食べ放題は勝負であり、勝負は虚しさを運んでくる。
気になっていたんだ、あの時から
レインボーブリッジを歩いて渡ったあの時。お台場にたどり着いて、海風を全身に浴びながらお台場海浜公園を歩いていた。その道中。ドミノ・ピザが現れた。
当時、ドミノ・ピザの食べ放題がSNS上で話題になっていた。出来立てのピザが食べ放題。自分も興味があったのだが、次の機会にとその時はそのまま横をすり抜けていった。
そこから月日は流れ2月上旬。友人とどこか出かけないかという話になった。遠出をするのも構わないが近場で済ませたい気持ちがあった。その時にふと思い出したドミノ・ピザ食べ放題。
ここ最近はストレスが過剰状態だ。仕事は辛いことばかり、体の中に靄を生み出して、それを晴らしたいがあまり、食に走っているような感覚があった。これはいい機会だ。
「ドミノ・ピザの食べ放題に行かないか」
友人は承諾してくれた。
その瞬間に期待が自分の中に渦巻いた。この力を使ってしまうと、ドミノ・ピザを潰してしまうかもしれねぇ(ニチャァ)・・・と武者震いを起こしながら次の日を待ったのだ。
お台場へ旋風を起こすべく
ゆりかもめに乗り込んでレインボーブリッジを渡っている時、自分の体調を確かめた。
まず体調面だ。
仕事がある日だと睡眠時間は6時間半程度しか確保できていない。ただ、今日は違う。8時間睡眠をかましてきた。体にエネルギーが満ち満ちているような気分だ。
次に腹の調子だ。
朝ごはんを食べるか食べないか。前日から考えあぐねていた。
何も食べないまま、食べ放題へ挑んでも大丈夫なのだろうか。万全を期すために情報をかき集めた。中には「何も食べないで食べ放題に挑むと胃袋がびっくりして食を受け付けない」という論文というか投稿というか戯言を見かけた。
確かにその通りだと思い、いつも飲んでいるプロテインだけを飲んで東京へとやってきた。結果、腹の調子は幾分か良さそうだ。
ゆりかもめはお台場海浜公園駅に到着した。ここから歩いて5分もしないところに今回の目的地であるドミノ・ピザお台場店がある。

階段を駆け下りていくと体が軽く感じる。今日は行ける・・・!やってやる・・・!そんな思いでいっぱいだった。
店舗へ到着
ドミノ・ピザお台場店に到着。

この店舗では「世界一透明なドミノ・ピザ」という謳い文句が付いていて、ピザの注文・調理・配達の流れを見ることができるという。
そして、出てきた食べ放題プランの案内。早速店内へ。

店内に入り、店員さんに食べ放題をお願いすると、A〜Cの中からコースを選んでくださいと言われる。
AコースはSサイズピザを16種類。Bコースはピザ全種類に拡大。Cコースとなれば更にサイドメニューも楽しめるというものだ。今回はAコースで挑んでみることにした。お値段は2000円也。
Aコースのメニューはこちら。

食べ放題プランのある店舗によってはメニューの内容が異なることもあるので、挑戦される方はご自身で問い合わせすることをおすすめしたい。
ルールは以下の通りだ。
- 食べ放題は90分制。ラストオーダーは残り30分時点。
- ドリンクを1本選ぶことができる。
- 1回の注文につき、3点まで
- 食べ残しがある場合は追加料金が発生する場合がある
いよいよ、挑戦の瞬間。胃袋が今か今かと待ち構える。
食べる
食べ放題を開始するに当たって1枚目を選ぶ。
友人はクワトロ・マヨスペシャルをチョイス。自分はパッと目に付いたギガ・ミートを選んだ。ギガミートのお値段はSサイズ・1490円だ。
注文をしてすぐ、ドリンクを渡される。コカ・コーラは500ml。

このコーラが今回の食べ放題において勝負の分け目を作り上げることは薄々分かっていた。
ピザといえど、パン生地である。腹の中で水分を過剰に摂取すると生地が水分を含み、膨れ上がる。そして、胃袋を圧迫する。ということは容易に想像できる。しかし、水分なしにピザを食べるのは至難の業。このバランス取りが重要だ・・・。
ピザの注文から10分後、店員さんが箱を持ってきた。配達時と同様の箱。

カパッと開いてみるとそこには、湯気が立ち込めるほどに熱々のピザがいた。

うまそうだ・・・ジュルリなんて思っていると、向こう側に座る友人のピザ生地が薄いことに気付く。自分のギガ・ミートは通常の生地・ハンドトス。
「いつもピザはクリスピーにしてる」
なんと・・・
ドミノピザでは生地を選べる。今回は食べ放題なので生地は追加料金無料の3種類から選べる。

私は狼狽えた。「ピザを食べるなら普通の生地で食べたいじゃん」
友人は答えた。「ピザ食べ放題なのに、普通の生地だと腹に積もりそう」
確かに・・・
チョイス・・・Miss・・・
失敗を嘆いても意味はない。今は眼の前のピザを頬張るのみ。

ギガ・ミートは生地の上にベーコンや肉塊が乗っていて非常にパンチがある。更にトマトの酸味や温まりきったチーズがうまい。
食べきった。ごちそうさまである。腹の調子は如何ほどか。胃袋内に空洞を感じる。まだまだ入るぞ・・・!

さて2枚目である。友人がクワトロを食べているのを見て、いっぱい食べるなら色んな味を食べたほうがお得感が強まるな。と思い、自分はクワトロ・ハッピーを選ぶ。そして、生地はクリスピーをお願いすることに。失敗は2度もしないのが大人というものだ。
1枚目と同様、10分後にピザが届いた。カパッと開けてみる。

生地がハンドトスだっ!?
店員さんにクリスピーという意思が伝わらなかったのか・・・?それとも、ピザの神様のいたずらか?
友人が選んだクワトロ・オールスターは当然のようにクリスピーだ。計算が狂うってしまう・・・!
近づく終焉
ピザはウマい。とろりと重力に逆らえず落ちていくチーズは食欲を掻き立て、熱々な生地は心を満たしてくれる。
ただ、腹も当然満たされていく。まだ、2枚目だというのに。
1枚目のピザが腹に入った時には余裕という言葉以外に表現が出来ないほど、まだまだ行けるぞ!という気分だった。更にコカ・コーラもちびちびと高級酒かの如く摂取したこともあって、生地の膨らみというのは無さそうだった。
しかし、2枚目の半分に差し掛かると戦況は変わった・・・
想定外だった厚手の生地が本領発揮。胃袋の中でぶくぶくと膨れ上がってきたのだ・・・!そいつは魔物のように膨れ上がり、胃袋の中で「こんにちは!」と叫び始めた。腹五分目は目前だ。

まだピザを食べたいっ・・・!でも、腹が圧迫されてきているっ・・・!
3枚目に行って、更に先の4枚目に突入できるか・・・!?と自問自答していると、前に座る友人がこんなことを言った。
「もうちょうどいいかな」
腑抜けたことを!もう終わりにすると言うのか・・・!?折角の食べ放題なのにあっさりと負けを認めるというのか!?
しかし、その気持は理解ができた。自分も決して悠長に構えられるほど、余裕はなかったのだ。しかも、料金は元を取れている。Sサイズのピザを2枚も食べている時点で支払った料金より定価の料金を超えていた。
腹の膨らみが徐々に胃袋の上にやってきている気がした。魔物がこちらをみて笑ってら・・・!

まだ負けを認めるのは悔しい。まずい・・・!判断を早めなければ・・・!考えあぐねている自分に「マヨシュリンプ、美味かったよ」と友人が言った。
メニュー表を見ると、生地の上にマヨネーズと海老が乗っている。食えるか食えないかという単純なことさえ、満腹感が判断をぼやけさせる。
「それでいこう・・・!」
私はおもむろに立ち上がり、店員さんに言った。
「マヨシュリンプ1枚、クリスピーで」
この時、私の顔は眉をひそめていたに違いない。
儚き戦い
到着したマヨシュリンプは私のとどめを刺しに来ていた。生地の上からでもわかるマヨネーズ独特の脂、そしてトロトロとしたチーズ。もう勝負に勝てない。そう悟った。

私は眼の前のピザに手を付けた。熱々な生地は私の指を焼いた。くっ、と堪えながら口に持っていく。
ピザが更に腹の中に積もる。そして、私の下腹部が圧される。まるで戦場で背中から銃を撃たれたかのようだった。意識が朦朧とし始める。
私が中高生だった時にピザの食べ放題があったなら、ドミノ・ピザお台場店を潰せるほどに食べていただろう。限界なんてなかった、あの頃。
しかし、私も年齢を重ねてしまった。たかがSサイズのピザを2枚完食しただけで、こんなにキツイとは。
もう1枚食べると、腹の奥が更に圧される。友人は「よく食べるねぇ」と呆れなのか、嘲笑なのか。そんなことを言う。まだまだ残っている。腹は正直なところ、限界だ。
しかし!笑われても良い。勝負に挑んだのは自分なのだから、自分が納得するまで戦い続ける。それが戦う者の使命だ!
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおあおおおおおおお
おおおおおおおおおおおおおおおおお
oooooooooooooo

青く澄んだ東京湾に水色のパステルで描いたような空。太陽に照らされ白く光るレインボーブリッジ。そして、腹がいっぱいで上着のチャックが閉まらない私。
食べ放題は無情だ。
楽しさばかりでなく、自分の卑しさ醜さをさらけ出す。そして、代償も付いてくる。
腹が・・・・痛い。
空を飛ぶやつも笑ってら・・・・・・

みんなも食べ放題に行くときは食べ過ぎに要注意だ!
夏休みや長期休暇時期だと混雑するらしいから余裕を持って挑もうね!