.com

更に山寺宏一さんや林原めぐみさん、中尾隆聖さんに三石琴乃さん・・・と私が幼少期からずっと声優界に於いて最前線で活躍されている方々ばかりが名を連ねている。

なんかものすごいイベントじゃねぇか・・・

無知な私はそう思ったのである。

声優口演とは一体何か

ボイスシネマ声優口演 とは 声優生活61年を超えるベテラン声優羽佐間道夫が企画した無声映画にライブでアテレコを行うステージ。2025年に20周年を迎えます。

声優口演のホームページより引用

Wikipediaには「2025年4月現在、現役で活動している世界最高齢の声優」という表記があるほどの大ベテラン・羽佐間道夫さんが立ち上げたイベントだ。

人気声優で甦るサイレント・ムービー。無声映画に人気声優がライブでアテレコを行うステージ。2025年に20周年を迎えます。
seiyu-kouen.jp

後に野沢雅子さんや山寺宏一さんが賛同し、コロナ禍だった2020年と2021年を除いて毎年開催されているイベントでベテランから大人気声優さんが出演するという、声優ファンにしてみれば垂涎ものである。

このイベントには名誉会長には黒柳徹子さんが務めている「日本チャップリン協会」が協力している他、無声映画には声だけでなく、生演奏をその場で行ってまるで吹き替え映画のように見せる。というのが特徴である。

20周年を迎えた2025年公演では東京だけでなく愛知・仙台・大阪で開催され、それぞれの公演で演目や出演される声優さんが異なる。

無声映画ってよく知らないけど・・・

自分は映画を嗜む方だとは思う。ただ、無声映画というのはあまり観たことはない。

無声映画というのは文字通り「無声」であり、現在の映画では当然過ぎる「音」が一つもない。俳優が発する声・セリフは一つもない。映画を彩るBGMや効果音も無い。俳優陣が動く様子と物語の説明をする文字だけがスクリーンに映し出される。

うーん。無声映画ねぇ。

ただ私の頭の中には無声映画へのとっつきにくさよりも上回る物があった。推しが出ること、また子供の頃から知っている声優さん達によるアテレコが観られるということを考えると・・・

行くしかねぇ!

と思ってしまったのだ。もうこうなったならしょうがない。行くしか無い。行かない理由なんて無いのだ。行かなければ行かないなりの後悔が目に見える。気付けばチケットぴあで抽選に応募していた。怖いねぇ、興味から生まれる行動力っちゅうのは。

ということで今回は2025年11月1日の午後2時から開催された公演について連ねていきたい。

11月になった有楽町へ

11月1日、午後1時。東京駅の隣駅である有楽町駅へ到着。今回の舞台は有楽町よみうりホールである。

入口→とは書いてある

読売会館と呼ばれるビルで、1階から6階まで「ビックカメラ有楽町店」が出店していて、ホールは7階部分にある。

ホールへの入口はビックカメラ店内にあるエレベーターもしくはエスカレーターを使う必要がある。そのため、店内はビックカメラのお客さん、声優口演にやってきたお客さんでごった返し状態になっていた。ここだけの話だが入口が分からなくて、迷ってしまって店内をウロウロしていた。みんなも気をつけようね!

7階に到着すると様々な年齢層の人達でいっぱい。自分のような20〜30代の人がいると思えば、40代〜50代更には70代ぐらいの人もいたりとイベントが積み重ねてきたモノ、年輪のようなものを感じた。

会場付近はすごく歴史を感じる雰囲気

今回のチケットは「プレミアムシート」で入場した。チケットには特典が付いていて、A4クリアファイルとステッカーがプレゼントされた。

クリアファイルの裏面には各都市で出演される声優さんの複製サインが掲載されていた。これは結構嬉しい。

クリアファイルの裏面は見せない!

座席はB列だった。

すごく良い場所・・・!

ひゃああああああ・・・こんないい座席を引き当てるとは・・・多分この座席を引き当てたことで運を使いきったのだろうか、チケットが当選した翌日に仕事でシンプルミスをかました。うん!今年の運は使い切ったようだぜ!

開演

11月1日の14時公演には天﨑滉平さん、上坂すみれさん、大塚剛央さん、小林由美子さん、高木渉さん、冨永みーなさん、中尾隆聖さん、山寺宏一さん、そして総合プロデューサー・演出・脚色の羽佐間道夫さんが出演される。

開演してすぐ羽佐間道夫さんと山寺宏一さん、日本チャップリン協会の大野裕之さんが登壇された。ステージ上では内容について進められていたが、自分は「羽佐間道夫さんと山寺宏一さんって存在したのか・・・!」とまるで天上人を目撃した百姓みたいなことを思ってしまった。テレビの向こうで見ていた人がもう数歩先にいるという感覚は一生慣れない。

オープニングトークでは出演者の皆さんを始め、サポートメンバーの皆さんや演奏を担当される皆さんがずらりと並ぶ。皆まで言うなかもしれないが、ここにいる人たちはアニメや映画などで主役・名脇役、名ナレーターとして名を馳せた人たちばかり。いやはや、豪華・・・圧倒される。

チャップリン「キッド」

まず最初の演目はチャーリー・チャップリンが監督・脚本・主演の「キッド」が上演された。

放浪者チャーリーはひょんなことから捨て子となっていた赤ん坊を拾い、貧しいながらも懸命に育てる。5年後、成長したその子ども、キッドは、チャーリーの仕事を手伝うようになり、2人は本当の親子のように暮らしていた。一方、キッドを捨てた母は歌手として成功し、かつての過ちを悔いて慈善事業に励む日々を送っていた。ある日、チャーリーのもとを冷酷な役人が訪れ、キッドを孤児院へ連れて行こうとする。

映画.comより引用

キッド(1921)の作品情報。上映スケジュール、キャスト、あらすじ、映画レビュー、予告動画。チャールズ・チャップリンが監督・脚本・製作・作曲・主演を務め、血のつ…
eiga.com

今回の演目ではチャーリー役をアンパンマンの「ばいきんまん」やドラゴンボールの「フリーザ」でお馴染みの中尾隆聖さんが担当

ジャッキー・クーガンが演じた捨て子の少年キッドをクレヨンしんちゃんの「野原しんのすけ」を演じていらっしゃる小林由美子さんが担当

キッドの母親をサザエさんの「磯野カツオ」を演じている冨永みーなさんが担当し、ナレーターには名探偵コナンでは「小嶋元太」と同姓同名の刑事を演じる高木渉さんが担当している。

な、な、なんかとんでもねぇ布陣じゃねぇか・・・各人のWikipediaで出演された作品をみたら立ち眩みが起きそうなほどだった。もうこれだけでも十分過ぎるメンバーじゃあないか・・・ただしかし、追いバター追い醤油追い油の如く、若手とは言えど第一線で活躍している人たちが更に控えている。

時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさんで「久世政近」を演じた天﨑滉平さん「アリサ・ミハイロヴナ・九条」を演じた上坂すみれさん推しの子で「星野アクア」を演じた大塚剛央さんが映画内に登場するする脇役たちを演じる。

贅沢過ぎるっ・・・!

主役を張っている声優さん達がここでは脇役を演じるなんて贅沢過ぎるっ!同じ事を繰り返すけど贅沢過ぎるっ!ハイカロリー過ぎるっ!

更には細かな登場人物にもサポートメンバーの皆さんが声を当てるというのだから、本当に贅沢極まりない公演である。

作品について

「キッド」は1921年に公開された作品で、今回使用されたのは公開後にBGMといった音声が加えられたバージョン。このバージョンではオリジナルバージョンから一部シーンがカットされていて上映時間は53分となっている。

2025年11月現在では映画を配信するサブスクU-NEXTやAmazonプライム・ビデオでも配信されている他、「キッド」のWikipediaではオリジナルバージョンが視聴することが出来る。

コミカルな動き・コメディが得意で有名なチャップリンだが、そこに子供への愛情表現や貧困問題が融合する。チャップリンもまた幼少期は貧困に苦しんでいたというエピソード、私生活では最初の子供を亡くした直後に撮影されたということもあって、後半ではコメディよりも子供から引き離される悲しさが中心となっていく。

観ていく

上演してすぐに羽佐間道夫さんが声優によって作品が変わるというような発言があった。公演を終えて、再度「キッド」を観てみたが、正直なところ物足りなさがあった。それだけ当日の公演にはパワーがあった。

実際に観ていくと中尾隆聖さんの特徴的な声がコミカルな動きをするチャップリンにピッタリに見えてくる。足の動き、顔の動かし方、全てに声がフィットしている。

キッドを捨てる婦人を演じる冨永みーなさんの縁起もまたおしとやかででもどこか気持ちが落ち込んでいる女性の声がピッタリですっと耳に入る。この人がカツオの声をやっているなんて正直信じられない。

作品序盤では赤ちゃんで、話が進むと5歳児になるという素人からしてみれば演技のコントロールが難しそうなキッドを小林由美子さんが演じていたわけだが、口から赤ちゃんの鳴き声が出てくるわ、無邪気さが溢れる子供の声が当然のように出てくるわ。当たり前のように演じきっているのが怖すぎるほどだ。

そして、その大御所達の合間をカバーするかのように天﨑滉平さん、上坂すみれさん、大塚剛央さんが所々で登場する。

御三方は他の登場人物とは異なって様々な特徴を持った人物に声を当てなくてはいけないので、違う難しさがあると思う。しかもミスは許されない。それでも自分の出番がやってくるまでじっと台本を見つめていて、すっとマイクの前に立ち、ビシッと決めてすっと離れる。その姿はまさに職人技のようだった。

すでに登場人物の声が聞ける現代とは異なり、無声映画なので登場人物達は口を動かさないことが多く、動きだけですべてを判断しなくてはいけない。声を当てるのは非常に難しい。それでも各々がイメージする声をシーンごとに違和感無く当てる。それが相まって無声映画なのに登場人物の感情に起伏があるように見えた。いやぁ・・・声優さんって凄いなぁ・・・とシンプルに思ってしまった。

あとチャップリンの戦闘力が53万であると知れてとても良かった。

キートン「文化生活一週間」

「文化生活一週間」は三大喜劇王の1人「バスター・キートン」の作品で、上映時間は20分程度だ。

ここでは山寺宏一さんが「全部」やった。私が全部やります。と宣言された。全部やるの!?と驚きがありつつ、まぁあの人ならやれるか・・・。と妙に納得するところがあった。冷静になって考えればおかしな話なんだが。

ちなみに「カバオくんで全部やっても良い」という発言があったので、追加料金払うからすごく観たい!と思ったのであった。

作品について

新婚のキートンは、新居建築を約束し求婚したため、低予算の組立住宅を購入。自力で組み立てようとするが、恋敵が建材の番号を3を8、1を4というように書き変えてしまい、妙ちきりんな多角形の家ができ上がってしまう。床は傾き、洗面台が外壁についた暮らしにくい家だが、とりあえず、新築祝いのパーティを開く。

Googleの要約機能による引用

この作品は映像に激しさがあり、車から車へ移るわ、家は風によって回転するわ、挙げ句の果てには列車にぶっ飛ばされるわで声を当てるのもやっとだと思う。

それでも山寺宏一さんはやってのけた。バスター・キートンの声も、花嫁の声も脇役たちも全部。

そこまでやったら声が荒らげてしまうだろうし、適当なことを言ってしまえ!と思ってしまいそうになる。1人で20分も話し続けて、更には生演奏も付いている。1人で突っ走ると作品として成立しないリスクもある。でも、ストーリーがしっかり成立するようになっていたし、所々で小ネタもある。

まさに活弁士だ。最上級の活弁士だ。映像ともリンクして、逸脱しないほどに話しての技量も楽しめる。

しかも終わったらケロッとしていて、息切れもしていない。おかしいよ!なんでベラベラと話して疲れを見せないんだ!

声優の凄さ以上に山寺宏一さんの才能を目撃したことで、チケット代は確実に元が取れたと思う。

声優さんってすごい

なんか気楽に来てしまったら、とんでもねぇものを観たような気がする。

各々の声優さんが経験してきたことで得た技量をまざまざと見せつけられた。こういう人たちが今のアニメを支え、俳優・声優界隈に活発さを与えているのかなぁと思ったり。

自分が観たかった上坂すみれさんのアテレコも見れてとても良かった。ああ、こうやってアテレコをしているんだなぁと純粋に勉強になった。

終盤には日本チャップリン協会の大野さんが「お題に沿ってエピソードを語る」という無茶振りを振られていて、お題を上坂さんが担当した。

「じゃあ、備蓄米で」

お題にそれを選ぶっ!?大野さんは文字通り頭を抱えていた。ベテラン勢が勢揃いしている中でパワーワードを残すそのマインド。恐ろしいほどだ。

映画も声優さん達の凄さを実感したこの公演。そりゃあ20年間も続くよなぁと思うばかり。

これから東京公演を終えて、いよいよ全国各地へ向かっていく。正直、もっと観たい・・・平野綾さんとかその他大御所のアテレコをする姿を観たい。

しかし、あたしゃお金もちじゃないのよね・・・なんだかなぁ・・・と思いつつ、人で溢れかえりそうなビックカメラを歩いて有楽町駅を目指した。