Youtubeの記事版です。以下で動画がご覧いただけます。
人間、いつも真面目に生きているとつまらない。
人間、いつか馬鹿げたことをやってしまいたいものだ。
ただ、この企画。あまりにもしょうもなさすぎる。でも、思っちゃったんだからしょうがない。
私は「シンカンセンスゴイカタイアイス」を速く食べたい。
目次
君は知ってるかい?アイス食わな死ぬことを
5月末。大阪へ行く機会が生まれた。大阪へ行くならば公共交通機関を使うわけだが、あなたはどんな選択肢を行使するだろうか。
お値段を抑えた高速バスだろうか?それとも、空中殺法の如くもの凄いスピードで進む飛行機だろうか?
私はというと東海道新幹線を選択した。しかもグリーン車だ。
さて、東海道新幹線で大阪へ行くとなると約2時間程度掛かってしまう。そんな道中、どうやって時間を潰そうか。
歴史ある東海道新幹線には様々な時間の潰し方がある。東海道新幹線内ではフリーWi-Fiがあって、スマートフォンでインターネットを楽しむのも容易となった。
最近ではJRグループの中でもお硬いイメージが強かったJR東海が「新たな旅を提供する」ということで「推し旅」というコンテンツが活発だ。
アイドルを始め、宝塚やアイドルに声優加えてプロレスまで。東海道新幹線自体が走るコンテンツ的な感じになってきている。いやはや、すごい時代になったものだ。
/
— 推し旅【JR東海公式】 (@oshitabi_update) June 10, 2025
JR東海 #推し旅 ラインナップ紹介📣
\
東海道新幹線の車内限定で楽しめるコンテンツが盛り沢山‼
アニメやアーティストなど、あなたの「推し」も教えてください✨
参加したよ~!という方は「いいね」をお願いします🎵#JR東海 #推し旅
されど東海道新幹線には古から続くコンテンツというのがある。それは「食事」である。
鉄道旅に必要不可欠な「駅弁」が第一線に存在する。そして、続いて食事の枠には「スイーツ」が存在するわけだが、その枠に「アイス」が入り込んでいる。
ご存知の方もいらっしゃるだろう。
そう、そのアイスにはバカほどに固く、食べさせるつもりがないんじゃねぇの?と思わせる「シンカンセンスゴイカタイアイス」というのが存在するのだ。
シンカンセンスゴイカタイアイスってなんだいね?
シンカンセンスゴイカタイアイスとは一体なんだろう。
シンカンセンスゴイカタイアイスは東海道新幹線を始めとするJR各新幹線、一部特急列車の車内販売・駅のホームにある売店や自動販売機で発売されているアイスクリームの名称である。
またその正体はスジャータが発売する「スーパープレミアムアイスクリーム」であり、JRの各販売箇所以外では市販されていない。
普通のアイスクリームであるが、されどアイスクリーム。町中で売られているそんじょそこらのアイスとは出来が違う。
このアイスは市販されているアイスと比べて乳脂成分が15.5%と高い。そのため濃厚で更にミルク風味が強く、文字通り「プレミアム」な味わいに仕上がっている。
そんなアイスだが車内販売をする都合上、ドライアイスで冷却も冷却された状態にする必要があり、提供時にはガッチガチもガッチガチの状態となることが大半。
ガッチガチ×2の状態になっているものだから、スプーンを受け付けないほどに硬くなっている。食べるのに一苦労も一苦労という代物だ。
あまりにも特徴に溢れすぎているアイスであることから、鉄道ファンを中心にスジャータ・スーパープレミアムアイスクリームは「シンカンセンスゴイカタイアイス」と称して愛される(?)こととなったのだ。
そんなシンカンセンスゴイカタイアイスを愚直に速く食べたいんだ!
シンカンセンスゴイカタイアイスは文字通り硬い。そのため、裏技を使い速く食べてしまおうという考えが広がっている。
両手で包みこんでアイスを意図的に溶かしたり、カップの上にホットコーヒーを置いてしまうというものが多い。
JR東日本商事、ジェイアール東海商事、ジェイアール西日本商事が過去に発売した商品にスプーンがある。そのスプーンは熱伝導に優れていて「シンカンセンスゴイカタイアイス」をも素早く溶かして速く食べられてしまうのだ。
もうみんなシンカンセンスゴイカタイアイスを硬い状態で食べるつもりは毛頭ないのだ。
しかし、私は思うのだ。それで良いのだろうか・・・?
高い壁にぶち当たったとして、それを乗り越えるかぶち壊すのがシンカンセンスゴイカタイアイスの魅力ではないだろうか・・・?
裏技を使って食べる。それは人生の苦難から逃れるのと変わりない。私はそんな甘えに頼らずに、真正面からシンカンセンスゴイカタイアイスを食したい。
時間を掛けて、辛く終点が見えなくとも、貫き通した先にシンカンセンスゴイカタイアイスの美味しさがあるのではないだろうか?
人はいつも辛く難しい局面に陥ったならば、どうにか楽に物事を終わらせたいものだ。しかし、そんな誘惑に目もくれずに突き進むことがシンカンセンスゴイカタイアイスを食す事に求められているのではないだろうか・・・?
私は硬いままに、シンカンセンスゴイカタイアイスを速く食べたい。
自分の持つ力を全てシンカンセンスゴイカタイアイスにぶち当てて、速く食べたい。
ひかり641号に飛び乗って
今回の舞台は東京駅を始発とし、東海道新幹線・ひかり641号 新大阪行に乗り来む。

乗り込む車両は10号車、グリーン車である。撮影当日は日曜日。車内は家族連れ、外国人観光客などで非常に賑わいがあった。

ひかり641号は11時33分に定刻で発車。静かに東海道新幹線は新大阪へ進み始める。そして、私の勝負の時がゆっくりと近づいてきていた。

では、早速アイスを。と行きたいところだが、流石にお昼時。空腹である。そんな状態でシンカンセンスゴイカタイアイスを食したら、トイレへGo!状態になりかねない。
モーターレースのフォーメーションラップならぬ胃袋フォーメーションラップを行う必要がある。

ということで登場、駅弁である。今回はというか個人的にいつも購入している山形県米沢市の名物・牛肉ど真ん中をチョイス。

この駅弁は本当に美味しい。というか、これ以外の駅弁を食さないほど私の中のマイベスト駅弁である。
そんな牛肉ど真ん中をパクパクと食し、ごちそうさまである。アイスへの勝負は準備万端だ。
グリーン車に乗った理由
さて、シンカンセンスゴイカタイアイスを購入しよう。しかし、東海道新幹線は2023年10月31日をもって終了している。
なので、シンカンセンスゴイカタイアイスを車内で購入することはできない。というのは少しばかり違う。
車内販売の代わりに東海道新幹線の「ひかり号」と「のぞみ号」でグリーン車に乗車している乗客に向けて「東海道新幹線モバイルオーダーサービス」が開始されている。
グリーン車の座席前に用意されている案内にQRコードが掲載されていて、それをスマートフォン等で読み込み。まず、乗車している新幹線の列車番号(スマートEXなどで乗車した際には改札機から発行される控えなどに記述)を打ち込む。

また座席番号を入力。ここで間違えると全く違う人に商品が届いてしまうので要注意だ。最後に降車する駅を選択。

酒だ、おつまみだ、と様々な商品が並ぶ中にアイスクリーム(バニラ)と記述されている商品がある。これがシンカンセンスゴイカタイアイスだ。
これを選択し注文。このモバイルオーダーの支払いではクレジットカード、交通系ICカードに加えてPayPayといった電子マネーが利用可能だ。
約10分後にグリーン車に乗っているパーサーさん(サービスを提供する乗務員)が商品を持ってきてくれる。
そして持ってきてくれたシンカンセンスゴイカタイアイスがこれだ。

霜がびっしりと付いているじゃねぇか!
これからいよいよシンカンセンスゴイカタイアイスを速く食べたいのスタートだ。
シンカンセンスゴイカタイアイスを速く食べたい
到着したアイスを開封。スプーンはプラスチック製。果たして自分は何分で食べ切れるだろうか。

いや留まっている暇はないぞ!やってやる!
スプーンの先をアイスへ向け、投下。

するとアイスがスプーンを強く弾いた。カッチカチで全くスプーンが入る余地がない。スプーンでアイスの表面を触れるも、表面に積もっている霜というか氷だけがサラサラと揺れ動くだけで、何も変化はない。
この状態から食すなんてほぼ不可能だ。私はカップを置いて、小田原駅近くを走行する景色を眺めていた。
バカ硬すぎるだろ・・・
熱海を過ぎ去れば
アイスを1分少々放置した後、スプーンで表面をなぞる。まだ硬さがある。いや、当然か。自然の温度で簡単に溶けると思うなよ!とアイスから強いメッセージを受け取る。
こりゃ長い勝負になりそうだ・・・と思っていると、表面の端部分が微かに溶け始めているのが目に見えた。そこにスプーンを入れる、というよりもねじ込む。

するとパチッと小さな音を立てて、アイスクリームが掬い取れた。しかしだ。掬い取れた量がスズメの餌程度。
これを何度繰り返しても食せたのは大さじ1杯にも達していない。これになんと4分も要した。
新幹線は元気に熱海駅を通過。しかし、アイスは通過なんて関係なく硬さを保ったままである。
三島へ
いやいや参った・・・
スプーンで掬い取れる量がなんと8分経過しても細々としたものばかり。シンカンセンスゴイカタイアイスを両手で包めば多分だが10分未満で簡単に食すことができるはずだ。

真正面から食べる!と決めたのは良いのだが、ここまで進まないもんかね。
ただ、流石にシンカンセンスゴイカタイアイスも自然温度には勝てないようで10分近い経過で弱さを見せてきた。
スプーンで掬い取れる量が格段と増えてきたのだ。軟さが見えてきて、一気に攻勢。

しかし、中心部分にはどうしても硬さが残っていて崩すのもやっとである。
冷静さと空っぽのカップと新富士
人間、馬鹿げたことをやった時にアドレナリンが先行して冷静な思考が奪われてしまう。もちろん、それが良い結果をもたらしてくれることがあるし、それが後に人生の転換点になることだってあるだろう。
ただ、このシンカンセンスゴイカタイアイスを真剣にバクバクと食べる自分自身になんとも馬鹿らしさを感じてしまうし、なんでこんなに硬ぇんだよ!というツッコミが生まれてきた。なぜだろう。それは時間が14分経過しているからだ。
隣に座った20代ぐらいの男性は真剣にカメラを構えながらアイスを崩そうとしている自分に訝しい顔を何度も見せてきた。
いや、当然だ。もし自分が隣で真剣にアイスを崩さんとする姿を見せる男がいたならば、東海道新幹線に乗車している車掌さんに報告しても構わない。
そんなことを思いつつ、アイスはいよいよ終盤。残すは3口程度となった。

最後まで芯のあるアイスだった。食べ応えがあるアイスだった。最後まで濃厚なアイスだった。味も食す時間も濃厚なアイスだった。

完食。
時間にして14分48秒掛かっている。新富士を過ぎ去っていく。時間がかかりすぎだ。

みんなは楽しんで食べて
というわけで、裏技なしにシンカンセンスゴイカタイアイスを速く食べると15分近く掛かってしまった。
さて、この結果で何を得られたのだろうか。
いや、何もない。本当に何もない。のだが、こんなに真剣にアイスと対局したのは小学生以来な気がする。
シンカンセンスゴイカタイアイス、これほどまでに硬い物だとは。
いい勝負が出来た。と思いつつ、新幹線は静岡市近くを過ぎ去っていく。くだらなさを乗せながら。次に東海道新幹線に乗る際にはもう少し違うことに時間を掛けようと思う。