灼熱から逃げ込んだ先には本好きのオアシスがあったのだ・・・「角川武蔵野ミュージアム」

灼熱から逃げ込んだ先には本好きのオアシスがあったのだ・・・「角川武蔵野ミュージアム」

6月29日に東所沢へやってきた。

この日の埼玉県所沢市はなんと35度。猛暑日という言葉が似合ってしまうような、そんな日に灼熱から逃れるためとある建物へ逃げ込んだ。

すると、どうだろう。本好きの人にとって垂涎ものな空間であることを知ってしまったのだ。

その場所は「ところざわサクラタウン」にある「角川武蔵野ミュージアム」だ。

バカアチィ東所沢

東所沢駅に14時30分頃に到着。

HIGASHI TOKOROZAWA STATIONだってさ

アチィっ!

なんちゅう暑さ。気温は35度。16時ぐらいまで30度以上の気温が続くらしい。とんでもねぇ気候である。

さて、なぜこんな灼熱も灼熱の東所沢へやってきたのかというと、理由は声優の上坂すみれが出演するライブへ参加するためである。

上坂すみれのキャラソンライブVol.1「FLASHBACK HEROINES」に行って、声優の凄さを思い知る
灼熱。気温35度。チケットを片手に持ち、会場内へ入るのを待っている。 知らない曲でも楽しいのだろうか?と思いながら、自分の整理番号が呼ばれる。ライブ独特の浮つい…
tetsu-dakawa.com

東所沢駅から歩いて10分ほど行ったところに「ところざわサクラタウン」という複合施設があり、更にその中にあるホール・ジャパンパビリオンが今回の目的地だ。

ところざわサクラタウン内にあるイベントホールのご案内です。
tokorozawa-sakuratown.com

ところざわサクラタウンは出版社でお馴染みであるKADOKAWAと所沢市が共同進めているプロジェクト・まちづくり事業「COOL JAPAN FOREST構想」の中核施設。

そのプロジェクトもあり、東所沢からの道なりには有名アニメ・ライトノベル作品が描かれたマンホールが設置されている。

しかし残念ながら、この気温の中で一つ一つ撮影をしながら進むということは出来なかった。暑さで朦朧状態に成りかけながら、マンホールをみつつ歩みを進める。

下手をしたら熱中症の可能性もある中、東所沢公園へ到着。木々が生み出す日陰がなんとか自分の気力を保たせてくれる。

そしてこの公園を過ぎ去ると、なんだかどデカく、特徴的な建物が登場する。これがこの記事の主題となる「角川武蔵野ミュージアム」だ。

デケェ石だぜ!という感じ

このミュージアムすぐ横では水盤が用意されていて、夏場のこの時期に解放となっていた。子供たちが無邪気に遊んでいる中、私はアチィアチィと悲鳴を上げながら会場へ近づいていく。

さて、目的であるライブは17時会場。時刻はまだ15時30分。周辺の施設を回りきってしまい、なかなか長時間居座るというのは失礼だなと思ってしまう。

ここで思いつく。折角だし、角川武蔵野ミュージアムで涼ませてもらおう。ちょいと駆け足で中へと入り込む。

よく知らずに入っちゃったけども・・・?

入らせてもらっておいてなんだが、角川武蔵野ミュージアムが一体全体どんな施設なのか?あまり良くわかっていない。本当に失礼な話なのだが。

アート・博物・本の複合文化ミュージアム 角川武蔵野ミュージアム
kadcul.com

調べてみると、角川武蔵野ミュージアムは5階建ての図書館・博物館・美術館をスーパーフュージョンさせた複合文化施設で、ミュージアム内全てを観覧する場合の入場料は1400円からとなっている。

そんな情報を断片的にスマホで見つめていた私は「うーん」と首を傾げた。はてさて、こんな施設に教養もヘッタクレもない私が入ってよろしいんでござろうか?と悩んでいると、とある文言を見つける。

「マンガ・ラノベ図書館」

眼の奥、虹彩がぐわりと開き、文字を凝視する。なんだその図書館・・・!なんと3万冊以上ものマンガ・ラノベが収蔵された図書館が1階にあるそうだ。

ほぉ・・・

図書館でマンガなんてけしからん!ライトノベルなんてけしからん!

そんなことを叫ばれていたような時代をちょいと学生時代に生きていた自分にとって衝撃たるや。

気づけばチケットを楽天トラベル・エクスペリエンスで購入していた。

角川武蔵野ミュージアム(KCM)は、数々の有名建築物を手掛けた隈研吾氏がデザイン監修した、ところざわサクラ タウンのシンボル的な観光スポットです。 360度巨大…
experiences.travel.rakuten.co.jp

1階にオアシスがあるぞ!

角川武蔵野ミュージアムの1階部分に夢のような空間である「マンガ・ラノベ図書館」がある。

アート・博物・本の複合文化ミュージアム 角川武蔵野ミュージアム
kadcul.com

前述の通り角川武蔵野ミュージアムでは全ての展示(特別展示は別料金の場合あり)を観覧・鑑賞するには1400円が必要だ。ただ、「マンガ・ラノベ図書館」に関しては大人600円を支払えば単体で利用することも可能だ。

大抵は抱き合わせ的になってしまう博物館・資料館が多い中、なんて太っ腹・・・

購入したチケットを図書館入口に立っている係員さんに提示。確認されるとなかに入ることが可能だ。

ちなみに、今回はスマートフォンでQRコードを表示させ、係員さんに提示。すると「スタンダードチケット」を証明するシールが渡された。これを服・スマホなどに貼り付ければ、他の展示に移動した場合でも一々QRコードを提示しなくても良いようになっていた。便利さを考えれば予めネット購入したほうが良さそうだ。

ということで中へ入る。するとどうだ。本離れだなんだと言われて久しいこの国。図書館内にある椅子が全て埋まっており、全員が熟読も熟読という状態。もちろん皆が持っているのはライトノベルとマンガ、子供たちであれば絵本だったり。

こんなに熱心に読むなんて・・・いやいや驚きである。

1階部分にはKADOKAWAが刊行したマンガを中心に、児童書などもある。そして、入口近くでは「企画展」も行われていた。この日は「青春ブタ野郎シリーズ」の最新作の特集が行われていた。

アニメ「青春ブタ野郎」シリーズ ポータルサイト
ao-buta.com

2階もスゲェだよ

2階部分にも図書館が繋がっていて、ライトノベルを中心に小説が配架されている。この2階部分がまぁ圧巻で、棚の上から下までが全てライトノベルなのだ。

自分が通っていた中学校・高校ではライトノベルは数タイトルあった程度に対して、これは一体なんだいこれ!と驚愕の声を上げそうになる。

また、KADOKAWA以外のライトノベルもあるため、この世のラノベが全てあるんじゃねぇのか?!と思わせる空間でもある。

さて、隙あれば自分語り。私のライトノベル変遷をご紹介したい。では、早速・・・

私はあまりライトノベルを通ってきていない。

正直に申し上げると、ライトノベルであれを読んだ、これを読んだ!というのは全くもってないのだ・・・残念な話である。中高生の頃から専らマンガだったので・・・

中学生の時には、村上春樹の「1Q84」が発売され、大人びることばかり考えていた私はそれを学校に持ち込んで、結果として村上春樹アレルギーになったり、

ja.wikipedia.org

伊坂幸太郎の「ゴールデンスランバー」を読んで、こういう小説を書きてぇ!と思ってしまったり、

姉から押し付けられた劇団ひとりの「陰日向に咲く」をなんとなく読んだりするぐらいの汗臭い中高生だった。

確実に読んだのは「涼宮ハルヒの憂鬱」と「電波女と青春男」の1巻。後は読む機会というのは大人になればなるほど激減していく。

だからこそ、こういう空間の存在が素晴らしいと思えた。この空間には本を読もうとするきっかけが圧縮されている。

大抵の人間はきっかけが無いと動こうとはしない。本離れと言われるがデータの中身を見ると、どうやら大人が本を読んでいないらしいのだ。大人になっての「本」というのは資格の資料集やどこぞの馬の骨かも知らねぇ社長の成功話ばかり。

せめて「本」というものには楽しさを見出したいものだ。ならば、この空間はベストだ。何故なら、ライトノベルに特化しているので余計な情報が少ない。

映像化作品から入るも良し、絵師から入るのも良し。本を読むきっかけというのがそこら中に落ちている。こんな作品あるんだなぁ・・・と手にとってみたり、ああこんな作品あったねぇ・・・と懐古的になれたりもする。こういう空間が近くにあれば良いなぁと思いつつ、きっかけを拾い集める。

ちゅうことで、今回はこれを選んでみた。

「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。結」第1巻である。なぜこれを選んだのか?アニメは見たことがあって、ライトノベル作品であることはわかっていた。ただ、何気なく見つけた時に「結」ってなんだ?と思ったのだ。

TVアニメ「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。完」Blu-ray&DVD発売中!
www.tbs.co.jp

手に取ってみると、内容は作品内に出てくる女の子・由比ヶ浜結衣に特化したストーリーとなっていた。はぁスピンオフ的な感じかぁ・・・と思っていればまぁ読んでしまっていた。

マンガ・ラノベ図書館の良いところは年齢にそぐわない作品であっても、誰に疎まれることがない空間であること。熟読しても冷笑されることもない。

可愛らしい表紙だが実際に読んでいて、ライトノベルの感情表現が独特で且つ機微な心の動きを捉えているなぁと勉強にもなった。これをきっかけにライトノベルを読んでみるのも良いなぁ・・・と図書館は思わせてくれた。

ただ、ここで熟読していると他の展示を見て回る時間が減少する。

と思っていると、出入り口にこんなのを見つけた。

これからライブが行われる上坂すみれ本人のサインだった。思わず写真を撮ってしまった。他にも有名な声優さんのサインもあったりしたので、ファンの方は探してみるのもいいだろう。

ただ、出入り口に近い場合もあるので、周辺の人に迷惑にならないように気をつけたいところだ。まだまだ見たい。ただ後ろ髪をなんちゃら、まだまだ居たい気持ちを抑えて次へ。

本の街ですってよ、奥さん

次なる展示へ。4階へ向かっていく。銀色の空間のようなエレベーターに乗り込んで、到着。扉が開いた瞬間、亜空間に来たような気分になった。

ここは「エディットタウン」、本の街と称しているそう。

マンガ・ラノベ図書館と打って変わり、空気が大人びている。先程まで甘いミルクチョコだったのが、一気にビターチョコを口に詰め込まれたような気分だ。

入口すぐ横の本を見てみると、「ギリシア美術」「エジプト美術」と普段は見ることのない文言が並んでいら。こりゃすごい空間だぜ・・・と呆気にとられていれば、

次なる空間へ移動すると更にまた普段は見ることのない文言が天井にまで吊るされている。吊るされている看板に書いている通り「むつかしい」本が大量に並んでいる。しかし不思議なことに、なんか手に取って読んでみたいかも〜と思わせる。

何気なく覗き込んで見れば「天皇と将軍」というカテゴリーが。その斜め上を見れば、

日本の正体とデカデカと掲げられている。

ただ、この配置はシンプルにわかりやすく、興味を引く。このミュージアムを訪れてわかったのが、減少しているとされる本屋さんに行ってみると「自分が興味のある本がどこにあるかわからん」ということ。

このエディットタウンは「こういうカテゴリーです!」「こういう本ですねん!」と各々が当に町中の広告看板のように叫んでいて、自分が自発的に本へ近づいていけるような構造になっていた。

本屋さんの構造も大変素晴らしいと思う。新刊はわかりやすく陳列され、マンガコーナーに行けば売れ筋の本があり、科学的な本でさえも全てが網羅されているような気分にもなる。

ただ、仮に自分が普段踏み込まない「新たなジャンル」に挑戦した場合、どれから読むべきかわからない。本屋さんは本を売る場所であり、本を紹介する場ではない。

エディットタウンは「ジャンル」に興味があったら、そこに置いている本を見ることでこれまた「きっかけを拾い集める」ことができる。いやぁ、よく考えられているなぁと思ったものだ。

特に社会学のコーナーになんだか興味が湧いた。一冊の本「自分を知るための社会学入門 」が置かれていたからだ。

岩本 茂樹『自分を知るための社会学入門』の感想・レビュー一覧です。電子書籍版の無料試し読みあり。ネタバレを含む感想・レビューは、ネタバレフィルターがあるので安心…
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社会学とは社会現象や社会構造、社会における人間の行動などを研究する学問。とGoogle先生は仰っている。そんな気難しい学問を「自分」を通して学ぶことができるのか〜と思うとまぁ面白そうだなと思えた。

手にとって見れば200ページ以上もある本。本屋だったら絶対に取らない代物。でも、きっかけはそこまで身体を動かせた。

パラパラと捲ればまぁ読みやすそうだ。買ってみるのも良いかなぁと考えたりもする。

本のオアシスが待ってるぜ!

さて、ここまでは本を読むことができる人向けの空間だが、エディットタウンの奥へ進めば「本棚劇場」が待ち構えている。

これね、凄い高いんですお

約8メートルもの巨大な本棚に囲まれていて、プロジェクションマッピングも行われる。本をあまり読まない人でも「本のある空間」で新たな芸術を体験できるということだ。テレビの収録とかでも使われるらしい。

またこの巨大な本棚の裏手側には日本オカルト界に荒俣ありで有名な荒俣宏さんの蔵書や19世紀の本とちょいとレアな空間もあったりする。

ライブの時間もあるので、今回はザッと見て回ってみた。本だけでなくマンガ・ライトノベルといったジャンルも強い角川武蔵野ミュージアム。まだまだ見て回れていないなぁと思いつつ、本のオアシスから灼熱の中へ飛び出す。