2024年12月14日。東京・羽田空港から広島空港を経由して、広島市内へ向かうことになった。
その際にJALが提供するサクララウンジを利用したわけだが、どうやら自分はサクララウンジに入る大人ではないのかも…と挫けそうになった。という記事である。
目次
サクララウンジとは何ぞね?
旅行に興味があったり、飛行機移動に興味がある人なら分かる「サクララウンジ」
それ以外の人には一体全体なんのことやら?という感じになるので、サクララウンジとは何か見ていこう。
まず最初にラウンジとはなんだろうか。Wikipediaにはこう書かれている。
フライトの合間に乗客が快適に過ごすためのサービスを提供する、国内外の主要空港に設置された待合室です。
待合室といっても駅にあるような硬い椅子が並べられていたり、病院の待合室とかではない。次いで、サクララウンジとは何か?
「JALサクララウンジ」は、航空会社のJALが運営しているラウンジです。日本国内と世界各地の主要空港に設置されており、JALグループ便やワンワールド便の出発時に利用することができます。
つまりサクララウンジとはJALが提供する待合室である。
そのサクララウンジでは何が提供されているのだろうか
ラウンジ内は明るく開放感にあふれ、ゆったりとしたソファとテーブルが置かれた上質で洗練された空間。空港内の喧騒を忘れ、出発前のひとときを心穏やかに過ごすことができるでしょう。
〜中略〜
ハイグレードな内装と充実したサービスで、利用する方にとびきり贅沢な時間を提供しています。一流ホテルのロビーを思わせる広々とした空間には、ゆったりとしたソファと上品なインテリア。ここでは窓の向こうの風景や飛行機が行き交う様子を見ながら、ソフトドリンクやアルコール類、レストランのような料理(軽食)などを楽しむことができます。
サクララウンジ内では高級感のあるソファや椅子が用意されていたり、窓側の席では飛び交う飛行機を見届ける事もできる。更にWi-Fiやコンセントなどが提供されており仕事にも利用できる、等など至れり尽くせりである。
更に更に、ソフトドリンクやアルコール飲料も提供されており、ラウンジ内では無料で飲むことが出来て、とても素晴らしいサービスである。
サクララウンジに入る条件
ただ、サクララウンジはJALを利用する乗客なら誰でも利用できるわけではない。サクララウンジを利用するには利用条件をクリアする必要がある。
条件は3つ。以下に並べよう。
- JALステイタス会員
- ワンワールド・ステイタス会員
- ビジネスクラス・ファーストクラスの搭乗者
いずれかの条件をクリアすればJAL便利用時にサクララウンジへ入場できる、ということだ。
条件をクリアすれば、というものの、それぞれの会員になるには非常に厳しい山を超えなくてはならない。
JALステイタス会員の中でも下に位置するJMBクリスタル/JGCクリスタル会員ですら、
- 1月から12月の間で30,000FLY ON ポイント(フライトの搭乗回数や運賃によって計算されるポイント)以上の搭乗
- もしくは、30以上の搭乗(そのうちJALに15回)と10,000FLY ON POINT以上の搭乗
のいずれかが必要とされていて、これが必須ラインである、クリスタル会員より上を目指すとなればもっと果てしない数字を求められる。
とにかく、サクララウンジに入場可能な人たちはこんな条件をクリアして入ってきている人が大半であることを念頭に、この後の流れをご覧になっていただきたい。
一応、自分もサクララウンジを利用できるんです
さて、自分はまだまだ青臭い20代である。前述の条件をクリアできるほどJALに搭乗しないし、資金も無い。
だがそんな自分でも、上級会員が条件のサクララウンジへ入ることが出来る。その理由は、「JAL CLUB EST」のおかげだ。
コロナ禍が落ち着き始めた昨年から旅行の頻度が増えていき、そろそろ航空会社のマイルを貯めて、「マイルで旅行に行けるようになりたいな」と思い始めた。そして、JALカードを作ることに決めた。
ただ、JALカードは星の数ほどに種類が豊富。選びきれずにいた。その中でも魅力的に映ったカードが「JAL CLUB EST」だった。
CLUB ESTの特徴として、20代限定サービスとなっている。30歳以上の人は若作りをしても加入できない。
年会費はJALカード自体の2200円とCLUB ESTの5500円が必要であり、昨今の年会費無料のクレジットカードが主流の時代に逆行している感は否めない。
しかし、それらを支払っても余りある多くの特典が用意されている。
そう。決め手は、5回まで国内線のサクララウンジ利用権利が付随することだった。
上級会員が条件で他人事だったサクララウンジが急に自分に近づいた瞬間でもあった。ラウンジに入れるのぉ!と驚き、躊躇わず入会した。
入会以降、2度ほど平日のサクララウンジを利用したことがあるが、落ち着いた空間、飲み物は飲み放題。いやはや素晴らしい空間である。”空間”は、ね。
羽田空港のサクララウンジへ
ここからは12月14日当日の様子をご紹介したい。
時刻は朝の8時30分。土曜日ということもあり、羽田空港へ向かう京急線の車内は混雑しており、羽田空港の中もまた多くの人で賑わっていた。
今回は羽田空港を10時15分に出発、広島に11時45分に到着するJAL257便を利用。搭乗時刻は10時丁度を予定していた。
もちろんのこと、サクララウンジを利用することは決めていた。
JALの飛行機が発着する羽田空港第1ターミナルは横に広い。それに伴って、南ウイングと北ウイングの制限エリア内にはそれぞれサクララウンジ1つずつ用意されている。
制限エリア内へ入り、ラウンジの入口を見つける。入口は高級感のある木目調。高級感が滲み出ていて、この中には先程紹介したサクララウンジとファーストクラスや上級ランク保有者向けのダイヤモンド・プレミアラウンジがある。
扉の横には「ラウンジに入るには以下のステータスが〜」という看板があり、一般向けじゃないんだぞ!ゴラァ!。というJALのお達しが用意されている。
中に入れば、高級感溢れる装飾の空間が出迎えてくれる。レセプションホールに設置されているラウンジ入室リーダーにJALカードを読み込ませて、認証されればラウンジへ入ることが出来る。
入場までのワクワク感がたまらない。高級な空間に自分はいるんだ!と浮足立つ。しかし、今回のサクララウンジでは多くの驚きと洗礼が待ち構えていた。
ラウンジにいる「大人」達とまだまだな自分
さて、搭乗時刻までラウンジで優雅に過ごすわけだが、当日は土曜日ということもありサクララウンジも例外なく混雑していた。
座席をなんとか窓側の空席を見つけ着席する。座った場所からはJALの飛行機、近くをゆっくりと抜けるANAの機体が見えた。
ここでお供のドリンクを取りに行くことにする。サクララウンジ内のドリンクは主にコカコーラ製品を中心に以下の飲み物が用意されている。
- コカ・コーラ(赤とゼロ)
- 綾鷹
- ジンジャーエール
- オレンジジュース
- コーヒー(ブラック、カフェオレ)
ガストやサイゼリヤでよく見かけるドリンクバーと同じだ。高級感のあるラウンジという空間の中に見慣れたものがあるとホッとする。
加えてアルコール飲料も用意されていて、ビールサーバーが用意されていたりと飲み物の設備は充実している。
自分はコカコーラを飲むためにドリンクバーの元へ。さぁグラスを取って、氷も入れて、オレンジジュースを注ぎましょうか…と思っていると、横からものすごいスピードで1人の男性に割って入られた。
そのスピードは名探偵コナンのオープニングで少年探偵団の歩みちゃんが見せたスライディングと一緒で、「割り込まれた!」という屈辱さえ認識させない速さであった。
しかも、割り込んできた男性は自分より遥かに年上の50〜60代ぐらいだった。会社で管理職してますと言われると納得してしまいそうな風貌。
「なんだか、変な人もいるもんだ」と思って、オレンジジュースを注ぎ入れる。そして、お次はおつまみコーナーへ。
おつまみコーナーでは亀田製菓のあられが用意されていた。日によって提供される商品は異なるが、当日はおかきと柿ピーのミックスが用意されていた。軽食も軽食だが、出発までの間に頂けるのはとてもありがたい。
そのおつまみコーナーには先客が。1人の40代ほどの女性がいた。自分はその人の横で待つ。
長方形のケースには大量のあられ。白い皿とレンゲ。女性はレンゲを持ち、あられを持ち上げる。そして、白い皿へ。
その量が尋常じゃない。てんこ盛りもてんこ盛りなのだ。皿に盛り付けるときに「バララララララララララァァァッ」と音を立てて落ちていく。まるでシャベルカーが土を落とすときのようだ。
この人はどれだけ入れるんだ…!?と呆気に取られていると、一度女性がこちらを一瞥した。と、思えばまたてんこ盛りにあられを白い皿へ移す。
こ、こいつ、だ妥協という言葉を知らねぇ…!
女性は富士の山と化した、あられの山をゆっくりと持ち運んでいった。私はというと、ひと掬いだけで終わってしまった。女性のように我を出すことも出来ずに…
座席に戻って、考え込む。窓の向こうでは飛行機が雷鳴のような音を鳴らして、空を飛び交う。
いい年齢の男性の動き、そして妥協なき中年女性。彼らの姿を思い返すと、頭に浮かんだ。
「これが大人ということなのか…?」「あれがサクララウンジの所作、なのか…?」
そんなことを思っていると、隣に女性が「ふぅ」と大きくため息を吐いて座った。その女性はとてもお美しい方だった。そして、自分と同じぐらいの年齢に見えた。
私は勝手に緊張してしまった。隣に綺麗な女性がいる事自体に慣れていない。
女性の方から「ドンッ」という音が響いた。私は横目でそれを見た。ビールだ。黄色いビールと白い泡とが綺麗に7対3の比率で分かれている。
女性はグラスをスッと持ち上げて、口へ持っていく。そして、喉をゴクゴクと鳴らしながら飲み干した。
「だはぁっ」と女性は気持ちよく飲み干した。素晴らしい飲みっぷりだ。すると、すっとまた立ち上がって、どこかへ。1分後に戻ってきて時間を巻き戻ったかのように、「ふぅ」とため息を吐いて座る。
もしかして….
私は女性が気になった。そして、横目で見る。グラスが置かれている。白い泡、黄色いながらも透き通っている。またビールだ…
この女性はビールをゴクゴクと一定のリズムで飲み込んでいく。そして、消失マジックかのように、ビールを消してしまった。本当に凄い飲みっぷりだ。
そして、また立ち上がる…!まだ飲むのかーーー
サクララウンジ、こんな奴らしかいねぇのか…!?
別にラウンジじゃなくても…僕は良いのかなぁ…って
サクララウンジの端、遠くには白い雲と青い空。赤い鶴のマークと青と白のマークが空を飛ぶ。それらを見ながら、「大人ってなんだ…?」「サクララウンジってなんだ…?」と自問自答する。
いろんな大人がいることはわかっている。短い人生ながらに、経験しわかりきったことである。
しかし、周囲の目を憚れることもなく、己のために、己が満足するためにやり遂げてしまっているあの人達を見ていると、自分はサクララウンジにいるべき人間ではないのかも…?と思ってしまった。
自分より遥かにお金を持っているであろう彼らの所作。あれがサクララウンジに求められるものであるならば、自分は到底そこに行き着いていない…
サクララウンジを9時40分頃に退出。入れ違いで、レセプションホールには10人近い人がラウンジへの入場を今か今と待っているのを見かけた。この人たちもまたサクララウンジに入るべき人たちなのだろう。
また途中ではクレジットカードの上級会員向けのラウンジの横を通りかかったが、ここもまた混雑を極めていた。
4番搭乗口に到着すると多くの人が搭乗開始時刻を待っていたが、静けさが優勢だった。待合スペースの空席もある。自分は飛行機が見える窓側の席に座った。
サクララウンジとは異なり、落ち着いた雰囲気。ゆっくりと飛行機を見渡す。無料でこの静けさ、それに対して様々な人がいて落ち着きが無かった一応は有料レベルのサクララウンジ。
この差を受け入れられない自分は未だに大人になってない、ということなのかなぁ。と考えこみながら、搭乗開始のアナウンスを聞き取った。