あなたには「ポッポ」の思い出があったりするだろうか。もしあるなら、それは誇るべき記憶だ。
何故なら「ポッポ」はイトーヨーカドーの元気の無さと比例して大量閉店しているのだ。
そんな私には「ポッポ」の思い出がない。今更かもしれないけど、「ポッポ」に足を運んでしまった。思い出を作りたくて。
目次
流鉄流山線の向こうに見えるイトーヨーカドーに吸い込まれて
流鉄流山線でたっぷりとノスタルジックを吸収したところ、

どこか小腹が空いて致し方ない。流鉄流山線の平和台駅前には大きなイトーヨーカドーが鎮座していた。何気なしにイトーヨーカドーへ近づいていった。

イトーヨーカドーの看板、ハトをイメージした大きな看板が目に映える。この看板は不思議なもので、買い物に来たワクワク感を演出してくれる。

店舗の入口は複数あり、入口近くには大きく「イトーヨーカドー」の文字。

また正面口はガラス張りとなっていて、ガラス張りの向こうには生鮮食品コーナーや衣料品コーナーを見渡すことができる。

平日の昼間に訪れたが、予想よりも多くの人で賑わっていた。駐車場は空きが少なく、高齢者の人を中心に店内で買い物している。
ただここ最近のイトーヨーカドーはあまり調子はよろしくはない。更には閉店ラッシュを重ねている。このままだとイトーヨーカドー存在自体が稀有なものとなってしまいそうだ。
最近のイトーヨーカドー
2016年頃からイトーヨーカドーは業績不振を理由に店舗を閉鎖してきている。特に北海道は札幌市内や函館市の店舗などを同時期に閉店させた。
例として、2024年12月に訪れた北海道・札幌の札幌ドームを見に行った際には札幌市営地下鉄東豊線の福住駅直結という好立地でありながらも閉店。その後はロピアを中心とした複合施設に生まれ変わっている。

東北地方も青森や岩手、宮城や福島の店舗を全て閉店。これによって北海道・東北地方からイトーヨーカドーの文字は消えてしまった。
私の出身地である秋田県にもイトーヨーカドーが存在した。秋田駅の自由通路から直通という好立地のところ。しかし、気づけばイトーヨーカドーは秋田から撤退していた。
イトーヨーカドーに行くとおもちゃコーナーがあって、食品売場には子供心ながらに全体活気があって。という印象があったが、今ではそんな印象の真反対。イトーヨーカドーに元気がない。
そんなイトーヨーカドーは全国に92店舗。まだまだあるように思われるだろうが、ピーク時に到達した182店舗の約半分まで減少してきている。
なんとなく入った中に「ポッポ」
イトーヨーカドーの中へ入ると、中では催事が行われていた。もうすぐやってくる、というかもう来てしまった夏へ向けての対策グッズやお中元のギフト商品が陳列されていた。
そんな陳列をすり抜けて、店内はどんなものかしら?と闊歩していると、

見つけてしまった。ポッポである。
ポッポとは一体何だろうか。少し見ていこう。
ポッポはラーメンを始め、フライドポテトやたこ焼き、スイーツは今川焼きやソフトクリームなどを主力商品とした飲食店だ。ちなみにポッポの由来はイトーヨーカドーのシンボルマークである「ハト」からだそうだ。
セブン&アイグループの系列店舗であるイトーヨーカドーやアリオ(ショッピングモール)、ヨークフーズといった店舗にはフードコートが併設されている場合があり、そこに出店している。逆に言えば、セブン&アイグループ系列の店舗以外では見かけることはない。
さて、このポッポ。私はこれまでの人生であまり触れたことがない。あーなんかそういうのあるんだなぁというだけ。それでもなぜ足を止めたのだろうか。それは、少し前にポッポというものに興味が湧くようなニュースを見かけたのだ。
ポッポは味わい深い記憶がある人に嫉妬する
イトーヨーカドーが閉店ラッシュを重ねていく中、青森県弘前市にあった弘前店もまた閉店の対象となった。
そんな弘前店の中にもポッポがあったそうだ。そして、そこでは長年クレープが発売されていたそうだ。現在、ポッポではクレープを取り扱っていない。最後まで弘前店のポッポはクレープを発売していた。
クレープを発売し続けて30年。この間に青春時代に通った人、子供の頃から通って食べていた人、様々な人達にポッポでの記憶を刻み込んだ。
2024年に閉店することとなった際に多くの人が並んだという。そんな熱き思いに答えるべくイトーヨーカドー弘前店が閉店後にポッポの味を引き継ぐ店舗が開業。
現在も営業中だそうだ。
さて、このニュースを見て「ポッポ」という思い出があるのが羨ましいなぁと思ったのは自分だ。
だからポッポで食べる
自分が住んでいた地域にも大型店舗は存在し、そこにもフードコートは存在した。しかし、ポッポのような小さな飲食店というわけではない。
マクドナルドやモスバーガーといった全国展開されているチェーン店の思い出しかないのだ。大人になって関東にも関西にも九州にも北海道にも全国展開されているチェーン店の味があることは非常に素晴らしいことだ。
ただ、それはニュースの内容と比べればあまりにも淡白なものに感じた。
そうして偶然にも見つけてしまったポッポに足を止める。
ポッポは前述の通り、イトーヨーカドーなどのセブン&アイグループの店舗でしか展開されていない。そのため、イトーヨーカドーが閉店するとポッポも道連れになって閉店してしまう。
最近ではポッポが新規開店という話もあったりするらしいが、簡単に楽しむことはできなくなっていきそうだ。
ニュースで見かけたポッポでの思い出を今から作っても遅くはないはずだ。静かにお店の前へ。
列に並ぶ前にメニュー表を見てみる。

主力商品はラーメンのようで、醤油・塩・味噌・流山店では扱っていないとんこつの4種類がどうしても目に入る。更にトッピングも豊富のようだ。
じゃあラーメン、と行きたいところだがこれから行きたい場所があり、そこは飲食店であることに注意しなくてはいけない。
そのため、軽食も軽食のもので済ませたいところだ。
たこ焼きもまた良い。今川焼きもまたいい。お値段もそこまで張らない。どうしたものか―――と悩んでいるとポテトに目が行った。
ここで記憶がぶり返される。ポッポの情報を探っていた際に「ポッポのメガ盛りポテトがうまい」という投稿をXないしTwitterで見かけたのを思い出したのだ。
「お決まりでしたら、どうぞ〜」という店員さんの掛け声を聞いて、レジの前に立つ。「ポテトのメガ盛りを1つ」私は強く言い放った。つもりだ。
メガ盛り言うてますけどね、どうなんでっしゃろ
店員さんから呼び出しベルを受け取る。今回はコーラをセットで注文。セット料金が適用され30円引きとなっている。

はてさて、個人的にポテトは好物である。メガ盛りという文字を見た瞬間に期待が膨れ上がった。と同時に「見せ掛けのメガ盛り」の可能性を警戒した。
大盛りポテトと言っときながら、実際に見てみればなんてことのない。ただ少しポテトの量が多いことを大盛りと称してきた飲食店を数多見てきた。
ポッポもまたその飲食店達の仲間入りをする可能性もある。私は戦争と犯罪と見せ掛けの山盛りポテトが嫌いだ。
そんなこんなでブーブーと呼び出しベルが強くなった。レジへ舞い戻る。「オマタセシマシター」と店員さんが機械的に発声するのを気にも留めず受け取ろうとする。

そこには山盛りになったポテトがあった。バカデケェ。
なんじゃこりゃ。お値段は490円である。
この量なら子どもたちでも、食べ盛りの中高生でも満足の量だろう。揚げたてということもあって、カリカリとしてうまい。上層部を食べきったと思っても、下にはまだまだポテトの層がある。いつまで経っても底が見えない。
文字通り山盛りであるとは恐れ入った。
ポッポの場に皆集まる
ポッポのポテトを必死こいて食べている最中、座席の隣に高校生らしき若造集団が座った。みんな、ポッポのポテトやたこ焼きを注文したりしていた。そしてそこからスマホゲームを始めていた。
彼らにとって、この一瞬はありきたりでどうでもいい時間であるのかもしれない。しかし、その時間がいつぞやかけがえのないものだったんだと思うときが来るはずだ。
そして、その場に何気なしに存在した・注文したポッポによる飲食物がまた良いアクセントとして存在したことを知るはずだ。
また高校生だけでなく、高齢の夫婦がポッポに並んでいた。そして、旦那さんがたこ焼きの乗ったトレーを持ち、ソフトクリームを奥様が2つ持って座席に座った。
そして、同様に2人で話し始めた。
たかがフードコートの飲食店なのかもしれない。しかし、イトーヨーカドーの中にあるイトーヨーカドーによる飲食店がお客さんに憩いを提供している。この形がまた素晴らしいと思えた。
別に全国展開のチェーン店でも構わないのかもしれない。しかし、そことはまた違うベクトルの飲食店としてポッポが存在していてほしいのだ。サッと食べたいなという思いに応えられる、丁度良い規模の飲食店。
この形がいつまで経っても残り続けてほしいと思わずにはいられない。メガ盛りポテトを腹に携えながら。