舞台「ゲゲゲの鬼太郎」2025を明治座に観に行って、色々とびびる

舞台「ゲゲゲの鬼太郎」2025を明治座に観に行って、色々とびびる

2025年8月9日

8月6日、東京は日本橋にある明治座。気温は35度近くまで行ったというのに、みんな澄ました顔で座席に座っている。

大きな緞帳が目の前に広がる。ゲゲゲの鬼太郎を舞台に、ってどんなもんなんだろう。ちょいと気になってしょうがない。

ブザー音が鳴り響く。次第に場内が暗くなる。どこか自分の期待感が心の中で膨れ上がるのを感じながら。

舞台を観に行こうと思ったきっかけというのはですね

自分はこのサイトを始めてからというもの、何だか毎月のように慣れていないことをしているような気がしてならない。

昨年の10月には渋谷公会堂へ行ったり、12月にはあまり行き慣れていない西日本・広島へ行ったり、2月には東京のど真ん中に位置する虎ノ門へ行ったり、最近だと6月に埼玉県の所沢へ行ったり。

そしてこれら全てに共通点が存在する。それは声優の「上坂すみれ」さんである。

自分のSpotifyにおすすめとして表示されてからというもの、楽曲を始め、出演するアニメに目を通し始めた。アーティスト活動は10周年なんだ〜アニメにたくさん出てるんですね〜、と。

興味という所から一気に熱中してしまい、ズルズルと沼へ吸い込まれてファンクラブへ入っていた。ライブやイベントには当然のように行ってしまうし、グッズも買ってしまう。もはや留まるところを知らない。でも悪い気はしない。なぜか。

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楽しいからね!

そんな自分にとあるSNSの投稿が飛び込んできた。

「ゲゲゲの鬼太郎」の舞台が8月から上演されるというものだった。2022年に一度上演され、今回は再演。上坂すみれさんは「ねこ娘」役で出演される。

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自分はそれを見て「舞台かぁ・・・」と思ったのだ。興味はあるが飛び込む踏ん切りがつかなかった。

舞台・ミュージカルって・・・

自分はなんやかんや舞台を数回嗜んだことがある。

東京・日比谷にある日生劇場やシアタークリエ、池袋のサンシャイン劇場に天王洲の銀河劇場に行き舞台を鑑賞したこともある。

だから別に舞台というものを全く知らないというわけではない。マナーも理解している。ましてや「ねこ娘」を演じている姿をこの目で見てみたい気持ちは十分にある。ただ、その。思い出したのだ。「疎外感」というのがあったなぁ、と。

初めて日生劇場に行った際にエントランスホール、座席周辺。女性のお客さんばかり。自分の視野にいる男性は数人程度だった。

次に行ったシアタークリエは平日に行ったこともあり、前も後ろも右も左も女性ばかり。自分だけ頭が抜きん出ていた。なんだか後ろの人に申し訳なくなり、肩を窄めて最後まで鑑賞したのを覚えている。

サンシャイン劇場もまた女性のお客さんが多く、銀河劇場もまた7割方が女性の皆さんで埋まっているような気がした。

あまり舞台やミュージカルって男性はお呼びでない感があるからなぁ・・・いやぁどうしたものか・・・と変に悩みこむ。

ここで出演者の一覧を何気なく目を通してみる。

主演の荒牧慶彦さんはテニプリの舞台に出演されていたんだなぁ〜と思ったり、トレンディドラマの女王である浅野ゆう子さんが出るんだ!と気づく。更には2022年の時は砂かけばばあを演じていた・・・だと!?贅沢な舞台だ・・・と、1人1人出演者を見ていくと気になる人がいた。

大塚明夫さんである。

ゲームのメタルギアシリーズでは主人公のスネークを演じ、数々の洋画名作では吹き替えを担当しているあの大塚明夫さんが出演される・・・思わず画面を凝視する。

な、何役でお出になられるのかしら・・・と見る。

ねずみ男

あ、あの、渋く耳に残るような声をされている大塚明夫さんが、ねずみ男!?だと・・・思わず画面から仰け反る。

調べると、大塚明夫さんの父で声優である大塚周夫さんは過去に「ゲゲゲの鬼太郎」の1期と2期でねずみ男を演じており、大塚明夫さんは時代を超えて父の演じたキャラクターに挑むというのだ。

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・・・

観に行くしかねぇ!

自分はなんて簡単な人間なんだ。それでも「このきっかけを逃してはだめだ!」と自分に強く言い聞かせ、観に行くことに決めた。

明治座、灼熱、でも関係無し

8月6日・水曜日。いよいよ観覧の日。今回は17時公演を楽しむことにした。「舞台・ゲゲゲの鬼太郎」が上演される劇場は「明治座」だ。

各月の公演案内、座席表、交通案内などの劇場詳細。中央区。
www.meijiza.co.jp

最寄り駅は地下鉄・都営新宿線の浜町駅。ここが一番近い。のだが、東京駅や上野駅といった主要駅からアクセスするのはちょいと難しい。今回は東京メトロ日比谷線・都営浅草線の人形町駅から向かうことにした。

東京は当然のように35度近くまで上昇。しかもそれ以上に温度は上がっていくという。道路からの熱波や空からの光線が肌に突き刺さって痛みすら感じる。

歩いて10分で到着。明治座の前には今回出演される役者の皆さんの名前が書かれた「役者のぼり」がそこにあった。のぼりは歌舞伎の伝統的な文化の1つでもあるそうで、多くの人が写真を撮っていた。

暑くて暑くて、一人一人丁寧に撮る余裕が無くって・・・

明治座は名前に冠されている通り、明治時代から続く歌舞伎公演や時代劇・舞台公演を行う東京を代表する劇場だ。そんな歴史を見ると「厳かな雰囲気なのかな・・・」と警戒していたが、いやいやそんなことはなかった。みんな思い思いの服装で劇場に集まっていた。

グッズを買う

舞台のグッズが発売されているそうで、

プログラムや前述の「役者のぼり」を模したタオル、それに出演者のアクリルスタンドやブロマイドなどなど。

折角来たので色々と買ってみよう!という思いになっていた。グッズ発売開始時刻は開演1時間前の開場16時と同時刻待ち列は15分前から形成されるそうだ。暑いし長くは並びたくはないな・・・なら10分前に行けばいいか!と思い、明治座に15時50分頃に到着したのだが、

すんげぇ並んでいた

皆さん、35度近くまで高温なこの空間にずっといるんですか・・・?と恐れ多くも聞きたくなるほど。明治座の入口前にズラリと人が並んでいた。

まぁ開演まで1時間あるし、並ぶか・・・と最後尾に並ぶ。空からは肌をチリチリに燃やすつもりなのか、鋭い太陽の光が注がれる。そして、ビル風。それも熱風。アチィ・・・と思い、周辺を見渡す。

女性のお客さんが多かった。予想通りである。しかし、みんな熱さでやられそうな自分とは対象的に澄ました顔をした人ばかり。

経験値が違いすぎる・・・

まさか明治座で高温対策の差を痛感するとは。まだまだ修行が足りないようだ。

結果としてグッズを購入するのに30分を要した。やっとの思いでレジの前へ。スタッフさんに購入したい商品をツラツラと述べる。

プログラム、上坂すみれさんの「のぼりタオル」にアクリルスタンド、ブロマイド・・・

合計で7000円近くも要した。まぁ欲しいからしょうがない。しょうがないったらしょうがない。

来月俺の銀行口座が火を吹くぜ!

入場前に怪奇現象に苛まれる

入場前にとある体験をした。

グッズを購入し終わり、いよいよ明治座の中へ。片手にグッズを、もう片手からカバンからチケットを取り出そうとしていると1人の50〜60代ぐらいの女性が近づいてきた。

意外と劇場感のない建物だなぁって思ったり

女性は自分に近づいてきて自分が持つグッズを指した。「お兄さん、ねこ娘役の人好きなの?」と聞いてきた。

自分は『なんだ急に・・・?』と訝しみながらも、「まぁそうですね」と返す。すると女性はニヤリと笑った。そして自分にスッと手を伸ばしてきた。手元には上坂すみれさんが写っているブロマイド。

「もしあれだったら、これ欲しい?」と女性は言う。

自分は頭の中をフル回転させた。これは何の時間なんだ?この人は自分に何の目的で話しかけてきたんだ?ただ、結構です!と断るのもおかしいな・・・と思い、

「まぁ貰えるなら・・・」と苦笑いを浮かべながら返答した。

すると、女性は

「あげるわけないじゃん!」

アハハハハハハ!

と笑い声を上げながらその場を去っていった。女性は明治座の入口とは反対方向へ。

あれ、もう舞台始まってんの?あの女の人、鬼太郎の妖怪だったの?

とても不可思議な体験をした。何のために話しかけ、何のために持ちかけてきたのか。全く持ってサッパリである。

もしこれが明治座に初めてやって来た者への通過儀礼だとしたら…怖すぎるぜ。

上演

劇場内は予想通り女性が多かった。

どデカい緞帳。本当にどデカい。

主役の荒牧慶彦さんや植田圭輔さん、廣野凌大さんといった普段から舞台で活躍されているファンの方、更には宝塚で活躍された美弥るりかさんも出演されることもあり、女性のお客さんが多いのは予想できていた。

しかし、男性も自分の予想以上にチラホラ。これには驚きがあった。女性が7割、男性は2割といったところか。意外と男性も来るんだなぁという新発見だった。

今回の舞台は8月いっぱいまで行われる。なので、ネタバレは確実に避けた上で気になった点を挙げていこう。

まず鬼太郎がカッコ良すぎる。

アニメで見ていた鬼太郎とは違う、スタイリッシュ&イケメンを兼ね備えた鬼太郎がそこにいた。得意技である髪の毛針を繰り出した瞬間やちゃんちゃんこを脱いだ瞬間などなど、良い意味で一々カッコ良すぎるだろ・・・!と思わずにはいられなかった。

次に、ねこ娘が可愛かった。

語彙力皆無な感想だが、可愛かった。うん。可愛かった!

遠目から見ていてもショートヘアーは似合っていて、赤いワンピースは映えて見える。はぁー可愛い!と上演中は思っていました。はい。ヤバいやつですよほんと。

更にベテランの凄さたるや。大塚明夫さんが出演されることで鑑賞しようと決めたわけだが、花道を猛ダッシュする姿を見れるとは思ってもいなかった。声優界隈ではレジェンドプレーヤーでもある大塚明夫さんが花道を猛ダッシュとは・・・

しかも普段の声とは違う「ねずみ男」独特の癖のある声を難なく演じる力。いやはや凄い以外の言葉が生まれない・・・

と思っていれば浅野ゆう子さんの登場。今回は吸血鬼カミーラ役での出演だが、出てきた瞬間の圧倒的俳優感。更には吸血鬼独特の淫靡な雰囲気を纏っていて、もう凄まじい。

これがドラマや舞台を経験した大俳優の姿なのか・・・と驚嘆する。

また美弥るりかさんへの熱い眼差しの多さにまた驚く。女性の多くが美弥るりかさんへ目を輝かせいた。宝塚で纏ったオーラはこれほどまでに多くの人を魅了するとは・・・

今回のストーリーは話の軸にSNSが絡んでいて、のめり込みやすい設定だったのも良かった。また転換時には映像を使い、間を作らない構成で飽きがない。それにアドリブも多用されていて、そりゃあハマる人はハマりますわなぁ…と思いつつ笑うのである。

舞台と言えど、ガチガチの会話劇だと味に深みがない。映像や効果の多用をすることで見せられる演出にも幅が生まれる。これによって、見に来ている人を飽きさせないようにしているのか・・・勉強になる。

舞台を観に行くのはちょっと・・・と思っていた自分が遠い昔のように感じられるほど、舞台にのめり込んでいる自分がいた。

アフタートークもあっただよ

今回の上演回では終演後にアフタートークがあった。

司会にはお笑いコンビ・響の長友光弘さんが、鬼太郎役の荒牧慶彦さん、ねこ娘役の上坂すみれさん、ねずみ男役の大塚明夫さん、吸血鬼カミーラ役の浅野ゆう子さんの5人が登壇。

色々とお話をしていただいた中で思ったのが、鬼太郎という誰もが知るコンテンツの舞台で主役を張ること、ベテランに囲まれながらと様々な難しや緊張感もあるだろうに、荒牧慶彦さんは演じることにしっかりと芯がある人なんだなぁと素人ながらに思った。

また上坂すみれさんが「舞台経験は浅いので・・・」と言っている場面では浅野ゆう子さんは小さく手を振るような素振りを見せ、大塚明夫さんは静かに話を聞いているその姿。いい空気で舞台稽古・本番に挑めているんだろうなと、裏側が垣間見えた気がする。

舞台という空想から一歩離れて、演者が話す演技への思いをダイレクトに受け止められるアフタートーク。週末にアフタートークのある公演では売り切れもあるそう。聞きたくなるのもわかるなぁと実感したのであった。

寂しさ溢れるのも味のうち

アフタートークも終わると規制退場の上で明治座を後にする。

舞台というのはカウンター席に座り眼の前で調理してもらい、そのまま出来たて料理が出される感覚に近いよなぁ、と階段を降りながら思う。映画は計算つくされた演出、セリフなどがあってそれまた良し。しかし、舞台というのは眼の前で調理され、そのまま口に頬張れるような。また、その味や熱というのは日によって異なる。

毎度異なるのであれば気になるのも当然だ。舞台にはまり込んで、また見たい!と追いかけてしまうのもわからなくはないな。

ねこ娘の姿も見れたし、舞台独特の空気感を浴びることも出来た。満足満足。

しかし、明日は会社も仕事もあるんだよなぁ。と落胆を隠せずに、最寄り駅の浜町駅を目指す。