日本シリーズ中継はなぜ情報だらけなのか? TBSのテロップを考える

日本シリーズ中継はなぜ情報だらけなのか? TBSのテロップを考える

スポーツの放送に欠かせないテロップ。現在の状況や点数、出場している選手の情報など。そんなテロップにはどんな意図が含まれているのか?それを分析していこうじゃ~ん。

日本シリーズが始まりましたけども

日本プロ野球の最終決戦である「日本シリーズ」がいよいよ始まった。とは言っても、今日この記事を投稿している時点でソフトバンクが3勝。次の4戦目で勝利すれば2年連続での日本シリーズ制覇となる。

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最強と言っても過言ではない福岡ソフトバンクホークスに対してセ・リーグを3位で終えながらも巨人と阪神を下し日本シリーズに進出した横浜DeNAベイスターズはどこまで盛り返せれるのか?

では、次のキーマンになるであろう選手を調べ・・・いや今回は選手や戦術といった試合に関する点ではなく

日本シリーズを放送するテレビ局のテロップ

を分析していきたい。

なぜ「テロップ」を分析するのか。いや、個人的にですね・・・なんかテレビのテロップに興味があるんすよねぇ・・・

自分は駅名標のデザインであったり、スマホのOSがアップデートされたときの色味や配置それに情報の伝え方であったり、物やデザインに含まれている「人への伝え方」にすごく興味があるような気がする。

その最高峰がスポーツ中継のテロップだと感じる。

スポーツをただ放送するだけでは成立しない現代だ。現在の各チーム点数、選手の名前や成績を瞬時に伝える必要がある。

そんな中継に対して、日本のテレビ局はテロップにどんな思いを込めているのか?果たしてそれは必要なことなのか?純粋に気になる。

ということで今回は日本シリーズを3戦まで連続で放送したTBSのテロップを分析して見たいと思う。

実際の中継から見てみよう

今回のスクリーンショットは全て「Tver」を通して行ったものです。選手やプレーの部分にはモザイクを掛けています。一部の画像ではChatGPTを通してモザイク・出力しているものがあります。

では7回の山川選手がバッターボックスに登場したところを引用してみよう。

TBSでは横浜DeNAベイスターズの試合中継を普段から行っており、その試合の際にも上記の画像のようなテロップを使用している。

パッと見たところで目が引かれるのは金色の装飾が付いていることだ。装飾というよりも金属調のフレームと言ったほうが良いだろう。

点数表示などには立体感があり且つ日本シリーズという最高峰の舞台を演出したようなテロップ。ただ、前述でご紹介した通りレギュラーシーズンからこのデザインであることは認識しておきたいところだ。

ピッチャーがマウンドに立ったり、バッターボックスに立った選手など、細かい選手情報については付加情報として画面下部を使って紹介する。選手が所属するチームのロゴ、背番号、名前、打順、守備位置、年齢がベースのようだ。打球が飛んだ際には全て非表示になる。

画面上部に目を移そう。左側には「SMBC日本シリーズ」と書かれていて、その下には日本シリーズを戦う両チームの名前が表示されている。この試合は第3戦のため、ソフトバンクの2勝であることも表示されている。

最後に画面上部の右にはチームロゴと「反撃へ シリーズ初の先制! 王手なるか?」という煽りを含めた試合状況を伝えるテキストテロップも用意されている。

スコア

スポーツ中継に登場する表示はスコアバグと呼ばれる。

en.wikipedia.org

野球ではサッカーやラグビーのような単純な点数ではこと足りないほど、多くの情報を表示することが求められている。

まずイニング、点数、ストライクなどを表示するBSO、ランナーの表示といったのが必要だ。

TBSの中継を見てみると、次にバッターボックスに立つ直近3人の選手+右打ちか左打ち、場合によっては両打ちか?の文字を表示させている。

投手の情報に関してはストレートやカーブ、スライダーといった球種を表示。更にkm表示の速度、ピッチャーの球数も含めている。

イニングについては日本国内ではデファクトスタンダードとなっている数字+表・ウラという表記。

これがTBSの野球中継で使用するテロップ・スコアバグの標準的なもの。

野球を知らない人にも知ってもらいたい・・・?

今回見ていて思うところは「日本シリーズが開催されていると知らない人に情報を伝えたがっている」ような感じがする。

その代表格なのが、上部のテキスト。

ソフトバンク・DeNAのチームロゴを使い、それぞれのチームが置かれている現状を伝えようとしている。

上記の画像では、「延長に突入し、日本シリーズでは3試合連続延長線となりました。そしてこれは史上初なんですよ!」というのも伝えようしている。

山川選手がバッターボックスに立っていたときには「ソフトバンクは今日勝てば王手・日本シリーズ優勝に必要な3勝目になるよ。」というのを伝えたがっていた。

DeNAは今日勝たないと厳しいよ。そしてこの試合は重要な一戦だよ。

選手の情報も知らない人へのアプローチのためにも必要なものだ。野球を今シーズン全く見ていない人も見る可能性があるというのも地上波の特徴。そんな人に現在出場している選手はどんな成績を今シーズン残しているのか?またどれだけ魅力ある選手なのか?を伝えないと、野球の中身に興味を持ってくれない場合もある。

なので、現在マウンドに立っているピッチャーは今シーズン◯勝していますよ。対するバッターは◯本のホームランを放っていますよ。

というのを表示することで「あぁこの選手はこんな成績を残しているんだ」と紐づけることができる。

ウラ返せば

ただ、その表示は本来であれば不要であるべきだと個人的には思う。

プロ野球の最高峰であり優勝チームが決定する試合だ。試合を伝える最小限の情報で十分。

ただそれが出来ないのが現状なんだろう。

出場するチームの現状や個々の選手に関する情報を随時表示しないと一部の視聴者を置いてきぼりになってしまう、とテレビ局側が思っているようにも捉えられる。

視聴者に伝えたいというよりも偶然にチャンネルを合わせてくれた人に少しでも興味を持ってもらいたいから大量に画面内に文字や画像を使って配置することを優先する。

ちなみに、レギュラーシーズンの際にはこのテロップは簡略化されている。それは観る人が野球を知っている前提だからだろう。

単純なスポーツ中継じゃダメなのかな?

ここで考えたいのが「野球自体に興味がない人が多くなったから」という野球人気縮小論に飛躍することよりも、テレビ局は「スポーツ中継をする上で知らない人前提に製作することが重要」と考えていることにあるんじゃないのかなぁと思うところだ。

野球に限らず、サッカーやバスケでも煽りのようなものが画面内に表示される。サッカーだと「ワールドカップ出場に負けられない一戦」であるとか、そんな感じだ。

特に普段は地上波中継されないスポーツはその傾向が顕著に現れる。

ラグビーといった名前は知っているけどルールが複雑なスポーツではルール紹介も行う場合がある。その方針が強く出たのがラグビーワールドカップ。

2019年日本で開催された際には日本戦や決勝戦といった主要な試合を放送した日本テレビでは図でルール説明をしたりと明らかにラグビーのことをわからない視聴者がいる前提で中継を行った。

TBSはその「わからない視聴者」に対してはとても手広い対応を見せている。

今回はTverを使ってキャプチャーしたため表示されていないが、データ放送を視聴できるテレビだと画面の左に「説明テロップ」が表示されるようになっていて、野球を見るうえでは常識の「三振」や「ピンチヒッター」など用語の説明を表示している。

TBSのデータ放送で表示される「ルール・野球豆知識」が話題になっている。当初から「左中間」や「スライダー」など野球初心者向けの用語解説が好評だったが、試合を重……
www.nikkansports.com

TBSでは野球に限らず他のスポーツ中継でも実施している。でも、この手広い対応は副作用を引き起こしている。

窮屈

テレビ局としては多くの人に長く視聴してもらい。興味がない人を逃がしたくない。なので、すぐに把握できる文章を入れたくなる。

良く言えば「親切」「初心者への配慮」だ。悪く言えば「観る人は無知」と思っているのかもしれない。

更に悪く言うなら「単純なスポーツ中継では視聴率が取れるとは思えない」という自信のなさが現状のテレビ中継を生み出しているような気がする。

本来であれば選手やプレーの瞬間を放送するべきところをテロップが多く表示されていることで、画面内が窮屈になっているような印象もある。

でも本当に窮屈なんだろうか?実際に数値化してみよう。

ChatGPTを使って試合映像を100%として、テロップ・スコアが表示されている部分を長方形にし、テロップ・スコアがどれだけ画面内を覆っているのかを簡略図にし、その表示数をパーセンテージで数えてみることにした。

上部には煽り文があり、更に対戦チームと日本シリーズであることを伝える部分もある。下部にはスコアバグがあり、選手に関する説明がある。加えてスコアバグの上には投球を詳細に表示したゾーンも表示された状態で測ってみよう。

こんな感じに。試合映像のパーセンテージだと80%を下回っている。図で見ると画面右下側がギュウギュウになっているような気もする。

図1と図2は状況によっては「勝利数」と「王手=3勝」というようなほぼ同じ内容が表示されていることもある。

四隅に情報を配置しているので選手の部分には被っていない。ただ、視聴者にとって見たい以外に情報を詰めているので目線が散ったり、集中力を削がれることもあるだろう。

この図が必ずしも正しいわけじゃないが、1視聴者が一瞬で見た時に処理する必要のある情報が多いような気がする。

これらの情報は試合が動くと消える。TBSとしては試合が動いたことに集中してもらうことも考えているのだろう。ただ、試合が動かないタイミングでもその考えがあっても良いような・・・

この窮屈さが無くなる時はやってくるのだろうか?それはテレビ局側による意識の変化も必要だが、視聴者側にもそれを求めなくても良いような状況になることが求められているのかも知れない。

まとめ

自分としては煽り文は無くしても良いのでは?と思うところがある。理由としてはソフトバンク2勝と王手なるか?というのが重複している気がするし、まずもって日本シリーズは4勝で決着。まぁでも、日本シリーズのルールを知らない人もいるか⋯難しい。

まぁこれだけ延々とやってきておいて何だが別に自分はデザインについては素人なので、たかが素人の意見であることをご承知願いたい。

最後になるが、自分のデザイン感覚としてはシンプルで必要以上の情報は本来不要なんじゃない?という考えがある。

観る人がその時に思うものが重要なのであって、見せる側が提供して、感情をコントロールするのは少々烏滸がましい気がするから。

でも、それはテレビとなれば話が変わってくるのだろう。視聴率も欲しいし、視聴者にも離れてほしくない。だからこそ、詰め込めるだけ詰め込むし、それで何とかやり繰りはしたい。

初心者の視聴者のために配慮することを重要しするか、ファンが多くいる前提で製作するか。難しい舵取りが迫られているのだろう。

分析と言えるのかどうか?とても陳腐な内容だと思うが、今回見ていくとスポーツ中継に勤しむテレビ局が置かれている難しさを目の当たりにしたような気分だ。