WBCは名シーンが多くあるが、一番と言っても過言ではないのが2009年のWBC決勝で強豪の韓国相手にイチロー選手が放った勝ち越しセンター前ヒット。
これに世間は湧いていたが、僕はその映像を生放送で見ずになぜかミヤネ屋を見ていた。
目次
WBCが始まるねぇ!!!
野球の祭典がいよいよ開催間近。ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が3月5日より東京ドームでの試合よりスタートする。
侍ジャパンにはメジャーリーグで活躍する多くの選手が集まり、日本プロ野球の有力選手との融合によって2006年、2009年に達成した2連覇の再現が期待されている。
そんなWBCだが、選出する選手についての是非であるとか、起用法であるとか、そんな話題よりかはどちらかと言えば「試合の視聴方法」について喧々諤々的な話題が飛び交っている。
まず2026年のWBCは日本での放映権をアメリカの動画視聴サービス「Netflix」が全試合独占配信ということになっている。
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大会開催当初から放送してきたTBSや前回大会で大谷選手がトラウト選手を空振り三振にし、久々の優勝を放送したテレビ朝日は放送する機会を消失。
日本戦以外の全試合を放送していたスポーツ専門チャンネル・J SPORTSやここ最近スポーツに力を入れ始めているAmazonプライムビデオも放送・配信をしない。
無料で楽しむにはラジオだけという異端的展開になっている。
地上波でも衛星放送でも放送されないという事実が野球ファンを中心に「視聴機会が失われる」という懸念を呼び起こして、独占配信という判断を下したNetflixに批判的な人が多いような印象を受ける。
以下のよる記事にも高齢者層に値する人が「Netflixの設定方法がわからない」「諦めた」というネガティブシンキング的な文章が並んでいる。
地上波じゃないと話題にならない、盛り上がらないという言葉が散見される。
そんな話題を見ていて、自分は小学生の頃を思い出した。2009年3月のお話だ。
全国的に盛り上がっていたWBCを蚊帳の外で見ていたな。ということを最近思い出してしまったのだ。しかも自分の意志ではなく、地元のテレビ視聴環境によるもので。
侍ジャパンがアメリカに行ったら見れなくてねぇ
2009年のWBC。もう17年前のお話である。
2006年の第一回WBCで優勝を果たした侍ジャパンは、原監督の元で2連覇を目指すというシナリオ。
選出された選手には当時メジャーでバリバリに活躍していたイチロー選手やまだメジャーに行く前、NPBで活躍していたダルビッシュ選手に青木選手、岩隈選手に田中選手などなど。今思えばかなり贅沢な面子が揃っていた中で大会に挑んでいた。
2009年のWBCは第1ラウンド(東京ラウンド)、第2ラウンド(サンディエゴラウンド)、準決勝・決勝という3つのラウンドに分かれて開催されることになっていた。
自分は2009年時点で小学生。このWBCを実家のある秋田県で見届けていた。
第1ラウンドは日本の東京ドームでの開催。放送はテレビ朝日が担っていた。日本が韓国に対して圧勝した試合や韓国に惜敗した試合など、熱戦を見届けることができたのだ。
が、日本が2位通過で次なるラウンドへ進むとなると秋田県での視聴機会が一気に縮小されることになった。
理由は第2ラウンド以降は全てTBSが放送を担うことになっていたからだ。
別に問題は無いんじゃね?と思われるだろうが、秋田県にはTBS系列局がない。それはネットの発展が進んだ2026年現在でも同様だ。
2009年当時、秋田県でWBCを視聴するには県境近くで他県のTBS系列局の電波をキャッチするか、秋田市のケーブルテレビに加入するか、衛星放送で放送していたJ SPORTSを契約する以外に選択肢がなかった。
さて、この状況に陥った私はどうしたのか?
まさかこのために県境近くまで足を伸ばしてテレビを見るわけにもいかなかったし、J SPORTSに加入するなんて選択肢も行使できず。結果、第2ラウンド以降は1試合も見ることはできず。
自分は見たいのに、地元のテレビ環境のせいで・・・やるせないってこういうことか!と勉強になったものだ。
イチローがセンター前に打った時
そのまま侍ジャパンは決勝へ。イチローは調子が上がらないまま挑んだ。自分は侍ジャパンの活躍を他局が報じるニュースでしか感じられず、どこかボヤぁとしていた。
偶然にも決勝が開催されていた日は学校が休みで私は自宅にいた。当日の朝はどのテレビ番組も「侍ジャパン頑張ってほしいですね〜」という論調でどこか浮ついていた。
ただ前述の通り、視聴する機会を失った私はその日を何もないありふれた日として受け止めていた。
試合が進んで終盤に差し掛かったであろう14時。自宅のテレビは「ミヤネ屋」を映していた。
曖昧な記憶で申し訳ないが、「日本はどうでしょうね?」「試合が気になりますね〜」と宮根さんはスゴく落ち着きがなかったような記憶がある。
ミヤネ屋はその日に予定していた内容を伝えた所で速報を入れた。その内容に思わず目を移す。侍ジャパンが優勝したという内容。
へぇ勝ったんだ。
とても冷めていた。
その時、イチローがセンター前ヒットを放ち、侍ジャパンを救うヒーローとなったと露知らずに。
番組はそのままWBCでの活躍を映し始めた気がする。ただ、もうWBCに興味が薄れていたというか強制的に見られなくなった自分はその映像を見ること無く、ゲームに耽った。
地上波が提供する「視聴機会」なんて、全国等しく保証されていたのかな?
今回のNetflixによる独占配信の騒動は確かに地上波テレビに対する宣戦布告的なものだろうし、他のテレビ局を差し置いて主催であるMLBと直接契約したという情報があり、独占配信に対して不満や懐疑的になるのも当然だとは思う。
更にはネット配信では不安が付きまとう。多くの人が見ることでサービスダウンするのではないか?という不安要素があるのも理解できる。
ただ「地上波なら全ての人達に等しく視聴機会が維持される」「Netflixによる独占配信は視聴機会を奪う」という意見が散見されているが、これに私は疑問がある。
確かにインターネットサービスを扱えない人たちにとってNetflixの存在は厄介だ。契約方法がわからないし、アプリをどう扱うかもわからない。
ただ、それらを補完するほどに全ての人達に等しくサービス・視聴機会が提供されることになる。
民放が残した地域による差
日本の地上波民放各局は全国ネットワークを確立していることになっている。
が、47都道府県全てで系列局を展開できたテレビネットワークは民放では1つもない。必ず各テレビネットワークにはどこかの県が空白地域となっている。この国で地上波テレビ局を地域の差無しに視聴できるのはNHKのみだ。

自分が経験したWBC以外にも日本国内での地上波テレビを通じて生じる「地域の差」というのは多くある。
直近で開催されたミラノ・コルティナオリンピックでは一部競技決勝の模様を民放が放送するとやはり地域によってはNHKの衛星放送・NHK BSもしくはインターネット配信に頼らざるを得ない状況になっていたし、
2022年に開催されたサッカーのワールドカップではこれまでNHKと民放各局が共同制作する「ジャパンコンソーシアム」を通じての放送だったのが瓦解。
NHKとテレビ朝日とフジテレビの3局で放送されることになったが、民放各局が放送する日本代表の試合は一部地域では視聴できないという自体が発生。同時に無料配信していたABEMAに頼れば、という状況だった。
明らかな情報格差、特に地方の視聴者による視聴機会の損失が数え切れないほどに発生している。なのに「地域による差」というのは最早当然であるかのように、いつまで経ってもそれらの問題に触れない・解消されないままだ。
しかもその問題を痛感するのはいつも地方の視聴者だ。だからこそ、都心部の視聴者には理解されないし、無視され続ける。
今回のNetflixによる独占配信を糾弾・批判的に伝えるメディア・ユーザーの存在を見る度に、存在していた問題はやはり無かったことにされ、理解されていないんだなぁ・・・と思うばかりだ。
有料サービスによる独占は各国で問題にはなっている
もちろん、Netflixの独占配信には大きな問題がある。それは「お金を払えないユーザーは視聴できない」ということだ。
地上波各局が放送する一番のメリットは「無料」であることだ。地上波テレビが視聴できる環境であれば、チャンネルを合わるだけで視聴できる。多くのユーザーが求めているポイントでもある。
では、今回の事例は日本だけなのか?というとこれまた世界には同様の問題がある。事例を紹介したい。
まずオーストラリアから。国内では人気競技となっているクリケット。120球という試合形式「T20」のワールドカップの放映権が問題になっている。
これまで無料放送局による放送が主だったのが、2026年大会ではAmazonプライムビデオが独占配信をすることに。
オーストラリアでは国民的に重要なスポーツイベントが有料放送に独占されるのを防ぎ、無料で視聴できるようにするという枠組みが法律で用意されている。しかし、ストリーミング配信に該当するAmazonプライムビデオは対象外のため、独占配信が可能となった。
つまりAmazonは法の抜け穴を使ってまで独占したことになる。
イギリスではサッカーが有料コンテンツとして扱われ、有料の壁・ペイウォールにより視聴機会が限られている。
まずイングランド・プレミアリーグはスポーツ専門チャンネルのSky SportsとTNT Sportsが保有し、次にクラブの最高峰イベント・チャンピオンズリーグの放送は有料スポーツ専門チャンネル・TNT Sportsによる放送が続いた。
その問題が更に2027年より複雑化する。チャンピオンズリーグの放映権がアメリカのパラマウントによるサービス・Paramount+に移行。
加えてヨーロッパリーグやヨーロッパカンファレンスリーグの放送はSky Sportsに移行。
元来より放送していたTNTスポーツはそれでもプレミアリーグの放送を続けるのでサッカーを視聴したいユーザーは解約できないし、新たなサービスに手を出さないとダメ。という面倒な自体になってしまった。
日本では動画視聴サービスによるスポーツ放送の独占配信というのはありふれた景色である。
スポーツ配信専門サービスのDAZNはJリーグを独占配信し、多くの海外サッカーも独占配信だ。更には動画視聴サービスのU-NEXTもプレミアリーグを独占配信中。
兎にも角にも、スポーツを見る=お金が必要という時代がもう当然という時代になってきているし、そのお金を払えない人たちの救済措置というのはあるんだか無いんだか?という事態である。
Netflixによってみんな等しく
今回の独占配信で生じたのは「みんなお金を払わないと見られない」という壁が出来たことだ。それは東京に住んでいようと、北海道の端っこ、沖縄の離島に居てもみんな等しくだ。お金が必要な状況になったことで「地域の差」が皮肉にも解消されたことになる。
しかし、Netflixもバカじゃない。WBCの独占配信を打ち出したことで、様々なキャンペーンが打ち出された。
何ヶ月は無料、割引・・・様々だ。施策が撃たれ、「お金の壁」が薄くなった。
もしNetflixによる独占配信が成功したら・・・大きな転換点になるのは間違いない。
潤沢な予算のあるサービスが打ち出すコンテンツに対し、予算確保が厳しい地上波各局が太刀打ちするのは難しい。
もしもNetflixがWBCの配信で多くの視聴者を裏切るような展開になったなら、地上波各局に対する視聴者の目はまだ温かいものになる。
しかし、視聴者がこれまでの地上波でのスポーツ視聴体験を変えるような内容だったなら・・・この先、地上波各局がメインストリームとして鎮座していた「テレビ」という文化が変わってしまうのかもしれない。
WBCに出場する侍ジャパンには熱視線が注がれる。そしてNetflixが放つ放物線は地上波各局にどんな影響があるのか楽しみだ。
と、言いつつ今回のNetflixによる配信は日本テレビが絡んでいるのだから、面白い話だ。

