流鉄流山線が放つノスタルジックさは体に良い

流鉄流山線が放つノスタルジックさは体に良い

ここ最近の鉄道は最新技術が投入されて、たった数年前に投入された技術はあっという間に古い技術となる。5年前は最新技術だ!すごい!と言っていたりした癖に、その技術をすぐに不便だなぁと思ってしまう。

窓口や券売機で並ばないと購入できなかった新幹線や特急列車の特急券は今ではインターネットで当然のように購入できるし、磁気のきっぷは交通系ICカードやクレジットカードに置き換わり、将来的に磁気券は多くの鉄道会社で廃止される予定だ。

技術の進歩が新たな鉄道体験を生み出しているが、どうやらそんな流れとは全く関係なしの鉄道路線もあるようだ。

今回はその鉄道に乗ってみて、少しばかり最新技術に慣れてしまった自分の身体を過去にフラッシュバックさせてみよう。大量にノスタルジックを摂取して、リフレッシュを図ろうではないか。

舞台は千葉県流山市にある流鉄流山線だ。

改革を進めるJRの隣に時が止まったような駅が

今回はとあるお店に行くために、JR常磐線・各駅停車駅である馬橋駅にやってきた。

撮影日は6月16日、梅雨に突入した関東だったが非常に蒸し暑く且つ空から降りしきる太陽の光線によって空中が温められ、まるで低温サウナのような気候となっていた。

馬橋駅は常磐線の柏駅と松戸駅の間にある駅で、そこまで規模が大きい駅ではない。そんな駅のホームに立ってみると、

うん・・・?向こうにも電車が・・・?

ホームドアが設置されていた。JR常磐線・各駅停車線はJRが管理する亀有駅から茨城県の取手駅までの全てにホームドアを設置されている

乗降客数が多い・少ないに拘らず全ての駅に設置したことで、相互直通運転先である東京メトロ千代田線の代々木上原駅まで全ての駅でホームドアが設置されることになったのだ。

JRは安全の向上を目的として2020年代初頭からホームドアの設置を進めてきた。それが完了したことによりJR常磐線・各駅停車線は車掌さんが乗務しない「ワンマン運転」へ切り替わることになった。

JR東日本は、首都圏主要線区でのワンマン運転を実施すると発表した。'25年春から常磐線(各駅停車)の綾瀬駅~取手駅間(10両編成)と南武線の川崎駅~立川駅間(6…
www.watch.impress.co.jp

またワンマン運転の開始により、ホームで鳴り響く「発車メロディ」を駅のスピーカーではなく車両に付いている車外スピーカーから鳴るように変更

更には各駅で展開されていた「ご当地メロディ」も終了、全ての駅で統一された音声が流れるようになった。この変更は一種の改革とも受け止められ、一部の鉄道ファンからは少々反発もある。

それぞれの駅にある発車を知らせる「ご当地駅メロ」。JR東日本では、この春から「ご当地駅メロ」を順次廃止するそうです。一体今後どんな曲が流れるのでしょうか。小林由…
newsdig.tbs.co.jp

JR馬橋駅もまたJR東日本が推し進める改革の影響を受けた駅でもある。そんなJRの向こう側に目線を移すと、細長いホームが見える。

なんか黄色いヤツがいますねぇ・・・

黄色い電車が停車中。向こう側のホームには駅名標があり、JRと同様に「馬橋駅」を掲げている。

これが今回のテーマである「流鉄流山線」のホームだ。

流鉄流山線とは何だろうか

今回乗車する流鉄流山線は一体どんな路線なのだろうか。

ja.wikipedia.org

千葉県松戸市の馬橋駅から流山市役所近くにある終点の流山駅まで繋ぐ路線。流鉄流山線の総距離は5.7kmと非常に短い。

駅数は6駅しかなく、JR常磐線が複々線となっているのに対して流鉄流山線は単線で運営されている。

沿線は流山市内の住宅街を突っ切っていく。昨今、鉄道会社は日本全体で進む少子高齢社会の影響を受けて沿線人口が減少する問題に直面している。しかし、流鉄流山線の走る流山市は2000年以降から開発が進み人口増となっている。

馬橋駅から流山駅までの路線図

ならば流鉄流山線の利用客数も増えている。と言いたいところだが、流鉄の鉄道事業は赤字運営が続いており、JR武蔵野線や2005年に新規開業したつくばエクスプレス線に利用客が奪われる状況となっている。

流鉄流山線は馬橋駅以外で乗り換えるしか東京方面へアクセスすることができないのに対し、つくばエクスプレスは東京都内へ乗り換え無しでアクセスすることが可能。

加えて、流鉄流山線は運転本数が1時間に最大4本なのに対して、

つくばエクスプレス・南流山駅の時刻表

つくばエクスプレス線の朝ラッシュ時間帯には最大20本も走る。その差を埋めるにはあまりにも力の差があり過ぎて、難しいというしかない。

また2020年から広がった新型コロナウイルスの影響を受け、更に利用客数が減少。鉄道会社として存続するべく、様々なイベントを開催したりと話題性を生み出そうとしている。それでも厳しい状況を打破するには至っていない。

流鉄流山線へ行ってみるべさ

そんな流鉄流山線にちょいと乗ってみよう。ということで、JR馬橋駅の階段を上がり、改札を目指す。乗換案内に「流鉄流山線」がしっかりと表示されている。

小さく流鉄流山線の文字

改札を通り抜けて周辺を見渡すとJRの券売機やJR東日本が展開するニューデイズがあったりと、どこに流鉄流山線があるんだい?と少々困惑してしまいそうになる。

ただ、天井付近を見てみると、

流鉄流山線の文字。その通りに進んでいく。流鉄流山線へは跨線橋が繋ぐ。跨線橋の下には常磐快速線の線路が並んでいて、下からは列車が通過すると線路を削るかのように強い音が響く。

そして天井に「流山線→」という現代のデザインからしてみれば質素も質素な案内が。

昼時だからゆっくりと撮れるだろうと思ったら、結構人がいて。切り抜きで失礼

その矢印の通りに目を向ければ、細長い階段。

眼科の広告ダイレクトアタック

そして、降り立てば直線に伸びるホームが見える。

THEノスタルジック・ホーム

ホームドアや10両編成という長い列車が頻繁に発着するJR側と比べれば非常に質素で規模が小さい。

券売機も事務所内に組み込めるスペースがないからか、ホームに直接設置。時代に取り残されている感が凄い。

券売機は他の鉄道会社でも見かけるやつ。

ただ、なんだかこの雰囲気が居心地の良いものに感じ取れる。どこか遠くへいってしまった空気がそこにあるような。

天井は木で繋ぎ止められていて、壁には料金表が1枚だけパシッと打ち付けられている。

壁に打ち付けられているのではなく、金物で留められているだけという

駅事務室へ目を向ければ、上に定期券代が掲示されている。書体が如何にも「うわぁ〜昭和だなぁ・・・!」と感じさせてくれる。

運賃表の運賃だけをテプラで書き換えるというパワープレー

多くの人に見てもらう、わかりやすく掲示するという鉄道会社の流れとは少し異なる。でも、自分が幼少期の時まではこんな時代だったたような気もするなぁと、あるんだか無いんだかわからない記憶を探る。

券売機横には鉄道むすめがいた。

(こういう駅員さんって、あまりおらんですよね・・・【小声】)

鉄道で働く女性をモチーフにしたキャラクターが全国各地の鉄道会社に存在し、流鉄流山線では「幸谷なのは」がいた。あら可愛いわぁと思っていると、電車が近づいてきたらしく事務室から人が出てきた。その姿はベテランもベテランな男性駅員さん。力強い放送で自分と同様に流鉄流山線を撮影しにきた人たちに強く注意を呼びかけていた。

空想と現実と郷愁が混ざる空間がそこにはあった。

電車に乗るか

流鉄流山線の券売機で切符を購入する。流鉄流山線は路線が1つしかないので、降車する駅を選択し金額を投入すれば、ハイ終了。ピーピーと切符が出てくる。

簡素も簡素。というか、これ以上の情報を入れる必要はない

初乗り運賃は140円から終点の流山駅では220円となる。5km少々で220円は高いのか安いのか、正直なところあまりピンとは来ない。

ちなみに1000円札以上は使えないそうだ。

JRや関東の私鉄ではSuicaやPASMOといった交通系ICカードが利用できるのが殆どだが、流鉄流山線では利用することは出来ない

国土交通省の業務監査でも述べられている通り、現在も流鉄流山線では交通系ICカードの導入がされる予定は立っていない。関東では数少ない交通系ICカード非対応路線だ。

改札を通る。と言っても、自動改札機ではない。駅員さんが立っていて、切符を見るだけ。

ホームにいる電車は2両編成。全ての電車が西武鉄道からの譲渡。現在は5000形と呼ばれる車両が流鉄流山線を走っている。

ホームは1番線と2番線。次に発車する電車は1番線から発車する。

角ばっている2という数字。

ホームに掲げられている「2」という数字。こういうフォントって中々見かけないよなぁと思いつつ、1番線の電車へ乗り込む。

車内はロングシート。人の座りやすさが追求されていたりする最近の電車と違い、凹凸がない、ただ長いモケットが貼られているだけの座席。

向こう側には最新型の車両。このアンバランスさよ

そして、開けるのにも一苦労しそうな窓。電車の中もまた時間が止まっているような、時代に置き去りにされているような。そんな空気感で充満していた。

平和台駅へ

車内は意外にも混雑していた。座席の殆どが埋まってしまった。

日中帯の運転本数は1時間に3本程度と路線の長さに比べて高頻度な運転がされていることから一定数の利用者はいるそうだ。特に高齢者の人たちが多く利用しているなぁという印象だ。加えて高校生らしき学生さんの姿も。

電車が発車、JR常磐線とお別れして住宅街を進む。

今回の乗車で印象的だったのは線路際のすぐに住宅が並んでいることだ。洗濯物を干している人の横を電車がすり抜けたり、子どもたちが学校から自宅へ帰ろうとしている姿を電車の窓から見届けたりと地域に根ざしているのを肌で感じ取れた。

経営が厳しいとされる流鉄流山線だが、地域に根ざした路線であることはこの先も続けるうえでの重要なポイントとなりそうだ。

馬橋駅から発車して10分程度で平和台駅へ到着。ここはホームが1つ。上り下り両方の電車が同じホームで発着する。

なんか黄色み掛かってますが、ホワイトバランスをミスっただけです

平和台駅の改札付近を少し見ていこう。この駅は有人駅。電車の到着時には改札に立ち、切符を回収していた。

この向こうに改札。

出札口と書かれた窓と券売機が並んでいる。大半は券売機の出番が多いはずだ。

キラキラ出札口

改札を出てすぐのところには、あまり見かけない「新聞の自動販売機」が設置されている。上から朝日新聞、日刊スポーツが続く。

駅周辺は交差点すぐということもあって、交通量は多い。また近くにはイトーヨーカドー流山店や小学校も近いことから昼時でも人の流れがある。

ここ流山は白みりんの発祥地だそうで、

近くにはキッコーマンの工場もあったりする。

流山駅へ

さぁでは流山駅へ行こう。と言っても電車は約20分後にやってくるようで、流石にそれは待つのももったいない。

平和台駅から流山駅の距離はたったの600mしかない。徒歩で10分も掛からない。ということで歩いていくことにした。

流鉄流山線の線路に沿うように道路も続いていく。住宅が入り組んでいたりすることもなく、道路の先からも流山駅が目視できる。

歩いて5分程度で流山駅近くの歩道橋へ到着。上からホームと電車を見ることができる。ここもまたこじんまりとしていて、何処か懐かしさが凝縮されている。

まるでミニチュアで作られた駅みたい

流山駅前からホームを眺める。時刻表が上からぶら下がり、ベンチは経年によって色が落ちている。そんな中に流山おおたかの森駅近くにあるスーパー銭湯の広告があるという時空の歪さがそこにある。

流山駅の駅舎は木造。

NAGAREYAMA STATIONという大文字オンリーな看板がまた味があって良い

昔ながらの改札。こういう光景は2000年代前まではあっただろうに、気づけば最新技術の波に飲み込まれていった。

改札口という文字がまた味があって良い(パート2)

「普通の女子校生が【ろこどる】やってみた。」のキャラクターがいた。

舞台は流山市のマンガ・アニメ。

作者の小杉光太郎さん、声優の伊藤美来さんと三澤紗千香さんのサインが書いてあるので、ファンの方は見てみるのもいいだろう。

駅の券売機上には時刻表が設置されている。昔から使われている時刻表なんだろうなぁと思っていると「2024年3月16日改正」と書かれている。意外と新しい時刻表だった。

平日の7時台の枠がズレている

ノスタルジックを摂取するのも良いもんだ

ということで、流鉄流山線を少し探訪してノスタルジックを大量に摂取してきた。

流鉄流山線が全線乗り放題となる一日乗車券は500円で購入可能だ。馬橋駅から流山駅間を3回乗れば元を取ることができる。

東京駅から一番近いローカル色・ノスタルジックが感じ取れる流鉄流山線に足を伸ばすのも良いもんだ。

流鉄流山線はJRや私鉄がその時代に置いていった空気や物で溢れている。何気なく置かれているものが面白いものもあったりする。

木造の駅舎自体が減ってるからねぇ

個人的にはポカリスエット・ソイジョイ・カロリーメイトと大塚製薬激推し自販機があって、ニヤニヤしながら撮影した。

あなたの心をくすぐる何かがあるかもしれない。